大学4年間を費やした映画『たまらん坂』、渡邊雛子「言葉を大事に・お芝居がしたい」

大学4年間を費やした映画『たまらん坂』、渡邊雛子「言葉を大事に・お芝居がしたい」

3月19日(土)から新宿K’sシネマにて映画『たまらん坂』が公開。本作は小谷忠典監督が、武蔵野大学/武蔵野文学館の協力の元、黒井千次氏の短編集を基に四年に及ぶ撮影期間を費やして完成させた長編劇映画。
主人公・山下ひな子を演じるのは、武蔵野大学在学中に抜擢され映画初出演を果たした渡邊雛子。渡辺真起子、古舘寛治、小沢まゆ、七里圭ら日本映画界を支える面々が脇を固めているほか、RC サクセションの名曲「ロックン・ロール・ショー」「多摩蘭坂」も劇中に登場、劇中歌にシンガーソングライターの松本佳奈、アニメーションに大寳ひとみが参加するなど多彩な面々がモノクロームの世界観に彩りを添えている。
今回主演の渡邊雛子さんにインタビューの機会をいただきご自身そして作品についてお話をうかがいました。また共演された小沢まゆさんも同席されており、作品にまつわるエピソードを聴かせていただきました。

たまらん坂

■渡邊雛子さんインタビュー ~ご自身について~

▼お名前について

-渡邊雛子さんのプロフィールを確認していたところ、映画『たまらん坂』(2019)と短編『びびのゆくえ』(2020)で、共通して“ひな子”という名前が使われていることに気づきました。ご自身のお名前も“雛子”という名前なので、その由来やエピソードについて教えて下さい。

渡邊雛子
渡邊雛子は本名です。父親が子どもが生まれた時に、”~子”という名前をつけたくて、名前を探していった時に、画数等で”雛子”が一番いいんじゃないかということで名付けられと耳にしています。

小沢まゆ
3月生まれとか雛祭りが関係しているといったこともなく?

渡邊雛子
何か他に由来があればよかったんですけれども、特にそれ以外の由来の話はないですね。

たまらん坂
渡邊雛子

▼出演2作品と「ひな子」という名前について

-映画『たまらん坂』(2019)と短編『びびのゆくえ』(2020)の2作品で共通して使われた役名”ひな子”について教えて下さい。渡邊雛子さんが出演した小谷監督作品の『たまらん坂』では“山下ひな子”で、同監督作品の『びびのゆくえ』でも、“ひな子”という役名でした。本名と同じ“ひな子”という名前が役名として使われた理由について、エピソードがありましたら聴かせてください。

渡邊雛子
小谷監督から、役名が本名の“ひな子”同じになった理由は特に聞いていないのですが、『たまらん坂』の“山下ひな子”は、最初は”渡辺”というキャラクター名で脚本をいただきました。それが途中から“ひな子”になっていました。
何故かはわからないのですが、恐らく、“山下”という名字は、“山の下”で“坂”と関わるんだと思います。
ひな子というキャラクターが元々、私自身から出発したところがあるので、それが理由かなと思っています。

▼夢、目標とその変遷

-本作のクラウドファンディングの雛子さん自身のコメントで、「小説を書きたいと思って入学した大学」という一文が目に留まりました。ご自身の小説家を目指すといった夢・目標について教えて下さい。

渡邊雛子
言葉を扱って何か書きたいとずっと思っていました。小学生、中学生ぐらいのときには、実際小説を書いていました。
ただ、きちんと作品として結末まで終わらせられることがありませんでした。でも、「何か書くことができるんじゃないかな…」とぼんやり思っていたんです。小説について学びたいという思いがあって、大学に進学しました。

-その小説を友達に見せたりとか、どこかに公開したり、応募した経験はありましたか?

