2025年11月15日にパルテノン多摩大ホールで開催された第17回TAMA映画賞授賞式において、若手俳優の黒川想矢が最優秀新進男優賞を受賞した。同賞は「本年度最も飛躍し活力溢れる活躍をした男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優」に贈られるもので、黒川は『国宝』と『この夏の星を見る』の2作品での活躍が評価された。

「画面に引きつける力」を評価、賞は「戒め」
表彰状では、特に歌舞伎に生きる青年を描いた大作『国宝』での演技が称賛された。黒川さんは、「抑えた表情の中に複雑な感情をいきいきと表現し、画面に引きつける力で観客を魅了しました」と評価された。


黒川さんは登壇し、2年ぶりに映画祭に戻ってこられたことに触れ、「奇跡的な様々な出会い」に感謝を述べた。一方で、このような栄誉をいただいたことは、自身の傲慢な気持ちを戒めるものだと捉えており、「これから自分自身とちゃんと向き合って、奢ることなく精進していきなさいという戒め」だと受け取っていきたいと、謙虚な姿勢を見せた。

半年間の歌舞伎稽古を経て「真の喜久雄」を経験
『国宝』で主人公・喜久雄の少年期を演じた黒川さんは、役作りへの献身を語った。彼は自身を基本的に「弱い存在」と捉える一方で、喜久雄という役は彼にはない強さを持っている存在だと解釈していた。演じる上では、「真の喜久雄のみとしてちゃんと経験していく」ということを大切にした。
歌舞伎の稽古期間は半年間ぐらいに及び、踊りや歌舞伎の経験がなかったため、振りやセリフを覚えるのが難しかったという。しかし、歌舞伎の合宿で役として踊れた時にすごく楽しくて、今も稽古を続けていることを明かした。
「戦友」と呼ぶ共演者との絆
共演者との関係性についても言及した。喜久雄の青年期を演じた吉沢亮さんとは、喫茶店での会話で「吉沢さんの喜久雄と自分の喜久雄は全然違っていい」「目指す像が近ければ近いほど、同じ人に見てもらえるんじゃないか」と声をかけられ、感謝していると述べた。

また、俊介の少年時代を演じた越山敬達さんとは、撮影中ずっと一緒に過ごし、夜ご飯や就寝も共にする日々だった。黒川さんは、その何気ない時間や関係性が役柄にしっかり出たことを実感しており、越山さんを「本当に戦友のような存在」だと語った。
もう一つの対象作品『この夏の星を見る』の現場については、宇宙が大好きな黒川さんにとって、宇宙について学ぶ機会が多い撮影現場を「これは運命だ」と感じ、「めちゃくちゃ楽しかった」と振り返った。

最後に黒川さんは、「一つ一つ楽しんで、丁寧にやっていきますので、どうか楽しみにしてくださったら嬉しいです」と、今後の抱負を締めくくった。



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