オーディションから禍々しい雰囲気を放った福永朱梨。父親役と視線を合わせぬ効果で現場には良い緊張感。

オーディションから禍々しい雰囲気を放った福永朱梨。父親役と視線を合わせぬ効果で現場には良い緊張感。

10月23日、新宿K’s cinemaにて、映画『彼女はひとり』が公開。初日舞台挨拶には、福永朱梨、中村優里、美知枝、山中アラタ、中川奈月監督が登壇。本作は、中川奈月監督の立教大学大学院の修了制作として撮影された学生映画。それにも関わらず、脚本の完成度の高さから、撮影には黒澤清監督作などを手掛ける芦澤キャメラウーマンが参加する異例の体制で製作された。
主演は、深田晃司監督『本気のしるし』に出演の福永朱梨。福永は田辺・弁慶映画祭2019では俳優賞を受賞している。

彼女はひとり
左から、中川奈月監督、中村優里、福永朱梨、美知枝、山中アラタ

STORY
高校生の澄子(福永朱梨)はある日橋から身を投げた。しかし、死ねずに生還してしまった。数ヶ月ぶりに学校に戻
ってきた澄子は、幼馴染の秀明(金井浩人)を執拗に脅迫し始める。身を投げる原因を作ったのは秀明であり、秀明が教師である波多野(美知枝)と密かに交際していると言う秘密を握っていたのだった。その行為は日々エスカレートしていくが、そこには秀明との過去、そして澄子の家族に関わる、ある少女の幻影があった…。

■初日舞台挨拶

映画『彼女はひとり』の上映初日。新宿K’s cinemaは満席でのスタート。舞台挨拶のラストには、来場者向けのフォトセッションも行われた。

彼女はひとり
満席のK’s cinema

-本作は主人公・澄子が怒りや疎外感から周囲に復讐していく物語となりますが、その製作の経緯、動機は?

中川奈月監督
感情をぶつけるような暴力的な女の子の話をずっとつくりたいと思っていました。それが復讐というかたちで物語の軸にありながらやりたいと思っていました。それと同時に幽霊を出したい、サスペンスも交えていきたいという思いがありました。

彼女はひとり
中川奈月監督

-福永さんに質問です。脚本を読んでどうだったか。愛しても愛されない怒りから周囲に復讐していく澄子という役をどう演じたか。

福永朱梨
澄子が外に怒りを発散する・ぶつけるっていうのは、私は他人事とは思えませんでした。どんな人の中にも、怒りや滞っているものがあって、それを澄子は外に出していただけだと考えました。違う世界の人だとはあまり感じませんでした。

彼女はひとり
福永朱梨(主人公・澄子 役)

ー監督に質問です。オーディションで福永さんを起用したきっかけは?

中川奈月監督
オーディションの部屋に入って来たときから(醸し出す雰囲気が)禍々しかったです。今日、ここで登壇されているような明るいイメージでは全く無く、彼女の顔・存在感に過去の暗さや憎しみに溢れたものを感じました。言葉を発しない立ち姿だけでも彼女に過去がみえる状態を感じたので、澄子をお願いしました。

-福永さんに質問です。役作りに当たって工夫した点は?

福永朱梨
澄子自身として日記を書いていました。事件が起こる前の幸せだった頃、幼馴染と仲良く遊んでいた記憶。そういったものを澄子として書いていました。

-中村優里さんに質問です。台詞がない役でしたが苦労した点は?

中村優里
台本を読んでもセリフがなかったので、はじめはどうしたらいいのかと、とても悩みました。何回も台本を読み返しているうちに、見えないものが見えるっていうそのシーンだけで、とてもパワーがあるんだなということに気づきました。そこから気持ちが楽になりました。

彼女はひとり
中村優里(聡子 役)

-美知枝さんに質問です。真面目な教師でありながらも生徒と交際するという秘密を持った役柄についてどう捉えましたか

美知枝
教師としての正義感を持っていながら、同時に理性を抑えきれない。生徒に恋をしてしまう罪悪感との狭間で常に葛藤しているということを表現できるように役作りをしていました。

彼女はひとり
美知枝(教師・波多野 役)

-美知枝さんに質問です。終盤の澄子とのシーンについて、ご自身ではこの展開をどう思いましたか。

美知枝
教師としては正義感で澄子を助けたいと思ったのだと思います。衝動といいますか澄子の中に形は違うけれども共感する部分を感じて、澄子を救うことで自分も救おうとしていたのかなと思いました。

-山中アラタさんに質問です。澄子の父親でありながら、大変な状況にある澄子をサポートできないという難しい役柄でしたが。脚本を読んでの感想はいかがでしたか。

山中アラタ
まず監督が柔らかい雰囲気の女性なのに、こんな脚本を書けるなんて「大丈夫か?この人」って最初に思いました。
台本は読んでいましたが、僕は現場で生まれるものが大事だと思っていて、朱梨ちゃんと接してみて、どうやっていこうかと探ることがあるんですけれども。彼女は澄子として完成されていました。「大丈夫なのか、この子」と思いました。芝居を終えてから話すと柔らかい雰囲気の明るい女の子なんですけど、現場では澄子でした。現場ではあまり話はしていなかったですね。朱梨ちゃんはいるんだけど邪魔しちゃいけない雰囲気を持っていて、そういう張り詰めた緊張感が良い効果を生んだと思います。

彼女はひとり
山中アラタ(澄子の父 役)

福永朱梨
澄子の父が大事なことを告白するシーンでしか、山中さんは私と目を合わせてくれなかったです。私は鋭く見つめていたのに、他のシーンの親子の会話では目を合わせてくれませんでした。それが澄子の中での怒りを増大させていました。そういう接し方がありがたかったです。


■彼⼥はひとり

福永朱梨 / 金井浩人 美知枝 中村優里 三坂知絵子 櫻井保幸 榮林桃伽 堀春菜 田中一平 山中アラタ
脚本・編集・監督:中川奈月 プロデューサー:ムン・ヘソン 撮影:芦澤明子 照明:御木茂則 録音:芦原邦雄 整音:板橋聖志
編集協力:和泉陽光 音楽:大嶋柊 美術:野澤優 衣装:古月悦子 助監督:杉山修平 スチール:明田川志保 吉田留美
特別指導:篠崎誠 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト 配給協力:ミカタエンタテインメント
2018/カラー/ビスタ/60分
©2018「彼女はひとり」

10月23日(土) 新宿Kʼs cinemaほか全国公開

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