国内の映画祭で5冠を獲得し話題を呼んでいる映画『キャトルミューティ玲子』が2026年8月15日、新宿çにて待望の公開初日を迎えた。上映後に行われた舞台挨拶には、監督・脚本・主演を務めた山口改(鈴谷)やヒロイン役の前田茉羽(玲子)をはじめとする豪華キャスト陣12名が登壇。映画ソムリエの東紗友美氏がMCを務める中、満席となった会場は熱気に包まれた。本記事では、撮影秘話や作品に込められたテーマなどがユーモアたっぷりに語られた、記念すべき舞台挨拶の様子をレポートする。

「脳の支配」描くテーマと10年の歩み
映画『キャトルミューティ玲子』の公開初日、満席の客席から温かい拍手で迎えられた監督キャスト一同は、それぞれの役柄の個性あふれる挨拶で会場を沸かせた。司会進行を務めた映画ソムリエの東紗友美氏の呼び込みにより、山口改(鈴谷)監督をはじめとする総勢12名の登壇者が一堂に会した。
自主映画制作を始めてから約10年という節目を迎えた山口監督は、最初の5年間は誰にも見向きされなかった苦節の時代を振り返りつつ、映画祭での評価を経て新宿ケイズシネマという素晴らしい劇場で上映を迎えられたことに対し、作品を支え面白がってくれた観客への深い感謝を述べた。本作の着想について山口監督は、関心のある対象がすべて自分に関連して見えてしまう心理現象「カラー効果」を挙げ、これを「脳の支配」と捉えて物理的に表現したら面白いのではないかと考えたことがテーマであると明かした。
限界に挑んだセリフと爆笑の撮影秘話
舞台挨拶では、個性豊かなキャスト陣から和気あいあいとした撮影裏話が次々と飛び出した。ヒロイン・玲子を演じた前田茉羽(玲子)は、脚本の段階から先が読めず没頭したものの、魅力的な役柄を自分が演じきれるか不安だったと語る。さらに、劇中で最も演出にこだわったというカフェでの複雑な注文セリフ「トールキャラメルスチーマー with ノンファットミルク アドチョコレートホイップ…」のシーンについて、何度もテイクを重ねてスピードの限界に挑戦したエピソードを明かして会場を驚かせた。
また、ルナ役の米村真理(ルナ)は、自身の出演シーンをわずか1日の撮影で終えたとし、作中で重要な役割を果たすコーヒーをこぼすシーンのために5回ほど練習したと語った。それに対し、コーヒーをこぼされる側のカフェの客Aを演じた松下貞治(カフェの客A)は、「コーヒーを飲むために行っているだけだが、後半はこぼされるのを楽しみにしているような芝居になった」と冗談交じりに話し、客席の笑いを誘った。
田島ケンタ(田村)は、自身の撮影が常に雨天であり、2025年3月の撮影時には雪に変わるほどの極限状態だったことを告白した。また、ループに巻き込まれる主婦を演じた田川恵美子(美奈)は、夫に車で轢かれそうになるシーンなどの複雑な演技やセリフに苦労しながらも、非常に楽しんで撮影に臨んだと当時を振り返った。
さらに、劇中の小道具や演出に対するこだわりも語られた。信者B役の青羽ハルヨ(信者B)は、撮影時に実際に使用したアルミホイルの帽子を被って登壇し、普段から宇宙との交信用に形をキープして持ち歩いていると明かして会場を盛り上げた。対して、アルミホイルコーディネーターを務めた田中役の下塚恭平(田中)は、リハーサルなしで撮影に入り、人の頭に初めてアルミホイルを巻いた際に「センスがあると感じた」と独自の役作りを述懐した。信者C役の長谷川葉月(信者C)は、撮影のわずか2日前に出演依頼を受け、監督の指示で最後に殻を破るような弾けた演技に挑んだという。
3度目の山口監督作品出演となった大高洋子(猫の飼い主)は、監督の脚本を独特なものと表現し、読み解いていくうちに不思議な役が出来上がる監督の奇才ぶりに敬意を表しつつ、役のバックボーンとして新宿で当たる占い師という設定を自身で考案したと語った。秋山役の髙橋篤弘(秋山)は、撮影後に自身が勝手にカメラを回して撮影した山口監督と米村の公園でのバックショットが本編に採用された喜びを語り、藤本役の木庭博光(藤本)は劇中で披露した自身の歌声について、1日だけの密度の濃い撮影の中で生まれたものであると言及した。
満席の劇場から広がる「キャトられ現象」
舞台挨拶の終盤には、本作を一言で表す企画が行われ、髙橋篤弘(秋山)の「SFラブ」を皮切りに、「宇宙」「ラブ」「洗脳」「監督の才能」「大好き」「意味わからない人間」「シュレディンガーの猫」「変」といったバラエティに富んだ言葉が飛び出し、作品の多様な魅力を象徴した。
最後の挨拶で、米村真理(ルナ)は「憧れのケイズシネマでの上映が本当に楽しみだった。これからこの作品を皆さんに愛して育ててほしい」と述べた。

前田茉羽(玲子)も「今日満席の中で上映を迎えられ本当に嬉しい。ここからさらに多くの方に届いてほしい」と今後に向けた期待を語った。

山口監督は「とにかく面白かったという意見が一番嬉しい。懲りずにまた映画作りに励み、この映画をもっと広げられるよう頑張りたい」と決意を語り、締めくくった。

フォトセッションでは、玲子の代名詞である「耳かけ」のキュートなポーズが披露され、最後は観客による撮影時間も設けられた。上映後のロビーでは、パンフレットや3種類のTシャツ、キラキラステッカーなどのグッズが販売され、キャストによるサイン会も行われるなど、初日から劇場全体が熱いファンとの交流に湧いた。本作が巻き起こす「キャトられ現象」は、この初日を皮切りに全国へと拡大していくに違いない。

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