第34回日本映画批評家大賞授賞式、盛大に開催

第34回日本映画批評家大賞授賞式、盛大に開催

第34回日本映画批評家大賞授賞式が、2025年6月9日(月)に東京国際フォーラムにて開催された。長きにわたり日本の映画を支え、新たな才能を評価する同賞の授賞式では、多くの受賞者や映画関係者が登壇し、喜びと感謝の言葉を述べた。

■ 第34回日本映画批評家大賞授賞式、盛大に開催

助演女優賞:忍足亜希子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

最初の受賞者として助演女優賞の忍足亜希子さんが登壇した。受賞した心境について「本当に光栄です。とても嬉しく思います」と述べ、「今ドキドキしていて、感無量です」と続けた。出演作『ぼくが生きてる、ふたつの世界』では、20代から50代にかけての長い年月を演じ、聞こえる息子と聞こえない母親の親子関係や、息子を思う愛、共に成長していく物語を表現したという。呉美保監督や主演の吉沢亮さんと共に丁寧に作品を作り上げたことが良い経験になったと語り、スタッフ・関係者への感謝を伝えた。

選考委員の伊藤さとりさんからは、俳優の仕事は人柄が役に移し出されるものだとし、自身の目線で忍足さん演じる母親を見て涙が止まらなかったと述べた。これは、忍足さんの子育ての経験や幼少期に感じていたことがスクリーンに映っていたからだと感じたという。また、コロナ禍でのマスク生活で表情の大切さに気づいた経験から、忍足さんの表情だけで胸がいっぱいになったと語り、「この役を私は愛してやまないですし、忍足さんという俳優さんに出会えたことに感謝しています」と祝福した。

これに対し忍足さんは、「今おっしゃっていただいた内容本当に嬉しいです」と応じ、コロナ禍ではマスクで口の形が見えず読み取れない困難さがあったことに触れた。手話だけでなく表情でも様々な感情を伝えていることの大切さを改めて感じたという。細かい表情、優しい顔、怒っている顔、悲しい顔など、多様な表情で気持ちを伝えることの難しさに言及し、自分から伝えていかないと相手からは返ってこないことを意識して演じたと明かした。また、主演の吉沢亮さんとの手話でのコミュニケーションについて、撮影の2ヶ月前から手話でのやり取りやリハーサルをしていたことを話し、吉沢さんの短期間での手話習得は素晴らしいと称賛した。授賞式の翌日が誕生日であることに触れ、この素晴らしい場所での受賞は最高の思い出になったと感謝を重ねた。

編集賞(浦岡敬一賞):田端華子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

続いて編集賞の発表が行われ、浦岡敬一賞は『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の田端華子さんが受賞した。田端さんは、「このような素晴らしい賞をいただき、心より感謝申し上げます」と述べた。受賞作の編集では、ろう者だけでなく全ての方が楽しめるよう、手話の手元や口の動き、表情などを常に画面に映す工夫をし、字幕との重なりにも配慮しながら丁寧に進めたという。呉美保監督と二人三脚で編集した日々はかけがえのない経験であり、これからもより良い作品に携われるよう精進したいと語った。

選考委員からは、本作があらゆる面で素晴らしい作品であると評価しつつ、編集賞の選考の難しさについて言及があった。編集を意識させない「うまい編集」であるため、最初は物語に没入したが、再鑑賞して編集の巧みさに気づいたという。特に、時系列で並べた後にフラッシュバックを用いる構成のうまさや、全体から感じられる品の良いニュアンスを称賛し、複数回の見直しを経て授賞を決めたと述べた。

田端さんは「本当にありがたいお言葉ありがとうございます」と応じ、呉監督と毎日何ヶ月も自宅に伺って二人三脚でやってきたと振り返り、それがこのような形になったことを喜んだ。時系列のこだわりを感じ取ってもらえたことに感謝を示し、素晴らしい作品になったと思うと語った。

脚本賞:甲斐さやか『徒花-ADABANA-』

脚本賞には、『徒花-ADABANA-』の甲斐さやかさんが選ばれた。登壇した甲斐監督は、「本当にこんなに光栄な賞をいただきましてありがとうございます」と感謝を述べた。自身の脚本に集まってくれた才能あるキャストとスタッフのおかげで脚本が生かされたと感じていると語った。脚本執筆時には、映画が完成した時に今の世界や社会を映したものになれば良いと考えていたという。この脚本の構想は20年以上前からあり、プロットをしまい込んでは出しを繰り返していたが、コロナ禍に背中を押され、今の社会を見ながら一気に書き上げたことを明かした。キャストやスタッフが力を貸してくれたおかげで脚本が生きたと感じており、脚本を評価してもらえたのは「みんなの力」だと感謝した。

