第18回TAMA映画賞発表 最優秀作品賞に濱口竜介・沖田修一両監督作、最優秀男優賞に本木雅弘と柄本佑、女優賞は吉岡里帆と今田美桜

市民ボランティアが選考する映画賞「第18回TAMA映画賞」の受賞作品および受賞者が決定し、最優秀作品賞に濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』と沖田修一監督の『さとこはいつも』の2作品が選ばれた。本賞は映画ファンの立場から「明日への元気を与えてくれる活力溢れる作品・監督・俳優」を感謝を込めて表彰するもの。最優秀男優賞には本木雅弘と柄本佑、最優秀女優賞には吉岡里帆と今田美桜が選出された。11月28日にパルテノン多摩大ホールで授賞式が行われ、各賞の受賞者らが登壇する予定となっている。

最優秀作品賞と特別賞——観客に問いを投げかける話題作が受賞

本年度最も活力溢れる作品に贈られる最優秀作品賞には、運命的な出会いを通して「人が人と向き合うとはどういうことか」を深く問いかけた濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』と、境遇の異なる3人の女性が自分を解き放つ姿を可笑しく愛おしく描いた沖田修一監督の『さとこはいつも』の2作が選出された。

また、映画ファンを魅了した事象を表彰する特別賞には、戦争の恐怖と加害の記憶に向き合う重厚なドキュメンタリー『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』を手掛けた塚本晋也監督陣営と、ろう者とクルド人を通じ他者と分かり合う難しさと可能性をユーモアで描いた『みんな、おしゃべり!』の河合健監督陣営が輝いた。

最優秀男優賞・女優賞——演技派と躍進著しい実力派が揃い踏み

最優秀男優賞を受賞したのは、本木雅弘と柄本佑の2氏。本木は『黒牢城』等で荒木村重の威厳と脆さを声や間合いの変化で緻密に創出し、柄本は『メモリィズ』等で飄々とした佇まいの中に優しさを滲ませ作品に奥行きをもたらした点が評価された。

最優秀女優賞には、吉岡里帆と今田美桜が選ばれた。吉岡は『ストリート・キングダム』や『シャドウワーク』で表現の喜びや心の痛みを巧みに表現して「陽」と「陰」の両極を演じ分け、今田は『白鳥とコウモリ』等で台詞に頼らず眼差しと全身で真実を求める芯の強さを体現した。

新進監督賞・新進男女優賞——次世代を担う注目の新星たち

本年度最も飛躍した監督に贈られる最優秀新進監督賞には、『90メートル』で親子や周囲の人々の心の距離を丁寧に描き出した中川駿監督と、『トロフィー』で朝鮮舞踊を通じて自身のルーツに向き合う少女を描いた孫明雅監督が選出された。

最優秀新進男優賞は、黒崎煌代(『急に具合が悪くなる』等)と山時聡真(『90メートル』等)が受賞。最優秀新進女優賞には、出口夏希(『ルックバック』等)と南琴奈(『90メートル』等)の2名が選ばれた。

11月28日に授賞式開催 市民ボランティアが贈る映画の祭典

TAMA映画賞は、2009年にスタートした映画賞で、前年10月から当年9月までに一般劇場で公開された作品を対象に、市民ボランティアの実行委員が選考を行っている。国内の主要映画賞の先陣を切る存在としても注目を集めている。

第18回目となる授賞式は、11月28日(土)に東京都多摩市のパルテノン多摩 大ホールで開催される。また、映画祭「第36回 TAMA CINEMA FORUM」の各種上映プログラムは11月14日(土)から29日(日)まで多摩市内3会場で実施される予定となっている。授賞式チケットの抽選申し込みは10月31日より受け付けを開始する。


【最優秀作品賞】

『急に具合が悪くなる』:
運命的な出会いによって惹かれ合い、互いを特別な存在と認め合った二人。忍び寄る死に抗いながらも、言葉を尽くした丁寧な対話で濃密な時間を積み重ねていくその姿は、「人が人と向き合うとはどういうことか」を観客に深く問いかけた。


『さとこはいつも』:
年齢も境遇も違う3人の“さとこ”が、自分の物語を書くことで凝り固まった日々から自分を解き放っていく姿を、可笑しく愛おしい人間模様として描いた。誰の人生も語るに足る一冊なのだと高らかに肯定し、観客一人ひとりの毎日をそっと祝福した。


