映画『forget-me-not』内海誠子、イトウハルヒ、宇野愛海インタビュー。それぞれの心に残る想い出。

映画『forget-me-not』内海誠子、イトウハルヒ、宇野愛海インタビュー。それぞれの心に残る想い出。

外山文治監督の短編作品集「東京予報」の一編として制作された映画『forget-me-not』は、ガールズバーで働く女の子たちが「痛客」の葬儀に出席するという、東京の片隅を舞台にしたPOPでシニカルな現代劇。今回、本作に出演する内海誠子さん(ミカ役)、イトウハルヒさん(エリ役)、宇野愛海さん(ハル役)にお時間をいただき、ご自身の名前の由来や、メインビジュアルに登場する手書きメッセージボードの制作エピソード、そしてそれぞれが演じたキャラクター像、これまでの人生で印象に残っている手紙やメッセージ についても語っていただきました。

左)宇野愛海(ハル役)  中央)内海誠子(ミカ役) 右)イトウハルヒ(エリ役)

■『forget-me-not』内海誠子、イトウハルヒ、宇野愛海インタビュー

1.名前の由来

ー:本サイトの恒例の質問です。冒頭でみなさんの名前の由来をうかがっています。宇野さんは、お名前が“愛海”で“なるみ”と読む点、また、その感じの表記自体が珍しいと思いました。どういった意味や由来があるのでしょうか?

宇野愛海:本名なのですが、意味としては「海のように深い愛に包まれますように」という意味だそうです。愛を“なる”とは読まないと思うんですけど、父の名前に“愛”が入っていて、“なる”と読むんです。そこから取って“愛海”になりました。

ー:ありがとうございます。次に、イトウハルヒさんにお話をうかがいます。プロフィール等で「晴れの日」と書いて、“晴日(ハルヒ)”と書かれているのを見かけました。本名や当て字などかなど気になりました。実際の由来にはどういったものがあるのでしょうか。

イトウハルヒ:芸名です。カメラマンさんにつけてもらって、「晴れの日が続くように」という意味でつけていただきました。

ー:そのカメラマンの方のお名前をうかがってもよろしいですか?

イトウハルヒ:小林幹幸(コバヤシモトユキ)さんというカメラマンの方です。

ー:一年ほど前に、俳優の東宮綾音さんをインタビューしたのですが、その東宮さんを撮影されたカメラマンの方ですね。

イトウハルヒ:そうです。その小林さんが一緒に考えてくださいました。

ー:では、内海誠子さんにうかがいます。古風な感じをうけるお名前に感じました。

内海誠子:意味から考えたというよりも、お坊さんが良い画数になるように考えた名前だと思います。私の祖父は“セイジ”といいます。“誠子”の“誠”と同じ漢字ではないのですが、セイジの孫で誠子という名前になりました。私は祖父の生まれ変わりと言われているんです。祖父が亡くなってすぐ生まれてきたので。
親戚の間でも、「パパちゃまにそっくり」っていわれています。祖父のことを“パパちゃま”って呼ぶんですけど、そう言われるぐらい、“生まれ変わり”なんです。この名前を気に入っています。

2.ガールズバー エスポワール、手書きメッセージボード秘話

ー: 次はメインビジュアルでみなさんが手にしている手書きのメッセージボードについてお話をうかがいたいと思います。このメッセージボードは、小道具の方が書かれたのか、それとも出演者のみなさんが書いたものでしょうか?

内海誠子 私たちが、書きました。

ー: やはりそうなのですね。それぞれに字体や個性があらわれていると思いました。宇野さんの「エスポワール」だけ、棒線部分が矢印“→”になっているんですよね。あと、飲み放題の”の”がひらがなになっていたり、”!!”が書かれている点が特徴的だと思いました。

イトウハルヒ おのおの個性がある中で、宇野ちゃんが一番上手だったね。

宇野愛海 私、高校生の時に卒業アルバム製作委員っていうものをやってました。卒アルをデコるっていう。

内海誠子 そこでデザイン性の高さが見えた感じ? こういうのを書くのが私は下手過ぎて宇野ちゃんに書いてもらったんだよね。
そういえば、イトウハルヒは字が細かったんですよ。

宇野愛海:そう。なんだか字が揺れていたよね。

イトウハルヒ 揺れてないよ!