選考委員からは、脚本選考で大切にしているのはオリジナリティであるとし、『徒花-ADABANA-』はタイトルからインパクトがあり、今の現実を含むオリジナリティとリアリティがあると評価された。見終えた後も「命とは何だろう」「生きてる意味はなんだろう」と様々なことを問いかけ、考えさせてくれる素晴らしい脚本だと述べた。クローンという題材については、20年の間に多くの作品が作られたことで悔しい思いもしただろうとしつつ、最初に思いついたというガラス越しに向き合うワンシーンが特に素晴らしく、美しく考えさせられたと称賛した。

甲斐監督は、賞賛の言葉に感謝し、最初に構想を思いついた時に主演の井浦新さんが同じ顔の二人として向き合うシーンのスケッチを描いたものの、なかなか実現できなかったことを振り返った。クローンをテーマにした作品ができるたびに「もう撮れなくなるかな」と思ったが、中身を見るとそれぞれ違うため「やっていける」と感じたという。映画が実現したのは奇跡のようだと語り、中身をきちんと見てもらえたことに喜びを示した。

主演男優賞:吉沢亮『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

主演男優賞は、『ぼくが生きてる、ふたつの世界』の吉沢亮さんが受賞した。吉沢さんは、「このような栄誉ある賞をいただきまして非常に光栄でございます」と述べた。

呉美保監督の作品は以前から見ており、一緒に仕事をする機会があれば嬉しいと憧れていた監督だったため、本作でご一緒でき、さらにこのような賞をいただけたことが非常に嬉しいと語った。

また、本作が助演女優賞、編集賞、作品賞も受賞したことに触れ、「自分の関わらせていただいた作品がこのような形で評価していただけること、この上ない喜びを感じております」と述べた。これからもこのような賞に恥じないよう精一杯お芝居と向き合いたいと抱負を語った。

選考委員からは、吉沢さんの演技について言及があり、特に手話での演技に触れた。友人から聞いた、本作を観たコーダ(耳が聴こえない、聴こえにくい親がいる聴者の子ども=コーダ)の母親の感想として、「手話をやってるんじゃなくて、コーダの人の手話だった」という言葉を紹介し、これは「そんなすごいことだなと思って」と称賛した。また、吉沢さんの演技はまだ「原石」であるという監督の言葉を引き、今後も磨き続けてもっと輝いてほしいと期待を寄せた。

吉沢さんは、他の映画の話にも触れてもらえたことに感謝しつつ、手話については本作に関わるにあたって本当にゼロからのスタートだったと語った。手話を「覚える」のではなく、コミュニケーションとして芝居を構築していくことの難しさを感じていたが、手話指導の方々やお母さん役の忍足さんが温かく支えてくれたおかげで、どうにか形にすることができたと感謝を述べた。

会場からは、吉沢さんを見て自分の息子のことのように泣いてしまうという声も上がり、高校生時代から演じたことへの驚きや役作りについて質問があった。吉沢さんは、特に監督からは「声を高くしてくれ」とずっと言われていたことを明かし、当時30歳で15歳を演じることへの恥ずかしさや申し訳なさがあったが、できる限り自分の出る限界のキーを狙って演じたと振り返った。

主演女優賞:河合優実『あんのこと』

主演女優賞は、『あんのこと』の河合優実さんが受賞した。河合さんは、「本当に素敵な賞をありがとうございます」と感謝を述べた。作品を撮っている時は、面白い映画や素敵な映画にしようというよりも、一つ一つのシーン、一つ一つのカットに臨む時に、どれだけ心と体を捧げられるかを大切にしていたという。それが演じた役を守りながらスクリーンに残すことだと考えており、毎日現場に行って真摯に恋愛(役と向き合うこと)をしているという気持ちで務めていたと明かした。

賞という形で評価されたり、多くの人に見てもらえたことが良かったとし、素晴らしいスタッフ・キャストと共に、確かにあった2020年の時間を残すことができたのではないかと語った。これからも自分が誰かを演じることや映画を作ることが、世界にとって良い働きかけになっていたら嬉しいとし、頑張って続けたいと述べた。

選考委員からは、河合さんの演技に「吸引力がありました」と称賛があった。入江監督が役のアプローチを河合さんに任せていたという話にも触れ、まさに心と体を捧げていたことが表現されていたと述べた。希望や絶望を言葉少なく表現する役柄でありながら、見終えてしばらく経っても残っているのが「あんちゃんの照れた笑顔」だとし、その笑顔こそが映画のメッセージを強く示していると感じたという。河合さんがこの賞がゴールでもピークでもないことを一番分かっているからこそ、主演女優賞を贈りたいと思ったと語った。

河合さんは、ありがたい言葉に感謝し、試写で作品を観たマネージャーから「一番印象に残っているのがあんが頑張っている姿だった」と言われた時の嬉しさを思い出したと語った。作品を撮ったのが2022年末であり、様々なことがあったとしつつも、常にフレッシュな気持ちでいたいし、とにかく良いものを届けたいと思っていると述べた。

