街のどこに行っても工場に見られているようなロケーションが気に入った。奥田裕介監督『世界を変えなかった不確かな罪』

街のどこに行っても工場に見られているようなロケーションが気に入った。奥田裕介監督『世界を変えなかった不確かな罪』

横浜ジャック&ベティにて、映画『世界を変えなかった不確かな罪』が1月22日(土)から1月28日(金)まで上映されている。
ジャック&ベティでは、1月29日から本劇場の30周年企画映画『誰かの花』が公開される。それに伴い、奥田裕介監督の劇場デビュー作となる『世界を変えなかった不確かな罪』がリバイバル上映となっている。1月23日、上映前舞台挨拶として、奥田裕介監督と富岡英里子さんが登壇。撮影地として安中を選んだ理由、役作りへの取り組みについて語った。

世界を変えなかった不確かな罪
左)奥田裕介監督 右)富岡英里子

■映画『世界を変えなかった不確かな罪』

STORY
工場が見下ろす町で。
忘れられない罪から逃げてきたピノ(寉岡萌希)と過去の罪と町から逃げ出せないパピコ(紗都希)が出会った。
ふたりの人生が交錯するときSUMMERTIMEの切ないメロディとともに10年前に止まっていた物語が動きはじめた。
町を抜け出したふたりに孤独な少女・菜摘(松永有紗)と謎の男・真島(木村知貴)が加わり、それぞれの想いを抱えた4人の小さな旅が始まる。
現在と過去が交差し、次第に明らかになるピノの罪とパピコの罪。深い罪を背負った後藤(外波山文明)との出会い。 4人の行方は・・・。

世界を変えなかった不確かな罪

▼上映前舞台挨拶

奥田裕介監督
本日はご来場ありがとうございます監督の奥田裕介と申します。
上映前なので、どこまで話せるかわかりませんが、少しお付き合いいただければと思いますよろしくお願いします。

富岡英里子
本日はこんなご時世の中ご来場いただきましてありがとうございます。こういう時期なので、皆さんと直接顔を合わせてお話できることがとても嬉しいです。よろしくお願い致します

奥田裕介監督
写真を撮っていただいて大丈夫です。
『世界を変えなかった不確かな罪』の撮影は2016年の5月、6月くらいで約2週間で撮りました。
撮影が群馬の安中というところで、駅を降りた亜鉛工場が山のような亜鉛工場があるというようなロケーションでした。僕自身が、20代前半のときにドラマの制作部をやっていた時に、たまたま降りた場所が、その安中でした。
そこですごくインパクトがあるというか、安中の街のどこに行っても、その工場に見られてるようなロケーションですごく気に入りました。
いつか自分が長編映画を撮る時は、ここで撮りたいという気持ちで何年か前に決めていて、長編映画の話をいただいた時に安中に行きました。

富岡英里子
映画の中で工場の音がカンカンと出てるんですけど、それもすごく印象的なのでそれを聞きながら感じてもらえたら嬉しいです。

奥田裕介監督
この映画に出ている松永有紗さんという、当時まだ10代の女優さんがいまして、今回、女子高生の役をやっていただいています。役自体がものすごく暗い役で、本人はすごく明るいキャラクターの子なんですけども、撮影の時にキャピキャピする自分を抑えるために、カットからカットの待っている間にずっと壁に向かっていたのが印象的でした。
今回、富岡さんは役作りをどういう形でやりましたか?

富岡英里子
すごい前のことなんで、記憶をたどるんですけど、大きく見た目で言うと、髪の毛が長かったのをベリーショートにして染めてというのは外見的なアプローチとして行いました。
でもなんか内面的なことがものすごく。まぁ、(上映前なので)あまり言えないんですけれども、彼女が経験することが私が経験したことではなかったので、どういう精神を持った人なのかっていうことを考えることの方に重点を置いた感じです。

奥田裕介監督
この映画がジャニスジョップリンの「SUMMERTIME」という曲から、自分がいろいろインスパイアされて脚本を書き始めました。私もオリジナルで脚本を書いていまして、自分の出来事だったりとか自分の周りの友人のことを織り交ぜて書きました。あの「SUMMERTIME」という曲がすごく印象的に出てくる映画なのですが、富岡さんはギターの練習をしてきたんですよね。

