二人の若き女優。小野花梨、見上愛。志尊淳から「自分と同じ事務所にすごい子が入ったんです」の声。

二人の若き女優。小野花梨、見上愛。志尊淳から「自分と同じ事務所にすごい子が入ったんです」の声。

10月16日、渋谷ユーロスペースにて、映画『プリテンダーズ』の舞台挨拶が開催。登壇者は、小野花梨、見上愛、熊坂出監督。主演二人のキャスティングの理由や、SNSと接し方、二人のそれぞれの印象などが語られた。

プリテンダーズ
左)熊坂出監督 中)小野花梨 右)見上愛

■映画『プリテンダーズ』舞台挨拶

▼監督に聴くキャスティングの理由

MC:伊藤さとり
まず熊坂出監督に伺います。今回の小野さんと見上さんのキャスティングが役にマッチしていると思ったんですが、どういった思いからお2人に声をかけたのでしょうか?

熊坂出監督
小野花梨さんとはずいぶん前に知り合いました。『人狼ゲーム ビーストサイド』(2014)という映画でご一緒したんですけど、そのときに本当にすごく強く強く印象に残っていました。当時の小野さんは16歳だったと思います。
その時に、みんな印象に残っているんですが、小野花梨さんは個人的にちょっと思うことがありまして、彼女でいつか主演の映画を撮らせていただきたいなっていうのはずっと思ってました。

▼見上さんは、志尊淳さんからの紹介

熊坂出監督
小野花梨さんは早い段階で、こういう企画があるっていうことをお話して2人で会ったりしていたんですが、見上さんは風子役をどうしようと考えていた時に紹介してくれたのが志尊淳くんなんです。彼が「自分と同じ事務所にすごい子が入ったんです」というふうに連絡をいただいて、それで、彼女と会ってみようかなっていうことで実際に正式にオファーしていただいたんです。そのときに小野花梨さんにも同席していいただきました。小野さんにとっては全然よくわからない状況だったと思うんですけども。

小野花梨
本当に意味がわからなかったです。

▼ワークショップの話。エチュード「シーソー」

熊坂出監督
見上さんを呼んで、その場でワークショップをやったんです。

めちゃめちゃな話なんですけど、小さい会議室でワークショップをして、2人でお芝居してもらって、それを見ていたら僕は「最高だな、素晴らしいな」と思って、帰りに小野さんと話たら「良かったですね」っていう言葉をもらいました。

小野花梨
生意気にね(笑)

熊坂出監督
そういう状態でしたね。

▼どんなワークショップ?

MC:伊藤さとり
どういうワークショップだったんですか?

熊坂出監督
「シーソー」って言うすごく有名なエチュードなんですけど、それをやりました。それは僕が普段やっている、“芝居を再現できるかどうか”っていうことを推し量るためには、便利なワークショップがあるんです。
それでこの二人だったら、単なる自己表現ではなくて、きちんと“他者と響き合う”っていうことができるなと思いました。だからこの2人にしようと思ったんです。
「シーソー」は多分ググったら検索に出てくる気がします。今ちょっと説明するのが難しいですけれども。

▼見上さんと先輩・志尊淳

MC:伊藤さとり
見上さんはいかがでしたか?こうやってね2人ともこういう出会いの中で役が決まった感想は。

見上愛
その経緯を知ったのが、割と後の方だったので、事務所の先輩(志尊淳さん)が私の名前を出してくださったことも知らない状態でした。名前を出してくださったときには、私は先輩にはご挨拶しかしたことがなかったんです。お話したこともなかった先輩が「そんなふうに言ってくださってたんだ」みたいなことがあって、全部が驚きでした。けれど参加してみてすごい楽しかったので、何か運命を感じております。

▼小野さんに聴く見上さんの印象。希少価値性

MC:伊藤さとり
小野花梨さんは、見上さんのどんなところが「一緒に仕事をしたい」と思った一番のポイントは何でしたか?