渡邊雛子
書きかけのものを友達によく見せていました。漫画を描く友達がいて、お互いに見せ合うことをしていました。

たまらん坂

-どういったジャンルのものを書いていたのでしょうか。

渡邊雛子
中学生の時はライトノベルばかり読んでいたので、そういうジャンルのものになります。

-コメントの続きの話で、「その後、小谷監督と出会って映画という表現方法と出会った」というものがありました。監督との出会いと、小説から芝居に表現方法が移行していったお話を聞かせてください。

渡邊雛子
お芝居に関しては、最初はもう立っているだけ・座っているといった、ただカメラの前に居るだけというところから始まりました。
やはり共演者の小沢まゆさんが出て来たときに“演技をする”ということになっていったんだと思っています。
やはり演技って、やりとりだと思います。それ以前も監督とプロデューサーである教授が作品について色々と話し合っているのを近くで見せてもらっていました。
小説を書くことのように、机に向かって自分の中から何かを絞り出そうとするんじゃなく、人とああでもないこうでもないと言いながら何かが生まれてくるという表現だとか、物を作るという方法もあるんだなっていうことを感じました。

-渡邊雛子さんと劇中の山下ひな子さんをご自身で比較して、共通点または違うタイプだといった点をお聴かせください。

渡邊雛子
やはり似ていると言うか共通点はたくさんあると思います。人と関わるのがうまくできなかったり、いろんなことを自分の中に抱えてはいるけど、うまくそれを外に出していけなかったり。父親に対してもいろいろと言いたいことはあるけれど、伝えきれていないし、お母さんのことも消化しきれていないけど、それをどうしたらいいのかわかんないというか持て余している感じが、大学生の頃の私そのままだったなと思います。もしかしたらその部分が残っていて、まだ全然成長できていないのかもしれません。共通点はすごくあると思います。

▼口癖としての「たまらん」について

-映画のタイトルの一部でもあり、父親の口癖として出てくる「たまらん」という言葉についての質問です。
「たまらん」という言葉って、あまり女性は使わないのかなという印象がありますが、渡邊雛子さんは使いますか?

渡邊雛子
私はあまり使いませんが、アイドル好きな子が「たまらん」を使っているのをよく聞きますね。

-口癖という話題で続けさせていただきます。渡邊雛子さん自身の口癖はありますか?
 ご自身だけでなく、父親や家族、友人等でも構いません。

渡邊雛子
私は地元が静岡なのですが、祖父の静岡弁が印象に残っています。
「あれせにゃぁー、これせにゃぁー」と言っているのが印象的でよく思い出します。

たまらん坂

-静岡のご出身とのことですが、東京に出てきたのは大学からですか?

渡邊雛子
はい。大学進学で東京に出てきました。

-今回の『たまらん坂』の背景には故郷、ふるさとの歴史・郷土史というものがあると思います。静岡の話が出てきましたが、雛子さんが、ふるさとで思い浮かぶものはなんでしょうか?

渡邊雛子
私の出身は静岡県三島市で、水が思い浮かびます。川がふるさとのイメージとしてあります。

-ふるさととは違うのかもしれませんが、三島というと三島コロッケが思い浮かびますね。

渡邊雛子
三島コロッケは、ある日突然話題になりはじめました(笑)

-あれは町興しで出てきたんでしたっけ。

渡邊雛子
新しいものですね、私が多分高校生、中学生ぐらいの時に耳にするようになりました。

-静岡というとお茶のイメージがありますが、いかがですか?

渡邊雛子
毎食後、お茶を飲む習慣があって、東京に出てきてからはなくなってしまったんですけど、よく飲んでいたなと思います。

▼SNSに書かれた言葉について

-SNSを拝見させていただきました。先日、田中泯さんの映画を観た後に「やっぱり私は演技がしたいなぁ」という言葉を記されていました。その気持ちが現れた理由や影響を受けたことなどを聴かせてください。

渡邊雛子
田中泯さんの踊りというのが“場踊り(田中泯氏なりのあらゆる場に合わせて、固有の踊りを即興で行う表現方法)”が中心・多いという話があって、その場その場でその空間の中で生まれてくるものを肉体を使って表現して行くことを実践されているそうなんです。
空間とか場所とか、何か自分の肉体の違和感みたいなものについて、私は考えたことがありました。精神と肉体とがあって、人と関わるにあたって、肉体があるから関われるけれども、逆に肉体がそれを邪魔している感じがする時もあります。
人間として生まれたから肉体を持っていて、この肉体を用いて、どうやって生きていけるんだろうと考えています。
それが田中泯さんにとって踊りだったと思うんです。
田中泯さんの領域まで振り切ることは、私にはとてもできないですけど、演技という一つの方法を持って関わっていけたらと考えていました。

たまらん坂

▼ダンス経験は?

