テーマは「生きる事とは」。映画『静謐と夕暮』新予告編公開。矢崎仁司監督らのコメントが到着。

テーマは「生きる事とは」。映画『静謐と夕暮』新予告編公開。矢崎仁司監督らのコメントが到着。

2022年1月8日(土)から池袋シネマ・ロサにて、梅村和史監督『静謐と夕暮』(せいひつとゆうぐれ)の1週間限定公開が決定。本作は、2019年度京都造形芸術大学映画学科卒業制作作品。2020年度第44回サンパウロ国際映画祭で上映されている。梅村監督は本作について、「テーマは『生きる事とは』です。雑草の様に主観的な目線を持った作品を作ってやろうと思い、作ってみました。」と語っている。
今回、新予告編が公開。矢崎仁司監督を初めとした著名人からのコメントが到着した。

静謐と夕暮
『静謐と夕暮』場面写真

■映画『静謐と夕暮』について

●あらすじ

写真家の男が川辺を歩いていると、川のほとりで衰弱している老人に、何やら原稿の束を渡す女がいた。 翌日、再び男がその場所に行ってみると、その原稿を読む人々がいた。 その原稿には、渡した女の書いたものと思しき、この川辺の街での日常がしたためられている。 —————ある日、いつものように川辺にやってきた女は、見知らぬ黄色の自転車と川辺に座る男を見た。 数日後、女が住むアパートの隣室にその川辺の男が越してきた。 夜な夜な隣室から聞こえる、男が弾くらしきピアノを漏れ聞くうちに、その男の生態が気になり、 毎朝、黄色の自転車に乗って出ていく彼の後ろを追いかけることにした。 そんなある日、隣室の男が失踪する。—————

●作品詳細

『凶悪』『彼女がその名を知らない鳥たち』『止められるか、俺たちを』など数々の受賞作品を手がける映画監督、白石和彌に「長期熟成されたウイスキーを味わうように、深く記憶の余韻が広がる映画だ。」と評された梅村和史初長編監督作品。2020年度サンパウロ国際映画祭にて上映された。主人公・カゲを演じるのは新人の山本真莉。カゲが出会うキーパーソン・老人を演じるのは入江崇史。老人が手にする原稿に記された、紙面上に浮かぶ記憶のような内容を読み進んでいく本作。人生の一瞬にふと立ち止まった女性が、訪れた鉄橋の下で原稿を通して、失いかけていた時間とカゲの記憶に触れる。監督自身がカメラを据え、映し出される街や路地、森、川辺、丘、そこに通り過ぎる夏の光と風一つ一つを丁寧にフレームに収めた。言葉では表せない息を呑む映像や音が夏の原風景を漂わせ、観客の記憶に囁きかける。

静謐と夕暮
『静謐と夕暮』から 入江崇史

■著名人からのコメント

ファスト映画とか再生スピードコントロール機能とか、急速に壊れていく今の映画の世界で、『静謐と夕暮』は映画の可能性に挑んでいる。映画は光景と音で暗闇に投げられた石だと思う。澱んだ空気を慄わせ、波紋になり、転がる。きっと誰かの記憶に触れ、忘れていた何か大切なものを思い出す。
──映画監督:矢崎仁司(風たちの午後/三月のライオン)

堂々たる2時間16分でした。主人公の女の子が最後まで一言も喋らない、ということはこの映画は非説明的に突っ走ると宣言してるようなもの。案の定物語は結末へ向かって散りばめられた意味が収束していくことはなく、予期せぬ文脈へ横滑りしまったく宙吊りの状態へ。その潔さが感動的でした。アラン・ロブ=グリエという作家が「世界は事象が存在するのみで、お互いが関係しあい意味づけされることはない。モノがそこに在るのみ」というようなことを言ったのですが、現実とはまさにそのようなもの。私もこの言葉に深く感銘し私の映画も現実の曖昧さを伝えたいので、そのように演出しようと心掛けています。ようするに既製の映画が追求する「わかりやすさ」を否定すること、です。「わかりやすさ」とは世界を単純化することであり、現実逃避です。逃避せず戦っている梅村くんの姿勢を高く評価します。
──映像作家:伊藤高志

小学校2年生の時、昼寝をしていて天井の木目を見ていたら、突然生まれて初めて『死』の恐怖が降ってきた。怖くてたまらなかった。『静謐と夕暮』を観ている途中にその事を思い出した。何故だろう。いつも散歩する公園がある。僕がその公園で寝ていて、もしも小学生の女の子が僕の顔を覗きこんだら。その後畳の上の布団に体が瞬間移動したらどんな気持ちなんだろう。イメージの連鎖が気持ち悪いのだけど、心地よい。景色が良い。 観ている途中で、この映画の中に入りたくなった。今日はとんでもない才能に巡り会えた日だ。
──映画監督:大崎章(無限ファンデーション/お盆の弟)

静謐と夕暮
『静謐と夕暮』 場面写真

今日から明日への変化は、いつもささやかです。 同じような悩みを抱え、同じようなご飯を食べ、同じような景色に囲まれ、ほとんどの日は過ぎ去っていきます。たまに大きな変化があっても、日々の暮らしはそれすら取り込み、やがて地ならしされてしまいます。 静謐と夕暮は、そんな平坦な日々にある美しさや残酷さを、逃がさないよう、そっとすくいとるように捉えていました。希望も絶望も、生も死も、あらゆるものが並列に、ある種の平等さを持ってポツポツと画面に並んでいく。 自分が忘れてしまっても、この映画が大切なことを覚えてくれている気がして、僕はなんだか救われた気がしました。
──映画監督・劇作家・演出家:山西竜矢 (彼女来来)