小野花梨
あぁ、なるほど…。

見上愛
悩むな悩むな(笑)

プリテンダーズ
左)小野花梨 右)見上愛

小野花梨
ちょっと敵を作る言い方かもしれないんですけど、愛ちゃんは自意識が無い人だと思いました。(一般的に)自意識って人からすごい感じますよね。人からこう見られたいとか、自分がこうありたいみたいなそういう意識って当たり前に持っているものですし、それが愛ちゃんは皆無でした。それはすごく珍しいことだなと私は思うんです。

熊坂出監督
珍しいですよね。こういった仕事では。

小野花梨
本当に監督がおっしゃる通りですね。だからそういう希少価値性というか、あんまりいないなぁという意味でも衝撃的でした。

▼見上さんからみた小野さんの印象

MC:伊藤さとり
そのように言われていますけれども、見上さんは小野花梨さんを間近で見て、花田花梨というキャラクターと小野花梨さんと、この映画で過ごして、どのように思いましたか?

見上愛
あ、もう大好きです。というのは、さっき珍しいって言ってくださいましたけど、私からしたら花梨ちゃんがすごく珍しい人に見えたんです。自分が弱いっていうことを自分で認めているからこそ、人にもすごい優しいんですよ。
一緒になっていろんなことを闘ってくれたりとか、そういう優しさとか強さを持った人だなあと思いました。それが小野花梨ちゃん自身でもあるし、花田花梨の良さとしてもスクリーンに映っているなと思ったので、そこをぜひ注目してみてください。

▼小野さんと見上さんあっての作品

MC:伊藤さとり
監督が今回、「小野花梨さんで」って思ったところが、花田花梨というキャラクターとして…っていうとおかしいかもしれないですけど、悩みを出していく難しい役だと思いますね。

熊坂出監督
あぁ、なるほど。

MC:伊藤さとり

どうだったんでしょうか。2人と話し合いながら、小野花梨さんだからこそ、成し得たことっていうのは。

熊坂出監督
そうですね。全部本当に、小野花梨と見上愛無しでは出来なかった映画になっていると思います。そうですね。どう言えばいいかな。どんなことを言えばいいですかね(笑)
演技って基本的には恥ずかしい(と感じる)行為だってよく言われるんです。俳優にとっても。さっき話したことの連関でいうと、自知識があるから。役者は生身の自分をさらけ出していく行為なので、要はwitterと一緒ですよね。
日本人で言うと匿名でハンドルネームを作って、本音をつぶやくと思うんですが、それって芝居に似ていると思うんです。演技に似ているなと思ったのは、演技は役柄を与えること・与えられることによって、“本当”が出てしまうものだと僕は思っているんです。
わかりますかね、この感じ。そこがTwitterと一緒だとおもうんです。だから役名を与えられるから本音を出せるんですよね。でも本音を出す行為ってのは基本的には恥ずかしい行為で、自分をさらけ出すということなので、そういった意味で言うと、これからご覧になっていただく方が多いので、なかなかネタバレができないんですけど。
彼女はそういった意味で、全てにおいて本当のこととして、全部をさらけ出してくださっているんですけど、潔く。そういったことができる人が一体どれだけいるだろうかって思うんです。それは自分も含めて。僕なんか到底できないし、大人として見習うべきことが多々あるようなことをこの人たちによって思いました。

プリテンダーズ
左)小野花梨 右)見上愛

▼熊坂監督が語るSNSについての話

MC:伊藤さとり
この映画の中にYouTubeだったり、ネットというものが描かれているわけですからね。ネットって身近なもので、ときにすごく励まされれるし、ときにすごく恐怖を感じるものでもあると思いますね。

熊坂出監督
本当ですよね。(脳科学で知られる東北大学教授の)川島隆太さんの研究で、SNSを利用している7万人ぐらいの子供たちの脳を追跡調査した研究結果があって、SNSとかスマホに触れている時間が多い子供たちほど脳が発達していないっていう研究結果があるんです。それで換算すると例えばSNSに触れている子どもたちが、中学3年生が小学校6年生の知能のまま、止まってしまっているっていう、怖い研究成果があったりします。
だからSNSはなかなか、ちょっと難しいですよね。SNSで読んでる情報って、1%から3%しか脳に残っていないっていうことも言われています。ニコラス・ジョージ・カーが『ネット・バカ』(原題:The Shallows)という本を15年ぐらい前に発表しているんですけど。それとか、最近だと、「スマホ脳」(アンデシュ・ハンセン)というスウェーデンの学者さんが書いた本に載っているので、もしよかったらご覧ください。