内海誠子 え!?揺れてた、揺れてた。

宇野愛海 ちなみに、このボード、撮影中に文字がかすれていったんですよね。

イトウハルヒ 確かに、どんどん消えてったよね。

ー: なるほど、そこで、よりリアル感が増しているんですね。

3.自身が演じたキャラクターの人物像や役作り

ー: ご自身が演じたキャラクターについて、どんなタイプ、人物像だと考えたか、また、逆に監督から渡された情報などがあったのではないかと思います。
作品の中でも、前の職場がつらかったとか、パティシエ目指して工場でケーキを作っているとか、アパレル業界や彼氏とバンド活動といった話がありました。与えられた情報から、自分の中でこういう性格・人だと思って演じた部分などはいかがでしょうか?

内海誠子(ミカ 役): 「こうしよう」みたいな、作り込んだ役作りみたいなのは特になくて。前の職場がつらかったから、リハビリがてら始めたとかも、そこまで意味を持たせすぎないようにしようっていうのはありました。わざとらしくないように。
ミカは、昔の自分と似ているところがあって、それを脚本を読んだときに感じたので、昔の自分を思い出したところが多かったです。

イトウハルヒ(エリ 役): ほかの二人に比べると、ちょっとお姉さんだけど、この子たちと一緒にお店に並ばないといけないから、意識して髪の毛を二つ結びにしたり、ちょっと頑張っているところがあるのかなと思って演じていました。
お姉さんなので、どこか二人の面倒を見なきゃという部分、でも、女の子として見られたいっていうのもあるけれども、二人といると、「しっかりしなきゃ」みたいなところがある子という点を意識して、本読みや撮影現場で過ごしました。

宇野愛海(ハル 役): 私も役作りで意識したことは、特にこれっていうものがあるわけではないのですが、この三人の中だったらサバサバタイプというか、ボケタイプという感じがしていて。私の役に関してはプライベートが充実していそうな感じがしたので、わりとちいさなことでも「これ面白、これ楽しい」と考えられる感覚の女の子で、あまりストレスも感じていないタイプと考えました。

内海誠子 ボケようとはしていないけど、すごく面白かった。

宇野愛海 ボケであり、ツッコミでありっていう。

4.ドラム演奏シーンへの挑戦、〇〇に似ている話

ー: ドラムを叩く様子を表現するところが面白かったんですけど。 あれは練習を重ねたのでしょうか?

宇野愛海 この撮影にあたって一番練習しました。ふたりもリアルに爆笑してくれたんです。二人とも私がドラムをやっていると思っていたんですよ。でも私はドラムの経験がなくて、監督からの完全な無茶振りでした。でも何回やっても面白がってくれるので助かりました。

イトウハルヒ 意外とあのエアドラムって時間がかかるんだよね。

宇野愛海:やっぱり降りてくるからね、ドラムが。

ー:イトウハルヒさんといえば、作品の中のセリフで「〇〇に似ている」といった話がでてきましたよね。調べてみると、2020年のツイートで、「すれ違いざまに 高校生に、あいみょん? 俺も思ったって」という書き込みを見つけたのですが、この話との関係性はあるのでしょうか?

イトウハルヒえ!?本当ですか?自分でも忘れていました。だって2020、5年前ですし。

ー: 私もあいみょんに似ていると思ったのですが、これにまつわるエピソードはありますか?

イトウハルヒ 言われたことはあります。あいみょんに、似てるって。

ー: セリフ的には、監督がもともと書いたセリフなんでしょうか?それともなにか付け加えたり変化があったものなのでしょうか?

イトウハルヒ もともとは、“浜辺美波に似ている”と書いてあって、そこからあいみょんにかわりました。

5.栃木出身の縁

ー: ちなみに、イトウさんと宇野さんは、栃木出身で、年齢も2歳差ですが、栃木県時代にお互いにご存知だったとか、つながりがあったりはありましたか?