-ダンスと言えば、ミュージックビデオや短編映画『びびのゆくえ』でも踊っていますが、ダンス経験は?

渡邊雛子
小学生の頃までクラシックバレエを習っていました。踊ることは好きです。

▼演技について

-半年ぐらい前にSNSで「与えられた1を10、100、1000と膨らましていける役者になりたい」と記されていました。半年ほど経過して、その気持ちや現状はいかがでしょうか?

渡邊雛子
半年前とその気持ちに変わりはないです。
当時、名古屋学芸大学の学生さんの作品に関わらせていただくことになって、その時に脚本の中にあったのが、私が演じる女の子っていうのが(東日本大震災の)福島を背景に持っていた人物だったんです。
津波で家族を亡くしている女の子でした。それについて監督が考えていることもそうだけど、私自身がもっとこう深掘りして、いかなきゃいけないなって思っていたのもあって、ああいった言葉になったんだと思います。

たまらん坂

▼写真について

-写真を撮られているようですが、写真撮影は趣味ですか?

渡邊雛子
はい。

-お父様に撮っていただいている写真があって、写真が好きなご家族だなと思いました。

渡邊雛子
もともと祖父が写真屋さんを営んでいて、父親はそれを継いだんです。
今はブライダル撮影などのフリーのカメラマンをしています。そういうこともあって、昔からカメラには触れています。
カメラはあまり自分には向かないと思っていたんですけど、最近ちょっと楽しいなって思うようになって、よく撮るようになってきました。

-劇中でも、オリンパスのPENを携えていますが、あれはご自身のカメラですか?

渡邊雛子
いえ、あれは録音部の方のです。

-最近だと、フィルムカメラが流行っていますがお好きですか?

渡邊雛子
はい、好きです。

■映画『たまらん坂』について

▼原作・脚本を読んでの感想と完成した映画を観ての感想

-映画『たまらん坂』は、原作となる小説があり、それが映画化される中で、原作に沿いつつ、渡邊雛子さんが演じる山下ひな子の人生・成長について描いていると思いました。「最初に原作である小説『たまらん坂』や脚本を読んだときの感想」と、「映画として完成した作品を観た時の感想」の二つについてお話を聴かせてください。

渡邊雛子
小説の「たまらん坂」を最初に読んだのは、高校3年生の時でした。大学進学が決まって、武蔵野大学の入学課題として出されていたんです。それで初めて読んで、出された課題として自分で「たまらん坂」について書かなければいけませんでした。
「たまらん、たまらん」と言って坂を登るという、それぞれにたまらないものを抱えながら家に帰って行くところに、その時から共感していました。私の家も坂の上にあって、帰り道に時間をかける心情みたいなものも理解していたと思います。
要介の家への帰りにくさのようなものを抱えているところに共感したのを覚えています。映画の方にもそういうひな子の共感が映っていると思いました。
入学課題として読んだ時にはそこの部分しか私自身はすくいあげられなかったのですが、映画になった『たまらん坂』を先日久しぶりに観て、もっとずっと深い理解として「たまらん坂」が映っていると、思いました。

たまらん坂

-映画がモノクロ映像という点が作品のイメージに合っていると思いました。モノクロであることは最初から知らされていたのでしょうか?