富岡英里子
そうですね。ギターの練習をして、弾けたかどうかはちょっとわかりませんが…(苦笑)
それっぽくなったかな。

奥田裕介監督
あと、映画の中で、マニキュアバトンという、これも脚本上で、作ったおまじないみたいなものがあるんですけども、そのマニキュアバトンがどういうふうに繋がれていって、最後、ラストカットで誰がどういうふうに繋いでいったのかっていうところも、この映画の見どころかなと思いますので、注意して観ていただければと思います。

富岡英里子
そうですね。良かれと思ってしたことが…。

奥田裕介監督
今月末の1月29日から「誰かの花」も公開になるんですけども、土台として持っているテーマが「善意から生まれた悲劇とその先の救い」というのを意識しながら脚本を書いています。
僕自身が良かれと思ってやったこと、人に対してやったことが裏目に出てしまったりとか、それが逆に迷惑かけてしまったりとか、そういったことが多いです。
善意から生まれた悲劇について、皆さんも多かれ少なかれなにかあるんじゃないかなと思うのですが、それがすごく現れている映画だと思います。
ただそれって、悪い人はいないと思うので、そこに対してどういった救いが提示できていて、皆様にどう感じていただけるのかなというふうに、楽しみにしています。

富岡英里子
この映画だけの話ではなくなってしまうかもしれないんですけど、大きく映画っていう中での話で言うと、私がジャック&ベティさんで初めて出てる作品を流してもらったのが、もう10年ぐらい前なんです。
それが奥田裕介監督のPVだったんですね。AS BROTHERS(アズブラザーズ)さんっていうバンドのPVがYouTubeとかでも見られます。それも上映が決まって流れたというよりも、ジャック&ベティさんで行っている
コンペみたいなのに送って、それで流してもらってというところから始まりました。そこからキネマカーニバルという短編の映画のお祭りで、奥田さんの『溺れるボレロ』(https://www.youtube.com/watch?v=AZWJsNJBqqE)で、
また登壇させてもらって。その後が『世界を変えなかった不確かな罪』で、今回『誰かの花』。その来週から始まる29日から始まるあのジャック&ベティさん30周年企画映画
に繋がっていっています。
何かこの映画館とか、ここに足を運んでくださってる方々に育ててもらったと思っています。今大変な時期ですし、足を運ぶのとかも、苦労があると思うんですけども、これからも通ってもらって、私達みたいな表現者を支えてもらえたらすごく嬉しいです。
また、この映画館が私もすごい大好きなので、同じファンとしてこの映画館の応援なんてできないかもしれないけど、一緒に映画を盛り上げていけたら嬉しいと思っていますので、来週からもよろしくお願いします。

奥田裕介監督
これから見ていただいて本当に少しでも何か引っかかる部分だったり、いいなと思いましたら、来週1月29日から『誰かの花』が、ジャック&ベティさんでは1日に3回かけていただきますので、足を運んでいただけたら嬉しく思います。本日はありがとうございました。

富岡英里子
ありがとうございました。

世界を変えなかった不確かな罪

CAST&STAFF
本作は、楽曲「SUMMERTIME」にインスパイアされた奥田裕介監督が3年の歳月をかけて創りあげた劇場用長編初監督作品である。
作品には、奥田監督の物語創りに魅了されるキャスト・スタッフが集結した。寉岡萌希(「ヘヴンズストーリー」)、紗都希(「死んだ目をした少年」)、松永有紗(「暗殺教室」「人狼ゲーム マッドランド」)の若手注目女優に加え、木村知貴(「湯を沸かすほどの熱い愛」「トータスの旅」)、外波山文明(劇団「椿組」主宰)が出演。撮影は野口高遠、音楽は岡村龍宏、ともに奥田監督の10年来の盟友である。
製作・プロデューサーは、注目の若手映画監督の作品を世に送り出し続ける飯塚冬酒。

SUMMERTIME
「SUMMERTIME」は、長いオペラの歴史の中で初めて黒人が主人公となった「Porgy and Bess」の中で子守り歌として歌われた George Gershwin の名曲である。
今までに、 Billie Holiday, Ella Fitzgerald、 Miles
Davis、 Janis Joplin など偉大なアーティストがカバーしている。
今回、作品の主題歌として「SUMMERTIME」をカバーするのは、次世代の歌姫と名高い女子高生の鈴木瑛美子。
Janis Joplin を彷彿とさせる素晴らしい歌声で蘇った名曲「SUMMERTIME」が全編に切なく流れ、作品を強く印象づけている。

世界を変えなかった不確かな罪
世界を変えなかった不確かな罪

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