MC:伊藤さとり
監督の知識がすごいですね。
お2人は、ネットとかSNSとの付き合い方っていうのはいろいろと考えてますか。特に小野花梨さんは、SNSはやってらっしゃらないですよね。

小野花梨
そうですねSNSは一切やってないんです。
難しいですよね。自分の中で折り合いをうまくつけられたら、うまく付き合っていくっていう意味では、きっと選択肢はいろいろあると思うんですけど、私はそこら辺がすごく苦手で、自分と折り合いをつけることが苦手ですし、社会と折り合いをつけること、他者と折り合いつけること、折り合いをつけるっていうことがすごく苦手というのを自覚しています。
だから、これは逃げかもしれないですけど、距離を置く・やらないっていう選択を取ったという次第です。

熊坂出監督
でも、小野さんは本当にすごいですけどね。今のSNSの話で思い出したんですけど、花田花梨っていうこれから見ていただく主人公は、そういった意味ですごくスマホをいじってる人にしたんです。常にスマホをいじってます。ご覧になるとわかると思うんですが、その弊害がキャラクターに出ています。
さっきのお話の中で言うと、LINEでコミュニケーションをしますよね。そのときに普通の子供たちは、割と1行とか10数文字とかで、あまり中身のない会話をするんです。わかりますかねこれ、想像にたやすいと思うんですけども。
僕は長いLINEをしがちでよく怒られるんですけど、小野さんとのLINEって、彼女はめちゃくちゃ読解力があって、すごい長いLINEで返してくれるんです。めちゃくちゃ読みごたえのある、すごく的を得ている、すごく深い思考に基づいた考えを聞かせてくれるんですよね。
だから、そういうことができる20才とかって、21、22、いや23歳か(汗)
そういうふうに何か深いコミュニケーションをLINEを通してやるっていうのは、なかなかレアだと思いますね。20歳とか21歳ぐらいの役者と長いLINEをすると、「長いLINEを送るな」って言われるのが普通だから、すごくレアケースだと思いますね。

▼見上さんとSNSの折り合いの付け方

MC:伊藤さとり
見上さんはSNSの使い方はいかがですか?

見上愛
私は折り合いをつけるのは、特にうまい方だと思います。自分自身とお仕事をしてるときの自分自身とSNSで発信してる自分とにあまり差がないので、そんなにつらく思うこともないというか、もちろん傷つくコメントとかもあるんですけど、でも何か自分の投稿を見て、何かちょっと元気になってくださってる方が1人でもいれば、それで万々歳かなというくらいのゆるっとした感じで考えてます。

熊坂出監督
すごいですよね。このメンタリティ。

MC:伊藤さとり
だから、やっぱりこの2人じゃなきゃ駄目なんだって思いますね。

熊坂出監督
本当にそうなんですよね。

▼共演者同士の印象

MC:伊藤さとり
お互いで共演していて、ここはやっぱすごかったなって思うことを教えて下さい。

見上愛
シーンを明らかにせずに言わせていただくと、もう演じてるとか、そういうラインじゃないんですよ。花田花梨として常にずっと存在していて、だから、なんかそれがすごくて。
お仕事を始めてわりとすぐのときの撮影で、「女優さんをやるって、ここまでしなきゃいけないんだ」っていうふうにすごい気付かされました。上辺で何かをこういうふうにセリフを言おうとか、こういうふうに動こうとか、そんなことじゃなくて、もっと自分の身を削って。
そうじゃないと、本当の表現って生まれないし、だからこそ、小野花梨ちゃんの表現なんだなっていうのは、今まで他の作品も見ていたので。個人的にすごい女優さんだなと思っていて、ここまでやってるから、ああいう表現が生まれるんだっていうことが現場で一緒になって納得できました。

▼花田花梨と小野花梨のオン、オフの有無

MC:伊藤さとり
この話をずっと聞いてると小野花梨と花田花梨のシンクロ感は強いだろうなと思うんですけど、いかがでしたか?