渡邊雛子
はい、知らされていました。

▼原作者とのエピソード

-作品の中で、原作の黒井千次さんとお話されていますよね。撮影にあたって、お話されたことがあると思うのですが、どういったお話をされましたか?エピソードがありましたら教えて下さい。

渡邊雛子
黒井先生とお話させていただいたことって、そんなにたくさんの時間は無く、いろいろな話をしたわけではないんですけれども、全部の言葉が突き刺さってくる感じでした。それは痛いわけではないのですが、その言葉が全て本当のことだなって感じるんです。
お会いすると、その別れ際に毎回握手をしてくださるのですが、それがとても印象的でした。しっかり握ってくださって、その度に頑張ろうって思えました。

■RCサクセション「多摩蘭坂」

-「たまらん坂」と言えば、RCサクセションの曲は聴きましたか?

渡邊雛子
「多摩蘭坂」は、よく聴きましたね。すごく聴いている時期がありました。
若さというか、現代的と言うとよくないのかもしれませんが恋愛についてストレートに語っているものよりも、ちょっとひねくれた感じがすごくいいなと思って好んで聴いていた時期がありました。

▼出演作『たまらん坂』(2019)と『びびのゆくえ』(2020)について

-『たまらん坂』の翌年に公開された小谷監督の短編映画『びびのゆくえ』を観させていただきました。主人公ひな子の兄役として出演されている木村知貴さんが「たまらん」という言葉を使っているなと思いました。あれは、『たまらん坂』とは繋がりがあるのですか?

渡邊雛子
それに関して、監督は全く演出していないのですが、木村さん自身が『たまらん坂』を観てくださったらしくて、それで「たまらん」って言ってくれたんです。

たまらん坂

▼『たまらん坂』とご自身について

-『たまらん坂』は作品の背景が、大学生で就職活動の時期が背景としてあると思います。実際に渡邊さん自身、小説を書きたいと思って大学に入り、そこから芝居をやりたいと思って芝居の世界に入っていったのではないかと思います。映画と現実と同じ時期に、自分の成長や将来を考えたのではないかと考えました。作品とご自身の成長と、葛藤や悩みなどの話を聴かせてください。

渡邊雛子
そうですね。
撮影は、大学生活の4年間に及んでいるのですが、特に私が大学4年生の頃には、山下ひな子というキャラクターが、私の大学1年生の頃の感じがすごくしていました。
自分では成長したつもりでいるのに、『たまらん坂』を撮り続ける限り、私は1年生の頃の自分を捨てきれなくて、抱え続けたり、反芻したりとか、そこに縛られているような反発心のようなものを感じていたりもしていました。
土屋先生(武蔵野大学文学部教授 土屋忍。本作のプロデューサー)だったと思うのですが、「ひな子は強いんですよ」って言ったんです。
「ひな子は強いんですよ」って言われて、「私も強くならなきゃいけないのか、私そんな強くないけど…」といったキャラクターに求められているものを自分自身の本質・今の自分とのギャップが掴み取れなくて、分からなくなったこともありました。

-劇中でエントリーシートのチェックを依頼するシーンで、「自己PRが空欄ですね」といったくだりがあったと思います。
 実際に、自己PRやアピールは苦手ですか?

渡邊雛子
苦手ですね。ただ言葉に関しては、自分の中で大事にしようと思っています。「アピールしてください」と言われたら、その点をアピールするんだろうなって思っています。
いろんなことを漠然としたままに私はしていて、もっと形にしていけばいいんですけど、ぼんやりしたままになっています。人に伝えようってなったときに、またそれを掘り返して探すことになるので結局伝わらなかったり、伝わったかどうかわからないことになってしまっています。その点は見直さなければいけないと思っているところです。

▼共演者との思い出

-共演されている小沢まゆさんがいらしているので、お二人の共演時の思い出やエピソードを聴かせてください。

渡邊雛子
一番記憶に残っているのは谷保の川辺で散歩した時です。
小沢さんにいろいろ話を聞いていただきました。「どういうふうにする?」とか「どんな気持ち?」とか。それまで演技について話す相手は小谷監督しかいなかったんです。初めて共演者として、いろいろお話をさせていただきました。
お母さんがいなくなってしまったということについて、ひな子にとってはどういう感情なんだろうね、どんな気持ちなんだろうねという話をしました。そこですごく悲しくなって、二人で泣きながら話しました。そこでの撮影が始まる前の準備で待っている時のことになります。

