身近な人の死を受け入れることを主題とし、突然の死によって遺された人々の悲しみをやさしく包み込む、祈りのような映画『いってらっしゃいの花』が2026年7月25日、池袋シネマ・ロサにて公開初日を迎え、上映後に舞台挨拶が行われた。会場には椎名零監督、撮影の河内彰、主演の森本あお、山田ジャンゴ、須永祐介、藤田健彦、小夏いっこ、辻󠄀創太郎、辻莉仔、瀧マキが登壇。これまで明かされていなかった制作のきっかけである監督の愛犬との死別のエピソードや、難役に挑んだキャスト陣による撮影時の苦労など、笑いと涙が交錯する温かなトークが繰り広げられた。

監督が明かす驚きの創作のきっかけ
上映終了後の熱気と感動の余韻が冷めやらぬなか、司会の山本藍衣に呼び込まれた椎名零監督をはじめとする総勢10名の登壇者がステージに現れると、客席からは割れんばかりの拍手が贈られた。冒頭の挨拶に続き、18歳の頃から10年以上にわたり自主映画を制作してきたという椎名監督は、これまで「重大なネタバレになるため一切明かせなかった」という本作の創作のきっかけを初めて告白した。かつて愛犬を亡くした際、深く悲しむなかで「家の中に知らない女の子がいて、それが絶対に自分の愛犬だと直感する夢」を見たという。その夢から得た強いインスピレーションをもとに書き上げたのが本作であると明かした。さらに監督は「もう一度観ると、全く違う見方ができる。ぜひ2回観てほしい」と、作品に込められた緻密な伏線と構成を熱くアピールした。
役作りに隠されたキャストたちの奮闘
続いて、キャスト陣がそれぞれの役作りや撮影現場でのエピソードを語った。主人公・あやかという極めて難しい役に挑んだ森本あおは、あやかの人生を監督と徹底的に話し合って形作っていったと振り返った。あやかの婚約者・そうたを演じた山田ジャンゴは、あやかのリアリティを全編の軸として大切に演じたと話す。撮影当初はカップルらしさを作るのに苦労し、リハーサル時に撮影の河内彰から「カップルに見えない」と指摘された思い出をユーモラスに明かしつつも、念入りな稽古を経て見事な関係性を築き上げたと語った。また、自身も上映中に客席の後方で号泣したことを明かし、観客の共感を誘った。
あやかの父親役を演じた藤田健彦は、実生活で妻も子もいないなか、娘への深い愛を表現する難しさに言及した。撮影の初日が「娘のホームビデオを見ながら泣くシーン」だったため、思い出や関係性を蓄積する前に感情を作るのが非常に大変だったという撮影時の緊張感を振り返った。さらに、劇中で印象的なあの世とこの世を繋ぐ「待合室」のメンバーたちも会場を盛り上げた。約9年ぶりの映画出演となった案内役の男を演じた須永祐介は、最初は台詞が覚えられないと出演を断ろうとしたものの、監督の熱烈な説得により参加を決意し、今では「本当に楽しかった」と笑顔を見せた。
細部に宿るアイデアと作品への愛
サバサバとした謎の女性・しのぶ役の小夏いっこは、監督から「重い台詞をあえて飄々とサバサバ話してほしい」とのオーダーがあったという役作りの裏側を披露。配達員・けんさん役の辻󠄀創太郎は、劇中でビールを一気飲みするシーンが自身のアイデアであったことを告白した。飲み物が不思議なバーの仕掛けで勝手に出てくるように見せるため、実際には監督がカウンターの下から手渡すという、インディーズ映画ならではの温かな工夫が現場で行われていたことを明かした。
前作に続いての出演となる、みゆ役の辻莉仔は、再びゆかりのある池袋シネマ・ロサのスクリーンに戻ってこられた喜びを噛み締め、おばあちゃん役の瀧マキは、須永さんを見た瞬間に「絶対にこの人が犬だ」と直感したというエピソードで会場を沸かせた。
舞台挨拶の最後には、出演者たちが「大切な人を思い出すきっかけにしてほしい」と口々に語り、観客への深い感謝を伝えた。椎名監督は、50ページを超える大ボリュームにおまけのQRコード特典を加えて実質70ページ分に及ぶパンフレットなどのグッズを紹介するとともに、8月1日には「待合室」のロケ地である目黒の「Casual BAR Don’tCry」にて、自身がカウンターに立つ特別イベントの開催を電撃発表した。映画『いってらっしゃいの花』は、観客ひとりひとりの心にそっと寄り添う温かな拍手とともに、劇場公開の輝かしいスタートを切った。
映画『いってらっしゃいの花』
●あらすじ
突然命を落としたあやか(森本あお)は、あの世とこの世をつなぐ「待合室」で目を覚ます。そこで出会った「案内役」の男(須永祐介)からこの世に戻る猶予があることを教えられ、幽霊となって父(藤田健彦)や親友のちあき(福田麗)、婚約者のそうた(山田ジャンゴ)の元を訪ねるも、誰ひとりあやかの存在に気付かない―――。せめてもう一度言葉を交わしたいと願うあやかと、それぞれに悲しみを抱えたちあきやそうた。彼らは過去を振り返りながら、それぞれに思いを巡らせる。
出演:森本あお 福田麗 山田ジャンゴ 須永祐介 藤田健彦 湯本智恵美 小夏いっこ
辻󠄀創太郎(※「辻󠄀」は一点しんにょう) 清水博仁 渡邊麻梨奈 辻莉仔 瀧マキ
監督・脚本・編集:椎名零 撮影:河内彰 撮影助手:山﨑大地 録音:橋本颯太・松月倫太郎
照明:逵真平・松下由利ノ介 制作:熊坂綜真 衣裳:和賀井玲奈
音楽:Xia Lang カラリスト:阿部洋太郎 スチール:HARUKO
宣伝アシスタント:山本藍衣 予告編制作:安井彬 宣伝美術:増田悠理(FULLFLASH)
2025年/日本/102分/4:3/DCP
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