- 2026年7月30日
映画『四十九-SEEK』公開直前に続編製作・完成を発表!前代未聞の同時進行、海外版ビジュアル解禁と特別映像上映も
映画『四十九-SEEK』公開直前に続編製作・完成を発表!前代……
『いっちょらい』『時のおと』に続く片山享監督の長編映画『かぶと島が浮く日』。自身の故郷である福井を舞台にした過去作とは異なり、本作では企画・主演の松林慎司さんの故郷・岩国を舞台に「すべてを肯定する」眼差しで向き合っています。再開発が進む街や失われゆく映画館の姿を過度な感傷を交えずに見つめ、土地の人々の息遣いや記憶を物語へと刻み込んだ片山監督。過去作からの共通点や演出の新たな発見、そして映画を通して大好きな人たちの記憶を未来へ遺す理由についてじっくりと語っていただきました。

背景:
『いっちょらい』では、過去の傷や思い通りにいかない現実を無理に「乗り越える」のではなく、それを抱えたまま前に一歩踏み出す姿が描かれました。本作の幹男や信弘もまた、映画館の閉館や親の認知症という現実を抱えながら歩みを進めます。
質問:
松林慎司さんとのタッグで再び等身大の男性の揺れ動きを描く中で、安易な劇的解決を与えず「過去を背負ったまま今を生きる」人間の不器用さや温かさを捉える姿勢は、監督の中でどう共通し、大切にされているのでしょうか?

片山享監督
前提としてなのですが、今回再び松林慎司さん(以後慎司さん)と一緒に映画をつくらせていただくことになり、前作『いっちょらい』のことはあまり考えていませんでした。ただ、撮影後気付いたことですが、過去を背負いながら生きる"おじさん"というところが共通していたのに驚きました。
でも、今回『いっちょらい』と大きく違うところ、そして大きく似通ったところがありました。『いっちょらい』は僕の生まれ故郷が舞台、そして『かぶと島が浮く日』は慎司さんの生まれ故郷が舞台ということでした。でもそれがある種似たおじさんの話を作り出したのかもしれません。ただ、僕は自分の故郷は簡単に否定できました。それは生まれ育った所なんだからと思います。自信を持って責任をとれる。でも、慎司さんの故郷は同じようには否定できないと思いました。だからこそすべてを肯定しよう。過去も未来も、そして現在も。劇的な解決に向かわなかったのはそういうところなのかもしれません。
背景:
『時のおと』では、地域の音や非演技者(地元の人々)との関わりから“嘘のない映画”を追求されました。本作でも地元の市民エキストラや「劇団のんた」の中谷久江さん、さらには柴犬のジェームズjr.までが画面の中で等身大の生活感を漂わせています。
質問:
プロの俳優と地元の「生きた空気」を交差させ、演劇的ではない“嘘のない時間”を現場で立ち上げていく演出アプローチは、『時のおと』から本作へどのように継承され、洗練されていったのでしょうか?

片山享監督
今回は慎司さん以外のキャストの方々とははじめましての関係性でした。皆さん沢山経歴のある方々だったので、僕の演出に戸惑わせてしまった場面もあったかと思いますが、沢山お話しもしてくださって、その中で構築していくことができたので、『時のおと』とはまた違った質感になったのではと思っています。なのでとても新しい発見も沢山ありましたし、継承・洗練ってよりはニュータイプって感じです!
また、中谷さんはじめ、長岡さん、紗羽さん、リジャルさんといった岩国のキャストの方々もとても素敵に演じてくださいました。特に幹男くんのお母さんを演じてくださった中谷さんはホントにかわいらしくて。現場で癒されていました。ジェームズはただただ名俳優でした。
背景:
『いっちょらい』や『時のおと』が監督ご自身の出身地(福井)や身体感覚をベースに描かれていたのに対し、本作は松林さんの故郷・岩国と「原点回帰」というテーマが起点となっています。
質問:
監督ご自身の視点だけでなく「プロデューサーである松林さんの個人の記憶や原点」を演出に落とし込んでいく作業は、過去作の映画作りと比べて、監督にどのような新しい発見や表現の広がりをもたらしましたか?