小沢まゆ
私自身が台詞に関して掴みきれていないことがあって、それで難しいなと思っていたんです。
そこで、「渡邊雛子ちゃんは、山下ひな子という人物としてどういう気持ちでこの言葉を私に投げかけてきているの?」っていうのを聞きました。「私はこのセリフは、こういうふうに感じて喋っています」といったことをやりとりしていたら、二人で泣けてきて、ボロボロ泣いてしまったんです。
そうしたらカメラマンさんから、「まだちょっと準備できてないんです。待って、待って!」と言われた思い出があります。

-お二人の会話の中で、4文字に略された言葉(例:夕方の散歩のことを「ゆうさん」と呼ぶ)の話がでてきましたが、あの言葉に関して、エピソードはありますか? 日本人ってよく、4文字にする傾向があるといった話がありますが。

小沢まゆ
脚本にあったものなんですけど、時代的に繋がるのではないかと思います。
私が演じたみずきさんが大学生ぐらいの時に、言葉を省略して使う文化が流行っていて、それを表している感じだと思います。
私が印象深いのは、あのシーンは小谷監督から「もっとテンション上げて」と何回も言われたことです。「本当に女子大生になったぐらいの感じで喋って」と言われて、「もうちょっとキャピキャピ感が欲しいです」みたいに言われて、恥ずかしいと思いながらやったのを覚えています。

たまらん坂
左)渡邊雛子 右)小沢まゆ

▼お客様へのメッセージ

-映画の魅力、見どころ、好きなシーンなど、皆さんに向けてのメッセージをお願いします。

渡邊雛子
『たまらん坂』は読書体験の映画です。映画を観ながら、本を読んでいる感覚になったり、読書から生まれてくるものが撮られている映画だと思います。本が好きな人に観てもらいたいと思います。本好きな人たちが、映画を観て共感するのか、それとも違う読み方をする人もいると思います。そういったことが気になります。
本を読まない人が、映画『たまらん坂』を観た時に、どういうふうに観るのかなとも思います。伝わるのかなという不安もありますが、何か伝わってほしいです。

-ここを観て欲しいといったシーンはありますか?
渡邊雛子
お祭りに行くシーンがあるのですが、そこに行くまでの道がすごく幸せでした。
純粋ではない幸せなんですけど、とても幸せなシーン・好きなところなので、是非観てもらえたら嬉しいです。

たまらん坂

■作品概要

映画『たまらん坂』作品概要
『ドキュメンタリー映画 100 万回⽣きたねこ』
『フリーダ・カーロの遺品 ⽯内都、織るように』
⼩⾕忠典監督最新作
*第30 回 マルセイユ国際映画祭インターナショナルコンペティション部⾨ 正式出品
*第20 回 ニッポン・コネクション NIPPON VISIONS 部⾨ 正式出品
*第43 回シンガポール国際アートフィスティバル 招待上映
*セント・アンドルーズ映画祭2021 最優秀撮影賞
監督 ⼩⾕忠典 × 原作 ⿊井千次
4 年の歳⽉を経て完成―「武蔵野」を舞台に織り成す新たな映画体験
国内外で注⽬を集めたデビュー作『LINE』をはじめ、『ドキュメンタリー映画 100 万回⽣きたねこ』、『フリーダ・カーロの遺品 ⽯内都、織るように』など意欲作を⽣み出してきた⼩⾕忠典監督が、武蔵野⼤学/武蔵野⽂学館の協⼒の元、⿊井千次⽒の短編集を基に四年に及ぶ撮影期間を費やして完成させた⻑編劇映画『たまらん坂』。マルセイユ国際映画祭をはじめ各国の映画祭で評価された本作が、待望の⽇本公開となる。
主⼈公・ひな⼦を演じるのは、武蔵野⼤学在学中に抜擢され映画初出演を果たした渡邊雛⼦。渡辺真起⼦、古舘寛治、⼩沢まゆ、七⾥圭ら⽇本映画界を⽀える⾯々が脇を固めているほか、RC サクセションの名曲「ロックン・ロール・ショー」「多摩蘭坂」も劇中に登場、劇中歌にシンガーソングライターの松本佳奈、アニメーションに⼤寳ひとみが参加するなど多彩な⾯々がモノクロームの世界観に彩りを添えている。

