第17回TAMA映画賞：吉沢亮、最優秀男優賞受賞 “命を削る”献身に初の2年連続受賞の快挙

2025年11月15日にパルテノン多摩大ホールで開催された第17回TAMA映画賞授賞式において、俳優の吉沢亮が最優秀男優賞を受賞した。対象作品は歌舞伎の世界を描いた大作『国宝』とコメディ作品『ババンババンバンバンパイア』。吉沢は、同賞において最優秀男優賞または最優秀女優賞を2年連続で受賞した初めての俳優となり、その演技に対する献身が改めて高く評価された。

目次 Outline

1. 「命を削る」演技、年齢を超えた威厳
2. 歌舞伎稽古はトータル1年半、「ゼロからのすり足」
3. 世界が認めた「日本の色強い作品」

「命を削る」演技、年齢を超えた威厳

表彰状では、吉沢さんの役への向き合い方が「命を削るように」見えたと称賛された。さらに、その姿には「[年齢]とは思えない威厳」があり、「その美しさに息を飲みました」と、観客に与えた強い印象が強調された。吉沢さんは、本年度「最も映画ファンの心に残った男優」として表彰された。

受賞スピーチに登壇した吉沢さんは、TAMA映画賞での最優秀男優賞が「僕にとって初めての」栄誉であったと述べ、「非常に心に響いてすごく特別な思いがある」と喜びを語った。

歌舞伎稽古はトータル1年半、「ゼロからのすり足」

特に受賞理由となった『国宝』での演技について、吉沢さんはその役作りの厳しさを明かした。歌舞伎は「ゼロからのスタート」であったため、稽古はトータルで約1年半に及んだ。最初の3〜4ヶ月間はひたすらすり足を行う日々だったという。

この作品では、実際に本編で使われたシーンだけでなく、最初から最後まで通しで稽古し、撮影にも臨んだ。李相日監督は、吉沢さんが歌舞伎役者として「人生としてのこの姿の形全てそのリアリティを徹底的に求められる」役柄に献身したことが、作品の成立に不可欠だったと評価している。

また、吉沢さんは、喜久雄の幼少期を演じ最優秀新進男優賞を受賞した黒川想矢のストイックな姿を間近で見て、「励みになり」「自分自身をこう奮い立たせてもらいながらやれた」と、共演者への感謝を述べた。

世界が認めた「日本の色強い作品」

『国宝』はカンヌ国際映画祭など海外でも上映され、その反響について吉沢さんは言及した。日本の伝統文化を使った「日本の色強い作品がこの海外でどういう受け取り方をされるのか」不安もあったという。しかし、3時間という長尺にもかかわらず、観客が「最後まで集中して息を飲んで見てくださってる」様子が伝わり、「伝えたい細かいところまでなんかすごく汲み取って見てくださってる」と、国際的な観客の理解の深さに喜びを感じたと語った。