ぬるい覚悟で、なんとなく撮られたショットがひとつもない。⼀瞬の迷いや揺らぎさえなく、徹底して“静謐”でありながら、しかし恐ろしいほどの熱量で、全篇が強靭な意志に貫かれている。その何たる切実さ。朝起き上がる活⼒も思い出せず、ただひたすら何かが苦しい。そんな⼈たちに観てほしいと強く思った。どうしようもないほどに居なくなってしまいたいと思う⽇や、その淵に⽴っているような⼈が、息ができるような時間が流れているからだ。何かを理解しようとしなくても良くて、じっと⾒つめるだけでも良い。いつか、この映画で観た情景をふと思い出し、途⽅もない感動に包囲される⽇が必ずやってくる。
『静謐と⼣暮』という傑作を、梅村和史という映画作家を、私たちが⾒逃す理由はない。
──映画監督:工藤梨穂(オーファンズブルース/裸足で鳴らしてみせろ)

静謐と夕暮
『静謐と夕暮』 場面写真

「自分、生きてるなぁ」と実感できる映画でした。 傷ついたり目的を見失ったり居場所を無くしても、自分で自分を励ましたり自分に優しくできれば、生きるエネルギーが湧いてくる。映画が終わって立ち上がると、体内には温かいエネルギーが駆け巡っていました。
──俳優:上川周作(NHK「まんぷく」/映画「CHAIN/チェイン」)

これまで静謐について考え作品を発表してきたが、この映画には私のまだ知らない「静謐」があった。 ただ台詞が少ないことや、静かな場面が多いからだけではない。きっと監督のじっと見つめる眼差しがもたらすのだろう。一方で、静謐とは裏腹に監督の強い情熱が根底に横たわっているのも感じられた。音楽まで自ら手がける梅村監督がこれからどんな映画を撮っていくのか、とても楽しみにしています。
──音楽家:原摩利彦

主人公の女性・カゲは言葉を持たない。彼女は言葉の代わりに自転車を漕ぎ、文字を書き、鮎や白米を頬張る。その姿の中に彼女の思いは落ちている。無理に言葉を投げかける必要はない。見つめることで対話もできるということを『静謐と夕暮』は教えてくれる。繰り返される記憶のような輝かしい風景の隙間を夏の涼しげな光と風が通り過ぎていく。
──映画監督:山本英(小さな声で囁いて)

平然と道に迷う/悠然と闊歩。周りは気づかない/ここはしらない。拡がる視界に眠る色が融ける。泰然と、でも/落ちる夜。緊張/緊張しているし、まあ、めっちゃ不安/実際。静かな湖畔に指を立てる/波紋。 梅ちゃんはいつもだいたい橙色の服を着ているのだった。
──映画監督:川添彩(とてつもなく大きな)

よりよく見ようとして、よりよく聞こうとして、そうやって映画が作られていく。引き延ばされた一瞬が通り過ぎていく。〝ほとんど何もない”風景を大事なものだと信じてる。こんなに静かな蝉の声、はじめて聞きました。
──映画監督:松野泉(さよならも出来ない)

人物、鉛筆、自転車、文化住宅、リアカー、居酒屋、道路、鉄橋、風に靡く草、虫の音、空、河川敷・・・それら情景の悠々とした時間の流れはただ懐かしく、幽霊の気分で見入ってしまった。
──映像作家:川合匠[カワイオカムラ](ヘコヒョン/ムードホール)

静謐と夕暮れ
『静謐と夕暮』 場面写真

日常では思い出す暇もなく ふとよぎっても通り過ぎていく

咳の奥に聞こえる川の音 おんぶした時に見た鮮やかな緑 鉄橋に映った黄色い自転車の影 “明日も晴れるみたいですよ”

いつでも 風が吹いていた 大切なことは忘れたふりをしても残っている
──映画作家:池添俊

静謐と夕暮
『静謐と夕暮』 場面写真

■映画『静謐と夕暮』

●キャスト/スタッフ

山本真莉/入江崇史/石田武久/長谷川千紗/仲町よみ/野間清史/湯本ちえみ/栗原翔/南野佳嗣/和田昂士/延岡圭悟/梶原一真/赤松陽生/吉田鼓太良/鈴木一博/岡本大地/石田健太/福岡芳穂

監督・脚本・撮影・編集・カラーリスト・音楽・照明 梅村和史

ロケーション管理・衣装管理・メイク・小道具・美術監督 山本真莉

プロデューサー・編集・録音技師・整音・ダビング・照明 唯野浩平

●予告編

●作品情報

製作:2020年/136分/アメリカンビスタ/5.1ch/カラー/日本

公式サイト: https://mitei10kisei.wixsite.com/silence-sunset-jp

●監督プロフィール

梅村和史。1996年生まれ。岐阜県出身。高校時代、『Dr.strangelove』(スタンリー・キューブリック監督)に出会い、いつかこれを超えるかっこいいものを作りたいと思い、映画の道に進む。初監督作品は『つたにこいする』(2018)。監督の他、音楽制作にも力を注いでおり、『忘れてくけど』『彷徨う煙のように』『赤い惑星』『ROLL』(村瀬大智監督)の音楽も手がけた。本作は初の長編監督作品。

静謐と夕暮
梅村和史監督

2022年1月8日(土)から池袋シネマ・ロサにて、1週間限定公開レイトショー

静謐と夕暮

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