〈あらすじ〉
⼩⾬降る秋の⽇、⼥⼦⼤⽣ひな⼦(渡辺雛⼦)が寺の境内を歩いている。毎年、⺟の命⽇には⽗の圭⼀(古舘寛治)と墓参りに訪れていたのだが今年はひな⼦⼀⼈であった。ふと⺟の墓前に⼀輪のコスモスの花が供えられているのが⽬にとまる。⺟が亡くなってから17 年、祖⽗⺟も⻤籍に⼊っており他⼈の影を感じることはなかったひな⼦は不審に思う。携帯電話が鳴る。受話器の向こう側では⾶⾏機が⽋航になり墓参りには来られないことを告げた上で、「たまらん」と漏らす圭⼀の声が聞こえる…。

■CAST/STAFF

渡邊雛⼦ Hinako Watanabe / ⼭下ひな⼦
1997 年⽣まれ、静岡県出⾝。武蔵野⼤学在学中に映画『たまらん坂』の主演俳優として製作に携わり、卒業後本格的に俳優の道へ進む。短編映画『びびのゆくえ』や、ミュージックビデオ「⾬のまにまに」(AMENOMANI2)に出演。ヒロイン役を務めた名古屋芸術⼤学映像作品が現在製作中。

古舘寛治 Kanji Furutachi / 朗読・⼭下圭⼀
⼤阪府出⾝。⽶ニューヨークで演技を学び、帰国後、舞台を中⼼に活動する⼀⽅で、名バイプレーヤーとして映画、ドラマ、CM など、映像作品にも多数出演。2016 年には「⾼き彼物」にて演出を⼿掛け⾼い評価を得る。近年の主な出演作は、『淵に⽴つ』(16/深⽥晃司監督)、『海よりもまだ深く』(16/是枝裕和監督)、『勝⼿にふるえてろ』(17/⼤九明⼦監督)、『教誨師』(18/佐向⼤監督)、『罪の声』(20/⼟井裕泰監督)、『⼦供はわかってあげない』(21/沖⽥修⼀監督)、『プリテンダーズ』(21/熊坂出監督)など。公開待機作として『アネット』(レオス・カラックス監督)が控えている。

⼩沢まゆ Mayu Ozawa / 伊藤みずき
熊本県出⾝。映画『少⼥〜an adolescent〜』の主演として⼥優デビュー。同作で第42 回テサロニキ国際映画祭、第17 回パリ映画祭、第7 回ロシア映画祭Faces of love にていずれも最優秀主演⼥優賞を受賞。以降「るにん」「古奈⼦は男選びが悪い」「いっちょんすかん」「左様なら」「幸福な囚⼈」、FOD オリジナルドラマ「乃⽊坂シネマズ〜STORY of 46〜 嗚呼!素晴らしきチビ⾊の⼈⽣」等に出演。その他、SONY「PSX」やフィリップス「ヌードルメーカー」等のCM や、ラジオパーソナリティー、MC としても活動。現在短編映画「DEATH DAYS」「純猥談〜私もただの⼥の⼦なんだ」がYouTube にて公開中。