イトウハルヒ 今回のお話をいただいて、お会いするのが初でした。過去に別のオーディションでは一緒だったと思います。

宇野愛海 もちろんお互いに存在を知っていて、SNSを調べた時の話題として「栃木なんだ」って私がDMしたんです。「栃木出身の俳優さんに初めて出会いました」と伝えたのが去年だったと思います。

イトウハルヒ それぐらいでしたね。

宇野愛海 これで一緒になる何ヶ月前ぐらい?縁だね。

イトウハルヒ 初めてというのが意外に思いました。確かに栃木出身の俳優さんにあまり会うことがないんですよね。

6.将来と目標

ー: ガールズバーの店名として登場した「エスポワール」にちなんだ質問です。「エスポワール」は、フランス語で「未来への期待とか希望のこと」という意味があるそうです。こうになりたいとか、人にこうしてもらいたいっていうような意味合いがあるそうなんですが、みなさんがこうなりたいとかっていう気持ち。目標だとか、人としての成長だとか、そういった目標だったり、こうなりたいという気持ちを聞いてみたいと思います。

イトウハルヒ 役じゃなくて、私たち自身がってことですよね。

ー: はい、ご自身の、俳優として、または人間としてといった大きな範囲でも構いません

宇野愛海 私は具体的にこれっていう目標は、あまりありません。ただ、毎日楽しく、悔いなく生きられたらいいなと思っています。その考えのおかげでメンタルが壊れるといったこともないんです。昔は、オーディションでえらばれなかったら、かなり落胆して落ち込んでいたのですが、今は「まあ、私には合わなかっただけ」といった、割と物事をいい意味で軽く捉えられるようになったんです。人生を悔いなく、楽しく、健康に生きられればもうそれでいいと思っていて、別に何回失敗してもいいやという想いでいます。

内海誠子 失敗に恐れがなくなったのはいいよね。すごいね。

イトウハルヒ 打席に立ち続けられますよね。私はなんだろう…

ー: そういえば、イトウさんって、2024年の下半期の目標をSNSに書いていらしてその目標は「溌溂に生きる」でした。2024年下半期を振り返り、2025年上半期はどうなんだろうと考えたのですが、いかがですか?

イトウハルヒ:2024年下半期の話をすると、先日、配信動画を撮った際に、書初めをしたんです。そのときに、きちんと、愛を与えられる人間になりたいなと思ったんです。私はマルチタスク的な思考・行動ができなくて、いろいろな人に、すごく迷惑をかけて日々生きている思いがあるのですが、それでも自分が関わった人や物、作品に対しては誠実にいたいと考えています。いろいろありますが、きちんと作品に関わっている人として、期待にはきちんと応えたいし、誰かの思いをないがしろにしないで、思いを寄せていられる人間になりたいと思っています。
2025年の自分は、「愛とは、時間と思いの熱量をかけること」だと思っています。俳優としては、山田真歩さんみたいな俳優になりたいです。

内海誠子 私は、俳優としては冒険心みたいなものを大事にしていきたいという思いがあります。でもそのためには、まず信頼がないとできないと思うので、信頼と責任を持った役者になって、そこから冒険ができればどんどん楽しくなっていくんじゃないかなという思いがあります。それは作品のためでもあるし、自分のためでもあるから、俳優としてそれを追求できれば良いと思っています。私自身としては視野の広さとか、懐の深さみたいなものを持って、人に優しくできる大人になりたいと思っています。

7.心に残る手紙の想い出

ー: 今回の作品では、3人に残されたメッセージというものが非常に印象的でした。それと同様に、みなさんが今まで生きてきた中で、いただいたメッセージだったり、手紙で印象に残っているものがありましたら、お話をきかせてください。受け取ったものや、やり取りしていることなどはありますか?