片山享監督
先ほども書いたことですが、岩国を否定する訳にいかなかったんです。その責任はもっと岩国を知らない限りしてはいけないって思いました。それはただ知るという意味ではなく、本当に知るという意味です。だからこそ、慎司さんが生まれて育っていく過程の中で見たもの経験したことが、その真実が、この映画を育て上げてくれると思いました。その中で出てきたのが、慎司さんが学生の頃毎日見ていた「かぶと島」でした。「かぶと島は毎日様子が変わるんだよ。浮いて見えたり、大きく見えたり、小さく見えたり」そんなことを話す慎司さんの横顔は、あたかも学生時代の慎司さんの顔のように感じました。でも今は浮いたりしないんだと。これだと思いました。
自分ではない人の経験から話をつくるという作業は、新しい感覚をくれました。そしてそれを自分が愛せるかもとても大事なことだと思いました。だから、僕の好きな慎司さんすべてをこの映画で出したいと思えました。
背景:
本作には、映画館の閉館や親の老いという「失われゆくもの」、かぶと島のような「不変のもの」に加え、若い世代が地元のわさびを使った新メニュー開発に挑戦する「新しく生まれるもの」という層が明確に描かれています。
質問:
単なるノスタルジーや喪失感にとどまらず、次の世代へのバトンタッチや「時間の循環」を過去作以上に強く物語に組み込まれた意図と、その演出上のバランスについてお聞かせください。
片山享監督
僕の故郷福井県も特に福井駅は再開発がまさに行われている時でした。岩国もまた岩国駅を中心として再開発が行われていました。福井駅の再開発を知った時「失われる恐怖」を感じました。「俺の思い出を」なんて少し憤りの気持ちを持ったこともありました。ただ、岩国の再開発にはそういう感情を持ちませんでした。それは至極当たり前のことで、僕は昔の岩国を知らないからです。だからこそ客観的に見ることができました。岩国駅には若い世代の方々もいて、「この人達にとっては再開発されたこの街がスタンダードになっていくんだな」そう思いました。街とはそうやって続いていくんだなと。なんというか、外観は日本の特性上どうしても様相を変えていかないといけないものなのですが、そこには「記憶」というものが積み重なっていくんだなと。色んな記憶。良いも悪いも含めて。そんなことを岩国に感じました。だからこそ、淡々と色んなものを肯定していく。そうしたらこの街がもっと見えていく気がしました。なので、感傷的になることを避けました。そこには僕の思いめいたものが乗ってしまうし、ある種正解をつくってしまうことになる。正解をつくると時が止まってしまうような感覚がありました。もちろん正解なんです。みんな正解なんです。街も。ただその正解は「今」だけなのかもしれません。そのバランスみたいなものは大事にしました。あ、唯一正解めいたものは台詞にしました。でも、それは観てそれぞれの方々が感じたものがすべてかなとも思うので明記することはやめておきます。
かぶと島に関しては、不変な立ち位置として捉えてくださる方が多くて、そこは僕としてはとても興味深いことでした。その客観性がまたこの映画をより深いところへと連れてってくれるんだなと。かぶと島に感謝です。
背景:
取り壊される実在の映画館(岩国ニューセントラル)で撮影を行い、「建物を保存できなくても物語に乗せた映像として残す」というアプローチや、全国の単館系映画館で上映していくプロセスは、映画という存在そのものが街の記憶を遺すものになっている印象を受けます。
質問:
『時のおと』や『いっちょらい』を経て、本作で「映画という媒体が、消えゆく街の姿やそこに生きる人々の魂を記録し、継承していく力」について、監督ご自身の中でどのような新たな捉えかたがありましたか?
片山享監督
なんかこんなことを書くのは初めてかもしれませんが、僕の中の指標に300年後の人がこの映画見たらどう思うのかなってのがあって、それは今回に限らずいつも思うんですが、単純に僕が300年前のご先祖さんを知らないってだけですが、ご先祖さんが誰も分からない時代の映画を観て、「あー変わってないな」って思ったらすげぇなって。そんなことを信じてるので、これは単純に僕のエゴなのかもしれませんね。
もちろん残す意義は持っています。それは僕が好きだから。好きなものを僕がいなくなった後も知ってもらいたいし、好きになってもらいたい。そこには人も密接に関わっていて、僕は自分の好きな人が好きなものも好きなんです。ニューセントラルに初めて入らせていただいた時、色んなことは感じましたが、元館主の小林さんと小林さんの会社の社員の松崎さんに会って、本当に人として大好きになりました。もちろん映画館は好きだし、残したい、でももしかしたらそれ以上に僕の大好きな彼らが好きなニューセントラルを、そして慎司さんがかつて通っていたニューセントラルを必ず残さねばならないって思いました。
そこには新しい感覚はなく、それこそ僕が映画を撮り続ける今のところの理由なのかもしれません。
映画『かぶと島が浮く日』
ストーリー
閉館した映画館の元支配人である幹男は、その映画館が入るビルが再開発で取り壊されることになり、 自分の原点を辿り始める。幹男の高校時代からの親友である信弘は、父親の認知症に正面から向き合えないでいた。古くなりなくなっていくもの。そして、そこに生まれる新しいもの。変化をむかえる街で起こる、ほんの一瞬の出来事。
<出演>
松林慎司 ドロンズ石本 篠田諒 ジェームスjr. 中谷久江 長岡るか Sandip Rizal 及川いぞう
佐伯日菜子 岡本信人
<スタッフ>
企画/プロデュース:松林慎司 監督/脚本:片山享 撮影:深谷祐次 照明:松島翔平 録音:坂元就
助監督:Kako Annika Esashi スチール:宮本剛 アソシエイトプロデューサー:川口恵美 小林功武 ヘアメイク:馬場エミリ
衣装:中西永人 方言指導:紗羽優那 音楽:小野川浩幸 美術協力:大門佑輔 編集:片山享 / 安楽涼製作:いわくに映画製作委員会 制作プロダクション:ハナ映像社 後援:岩国市
配給宣伝 ムービー・アクト・プロジェクト 配給協力 ミカタ・エンタテインメント
88分/日本/5.1ch/カラー/アメリカンビスタ/DCP ©︎いわくに映画製作委員会
公式HP https://rockland-movie.com/
公式インスタグラム https://www.instagram.com/rock_land_movie
公式X https://x.com/iwakunimovie
2026年10月3日より新宿K’s cinemaほか全国公開