渡辺真起⼦ Makiko Watanabe/ ⼤学教授
東京都出⾝。モデルとして活動を始め、『バカヤロー! 私、怒ってます』(88/森⽥芳光総指揮、中島哲也監督)でスクリーンデビュー。第33 回⽇刊スポーツ映画⼤賞・⽯原裕次郎賞 助演⼥優賞(『浅⽥家!」『37 セカンズ』)、第55 回アジア太平洋映画祭 最優秀助演⼥優賞、第7 回アジアン・フィルム・アワード最優秀助演⼥優を受賞。近年の主な出演作に『きみの⿃はうたえる』(18/三宅唱監督)、『もみの家』(20/坂本欣弘監督)、『⾵の電話』(20/諏訪敦彦監督)『カム・アンド・ゴー』(20/リム・カーワイ監督)、『るろうに剣⼼ 最終章The Beginning』(21/⼤友啓史監督)、『護られなかった者たちへ』(21/瀬々敬久監督)、『真夜中⼄⼥戦争』(22/⼆宮健監督)など。

七⾥圭 Kei Shichiri / 飯沼要助
映画監督。最近の仕事は、村上春樹ライブラリーのイメージ映像と「清掃する⼥」のCG 版。吉増剛造×空間現代のライブ・ドキュメンタリーも仕上げ中。代表作『眠り姫』は、2022 年春に15 周年記念上映が予定されている。

監督|⼩⾕忠典 Tadasuke Kotani
1977 年⽣まれ、⼤阪市出⾝。ビジュアルアーツ専⾨学校・⼤阪に⼊学し、映画製作を学ぶ。『いいこ。』が第28 回ぴあフィルムフェスティバルにて上映。初の全国劇場公開作品『LINE』から、フィクションやドキュメンタリーの境界にとらわれない意欲的な作品を製作している。マルセイユ、トリノ、ドバイ、プサン、ブエノスアイレスなど、これまで20 カ国以上の国際映画祭に作品が選出。主な作品に『ドキュメンタリー映画 100 万回⽣きたねこ』、『フリーダ・カーロの遺品 ⽯内都、織るように』などがある。

劇中歌|松本佳奈 Kana Matsumoto
千葉県⽊更津市出⾝のシンガー・ソングライター。ドラマーであり映像作家の夫と3 歳&1 歳の息⼦たちと、庭にサルやイノシシが訪れるような⾥⼭の古⺠家で、太陽と共に起き太陽と共に寝る⽇々。テレビのない⽣活の中、旬の野菜を⾷べること、⽣き物を観察すること、読書が好き。⾃然体でのびのび⽣きる。地元⽊更津市を拠点に、⽥んぼや森、廃業した銭湯やお寺などで観光を絡めたイベントを多数企画している。

出演:
渡邊雛⼦ 古舘寛治 ⼩沢まゆ 渡辺真起⼦ 七⾥圭 ⿊井千次 ほか
脚本:⼟屋忍 ⼩⾕忠典 脚本協⼒:⼤鋸⼀正
撮影:倉本光佑 ⼩⾕忠典 録⾳:柴⽥隆之 永濱まどか
助監督:溝⼝道勇 ⽼⼭綾乃
制作:梅地亮 ⼤野秀美 ⼩川侑真 刑部真央 加賀⾒悠太
⿊澤雄⼤ ⼩⻲舞 ⼩松俊哉 ⾼瀬志織 ⽥中美和 野本理沙
橋野杏菜 畠⼭遥奈 平林武留 松井優⾹ ⼭路敦史 ⼭本裕⼦
整⾳:⼩川武 編集:⼩⾕忠典
⼦守唄:松本佳奈 ⾳楽:磯端伸⼀(ギター・磯端伸⼀ ピアノ・薬⼦尚代)
使⽤楽曲:「ロックン・ロール・ショー」「多摩蘭坂」RC サクセション
アニメーション:⼤寳ひとみ タイトルデザイン:hase
企画・プロデューサー:⼟屋忍 製作:武蔵野⽂学館
原作:武蔵野短篇集「たまらん坂」⿊井千次
宣伝デザイン:tobufune 配給・宣伝:イハフィルムズ
(2019/⽇本/モノクロ/16:9/DCP/5.1ch/86 分)


公式サイト  https://tamaranzaka.com/
公式Twitter  https://twitter.com/tamaranhill

2022 年3 ⽉19 ⽇(⼟)より新宿K`s cinema ほか全国順次公開

たまらん坂

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