内海誠子 私は、意外と古典的なやり方が好きで、手紙も好きなんです。連絡先を知っていても、「あえて文通だな」って思ったり。凝縮して一文一文に心を込めるからこその重みがあって、今の時代、“ファスト”なものが増えている中、あえて“手紙”で想いを伝えるのはいいなって思います。書いてある手書きの文字を読んだ時、こういう姿勢でこういう感じで書いたんだろうなっていうのを想像できるのも素敵だなと思うので、やっぱり手紙は好きですね。

宇野愛海 私も手紙を書くのが好きで、筆ペンを使って、ことあるごとにお礼状やお手紙を書くのが好きです。今でも両親からもらった手紙やファンの方からいただいたお手紙を全部保管していて、たまに読み返します。
今までで一番嬉しかったのは、お世話になっている舞台の演出家さんがブログ等で、私のことを紹介してくださった時に、私の両親の顔が見てみたい、育て方を聞いてみたいって書いてくださっていたんです。それがすごく嬉しくて、最高の褒め言葉でした。
その後、舞台を両親が見に来てくれた時に、両親を紹介して、ツーショットとか撮ったりして、そのことがすごく嬉しかったです。

イトウハルヒ 私が思いついたのは母からの手紙の話です。私は中高と寮に入っていて、携帯の使用が禁止されていたので、外部とのやりとりが手紙か固定電話でした。私はお二人みたいにあまりマメな人間じゃなかったので返事を書いていなかったのですが、母がずっと、いま、家がどうなっていて、おじいちゃんがこうなっていて…みたいな手紙を毎週よこしてくれていたのを覚えています。
寮の中では合わない子もいたりして、人間関係がうまくいかなかった時に、母に手紙で相談したら「いつでも、帰っておいでね」という返事を書いてくれました。そういった手紙を6年間、ずっと続けてくれたのが、今思うと本当に愛されていたと思うし、当たり前のようにしてしまっていたけど、すごく、そこに支えられていたと思います。

8.お客様へのメッセージ

ー: お客様に向けてのメッセージをお願いします。

イトウハルヒ 今回の短編作品集は3本あって、全然違う物語が続きます。私たちが出演した『forget-me-not』は、人の死というセンシティブなことも、コミカルに描かれていて、共感できるポイントやおかしみもある作品だと思います。他人が亡くなることをコンテンツのように捉えるある種の残酷さがありつつも、それだけにとどまらないところがある作品だと思うので、いろいろな見方をして、楽しんでいただけたら嬉しいです。ぜひ、ご覧ください。

宇野愛海 ガールズバーという、狭い世界での人間関係、距離感、仕事先だからこその浅さというのも面白いと思いますし、今回の作品は脚本の段階ですごく好きでした。個性あふれる、セリフ、やりとりに、注目していただけたらと思います。

内海誠子 言いたいことは、お姉さん方が言ってくれたのですが(笑)

やはり私も“東京の片隅で生きている”人間の1人として、人間関係が刹那的だったり、死をコンテンツ化して受け流してしまったりする部分もあると思うのですが、そこをあえて切り取ったというのは、すごく、今の時代にも沿っていることだと思うし、なにより押し付けがましくない優しさで物語を届けてくれる外山監督の脚本が、読んでいて心地良かったです。また、コミカルなところもあって、映像で見るとさらに3人の空気感だったりが感じ取れると思うので、そこも楽しんで観ていただけたら嬉しいです。


▼上映情報(アフタートーク、来場者プレゼント)

シモキタ K2では、先着80名様への来場者プレゼントや、アフタートークを連日開催

詳細は、劇場「シモキタ K2」のホームページ、および、映画公式SNSアカウントをご確認ください。

https://k2-cinema.com/event/title/537


「東京予報―映画監督外⼭⽂治短編作品集―」

『名前、呼んでほしい』『はるうらら』『forget-me-not』収録


公式 HP: https://tokyo-forecast.studio.site/
公式 X: @tokyo_forecast
公式 Instagram:tokyo_forecast

2025 年 5 ⽉ 16 ⽇(⾦)
シモキタ – エキマエ – シネマ『K2』を⽪切りに全国順次公開予定

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