小野花梨
多分それはなかったかもしれないですね。映画をご覧になった方からいろんなことを言われるんですが、演出を受けるって、つまりそれに近しいというか、自分がこうやりたい・こう思ったのに、でもそうじゃない。
監督はまた別のところからも見ていますから。そうじゃなくて、こっちの方向でいこうとか、っていうことが、すごく物語の中にリンクしちゃって、なんでこんなみんな責めるんだとか。なんでこんなふうに言われなきゃいけないだろうとか。わかんなくなってきちゃって、なんか泣きながら、すごい監督のことを睨みながら、演出聞いてるみたいな。ああして、こうして「わかる?」みたいに言われました。
オン・オフとかはなかったんじゃないかなと思います。

▼繊細な小野さんと、飄々とした見上さん

MC:伊藤さとり
その時期は特に小野さんは過敏になっていたのでしょうか。

熊坂出監督
過敏になっていましたね。過敏というか、そうですね繊細と言うんでしょうかね。
アーティストですからね。

小野花梨
現場では慰めてくれるメイクさんがいたりとかなんかこう、監督の思いをゆるっと伝えてくれる助監督がいたりとか、チームとして作品をつくっていくっていう、たくさんの人に支えられて映画って出来ているなっていうのをひしひしと深々と感じました。

MC:伊藤さとり
だからこそ、生々しさがこう考えられるし、私達に伝わってくるんだなって思いました。
見上さんに対して、ご一緒してここがっていう話はありますか。

小野花梨
愛ちゃんは、すごく飄々としていましたね。私は例えば、○(まる)が来たときにスッゴイ○(まる)だったか…

見上愛
その例え、よくわからないですよ(笑)

小野花梨
インタビューとかで、めっちゃ○(まる)なんだけどとか、何かこう見る・見て、すごく思うタイプなんです。良くも悪くも。
愛ちゃんは、「○(まる)だったね、確かに」みたいな、「□(四角)だったかも、○(まる)だったかも」って、そういうフランクさがありました。
私が二度とこのシーンは撮りたくなりたくないっていうところにまでなってしまったことがあるんです。1回しかやらないって言われたのですが、結局2回やったんです。
その時に私は立ち直るのに結構時間がかかって、「すぐには、できないから」ってなってしまったんですけど、愛ちゃんは、「わかりました!」みたいな「はーい」みたいな感じでやるから、そのバイタリティは、見習わないといけないと思いました。大尊敬していますね。

▼二人に感じた監督の感想

熊坂出監督
でも、小野さんがそこまでなってしまうのは当たり前だと思います。
小野さんがそこまでなってしまうぐらいのことをやらせてしまってるし、でも三上さんは、それでも何て言うんですかね。
小野さんの隣に立とうって、常に理解しようっていうふうなスタンスなので、あのときも結構ね、一緒になって僕のことを睨んでいましたね。

見上愛
そうですね。「もう1回やるにしても今日じゃないですよ」って、目だけで伝えようとしました。

熊坂出監督
そういうフォローをLINEで送ってくるんですよ。「すいませんでした」とか。すごい成熟した大人ですよね。

▼小野さんから映画をご覧になる方へのメッセージ

MC:伊藤さとり
それでは、小野さんからメッセージをいただけますか。

小野花梨
5歳くらいからこのお仕事をさせていただいて、今年で23歳になりました。
初めて長編の映画で主演をさせていただきました。私にとっては本当に宝物のような大切な大切な作品です。
ただ、いろんな人がいますので、きっとそんな中には共感できない人とか嫌悪感を抱く人とか、たくさんいろんな思いにおそらくなられると思います。でもそのどれもが私は嬉しいといいますか、大切にしていただきたいというか、偉そうですけど、そんなふうに思っております。
映画はみんなでどんなに頑張っても、結局観ていただかなければ、ただのデータでしかありませんので、こうやって足を運んで観ていただくということが本当にとっても痛いくらい嬉しくありがたく思います。
これからも、それぞれいろんな気持ちを皆様にお届けできるように、日々考えて、大切に生きていきたいと思っておりますので、長々と申し訳ないですけど、映画をお楽しみください。本当にありがとうございました。

プリテンダーズ
左)熊坂出監督 中)小野花梨 右)見上愛

■映画『プリテンダーズ』

監督・脚本:熊坂出
出演:小野花梨 見上愛 古舘寛治 奥野瑛太 吉村界人 柳ゆり菜 佐藤玲 加藤諒 浅香航大 村上虹郎 津田寛治 渡辺哲 銀粉蝶

公式サイト:https://pretenders-film.jp/

公式Twitter: https://twitter.com/pretenders_film

10.16(土)渋谷ユーロスペース他全国順次公開

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