【特別賞】
戦地にいるかのような眼前に迫る映像によって、その傷跡の大きさを観客に知らしめた『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』に対して:
戦争が一人の人間を加害者へと変えてしまう恐怖と、罪を背負って生き続けることの重さを真正面から描いた。少女の純粋な問いやカウンセリングを通して自らの加害と向き合い、その記憶を語り続けるネルソン氏の姿に、再生へと向かう人間の力を描き出した。

ろう者とクルド人、言語の壁の向こうにいる他者とどう分かり合うかを、唯一無二のユーモアで描いた『みんな、おしゃべり!』に対して:
言語も立場も違う隣人同士が、譲れないものを抱えたままぶつかり合う姿を緩やかなユーモアで描いた。分かりやすい和解へ着地させることなく、他者と分かり合うことの難しさと可能性を、痛快な笑いのなかに示してみせた。


【最優秀男優賞】
本木雅弘: 『黒牢城』において、荒木村重の威厳、知性、滑稽さ、もの哀しさを併せ持つ人間像を創出した。官兵衛との対話を重ねるなかで、内面が次第に揺らいでいく過程を背中、間合い、声の変化で表現し、威厳の奥にある脆さを浮かび上がらせた。

柄本佑: 現代劇から時代劇まで多彩な作品において、相手との間や呼吸を丁寧に積み重ねて場面に奥行きと余韻をもたらした。『メモリィズ』においては、飄々(ひょうひょう)とした佇まいのなかに人間味のある温かさを滲ませて、家族の記憶と記録の物語を優しく紡ぎ出した。


【最優秀女優賞】
吉岡里帆: 『ストリート・キングダム』では、完成したレコードを手に朝の街を駆ける姿に、自ら表現を形にする喜びと躍動感を溢れさせた。『シャドウワーク』では、暴力で傷ついた人物の痛みと危うさを抑制の利いた演技で滲ませ、鮮やかな「陽」と深い「陰」の両極に確かな実在感を与えた。

今田美桜: 『白鳥とコウモリ』において、澄んだ瞳に怒りや戸惑い、真実を知りたいという強い思いを宿らせた。台詞に頼らず、眼差しと全身で揺れ動く感情を伝え、抑制の利いた表現のなかに芯の強さを備えたヒロインを創り出し、確かな演技力を示した。


【最優秀新進監督賞】
中川駿監督: 人生の岐路に立つ息子と難病を抱える母親、二人とつながる人々の、一人ひとりの心の距離を静かに丁寧に描き出した。やがて迎えたその日、想いが重なる瞬間に溢れ出す涙が、観る者を深く温かな感動で包み込んだ。

孫明雅監督: 思春期の少女が、自分の世界を広げながら自身のルーツに深く関わる「朝鮮舞踊」を通じてアイデンティティに向き合う様子をみずみずしく描いた。家族や友達と過ごす日常を丁寧に描写し、観客に他者へ想いをめぐらす想像力を喚起させた。


【最優秀新進男優賞】
黒崎煌代: 『急に具合が悪くなる』において、舞台と客席をはじめ、人を隔てるあらゆるものを軽やかに越えていく青年・智樹を演じ、二人の主人公を結びつける要となった。3時間を超える物語の重心を静かに支えたその存在感は、今後のさらなる飛躍を確信させた。

山時聡真: 『90メートル』において、難病の母への想いに揺れ動く心優しい少年を、情感を細やかに込めて、真っすぐに演じ切った。母への尊敬と自分の胸の内を真摯に語る、一点の曇りもない眼差しに、背筋が伸びる思いがした。


【最優秀新進女優賞】
出口夏希: 『ルックバック』において、創作の力を信じひたむきに描き続ける藤野を天真爛漫に体現した。のびやかに自由に生み出される表現は作品の魅力を加速させる。

南琴奈: 凛とした佇まいのなかに、心の深い奥行きを感じさせる演技で、多彩な役柄を自然な空気感で表現した。『90メートル』においては、何気ない日常のやり取りの隅々に優しさを滲ませ、飾らない言葉でそっと主人公の背中を押す姿に、観る者も心をほどかれた。
以上

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Hajime Minamoto

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