松永文庫賞(特別賞):東映剣会 清家三彦

松永文庫賞特別賞は東映剣会が受賞し、会長の清家三彦さんが登壇した。清家会長は、「東映剣会にこのような立派な賞をいただきまして誠に感謝いたしております」と述べた。東映京都撮影所に創立して70数年間、数多くの作品に関わってきた歴史を振り返り、多くのスターに斬られ、殴られ、蹴り倒されてきたと語った。これは、監督や殺陣師、スターの思いを胸に、少しでも作品の役に立とうと必死に演じてきた結果だと述べた。現在の会員は殺陣師2名、演技者15名の計17名で活動しており、これからも「殺陣は芝居や、動きに心がないとあかん。ドラマチックに演じるんや」という先輩たちの教えを胸に、常に新しいことにもチャレンジし、「温故知新」をモットーに日々精進していくと語った。

選考委員からは、70年以上にわたり日本映画の時代劇を支えてきたことへの感謝が述べられた。主演俳優に殺陣の感想を聞くと、「切られ役の方がとてもうまく切られて倒れてくれるから自分自身がかっこよく見えるんだ、強く見えるんだ」と語る方が多いとし、これは剣会の長年の技術継承のおかげだと称賛した。これからも日本映画、時代劇を一層盛り上げてほしいと期待を寄せた。

清家会長は、殺陣の現場で一番大切なのは信頼関係であるとし、お互いを信頼し合って全力でぶつかり合うところに殺陣の神髄があると述べた。先輩から教わったその精神を後輩にも伝え、今後も忘れずにやっていきたいと語った。

ゴールデン・グローリー賞(水野晴郎賞):根岸季衣『サユリ』

映画解説者・評論家の水野晴郎さんの名前を冠したゴールデン・グローリー賞は、根岸季衣さんが受賞した。受賞の知らせを受け、根岸さんは「どうもありがとうございます。嬉しいですね」と喜びを表した。

俳優の仕事はスポーツ選手のように点数で現れるものではないため、これで良かったのかと不安な気持ちでいることが多いが、こうしてプロの選考委員に選ばれ、見てもらえていることが大きな力になると語った。大先輩たちも頑張っているため、自分も頑張れるところまで頑張りたいとし、引き続き支援や応援をお願いした。

選考委員からは、根岸さんの長年の活躍を称賛し、小さな役から大きな役までどの役も「はまっている」「はめ込んでしまう」見事な演技であると述べた。点数はつけられないが、これまでの蓄積の点数は大変なものだろうと評価した。受賞作『サユリ』については、漫画原作であるため、やりすぎるとわざとらしくなり、やらなすぎると漫画ファンに怒られるという難しい役どころだったが、長年培ってきたノウハウで見事にクリアしたとし、この賞にこれほどふさわしい人はいないと全員一致で選出したことを明かした。

根岸さんは、コツコツと積み重ねてきたことが受賞につながったと述べ、「そしたら結構な数になってたな」と語った。これから欲張って、年と共に役も深くなり、やれることが増えていく気がすると意欲を見せた。黒沢清監督の映画に2本立て続けに出演した時の印象について聞かれると、毎日一緒にご飯を食べ、褒められて嬉しくて毎晩ご一緒していたらどんどん太ってしまったというエピソードを披露した。当時の楽しい思い出を振り返り、監督との良い経験だったと語った。また、『サユリ』の役作りについては、漫画や脚本を読んだ時に、途中で古いロックが流れると書いてあったことから、「ロックだったらじゃあジャニス(ジャニス・ジョプリン)にしましょうよ」と提案し、そこで役を楽しめた裏話を披露した。

ダイヤモンド大賞(淀川長治賞):草笛光子『九十歳。何がめでたい』

映画解説者・評論家の淀川長治さんの名前を冠したダイヤモンド大賞は、草笛光子さんが受賞したが、体調を考慮し授賞式は欠席となった。草笛さんの代理として、所属事務所「草琇舎」の阿部取締役が登壇した。トロフィーは選考委員の島敏光さんが贈呈した。

草笛さんからの手紙が代読された。手紙の中で草笛さんは、日本映画批評家大賞という厳しい目で選ばれたことを何よりも嬉しく、大変光栄に思っていると述べた。1953年の映画デビューからの道のりを振り返り、多くの名監督や先輩俳優との共演から様々なことを学んだことに触れた。今では撮影現場で最高齢となったが、今回の受賞はこれまでお世話になった監督、共演者、そして作品を楽しんでくれた観客のおかげだと感謝を伝えた。本来であれば直接お礼を述べるべきところ、手紙での挨拶になったことを詫び、これからも日本の映画界がますます賑わうことを願っていると結んだ。

代理で登壇した阿部さんは、草笛さんが受賞をとても喜んでいたことを伝え、「この年になったら何でももらっちゃいましょう」と言っていたと明かした。草笛さんは非常に元気で、よく食べ寝て規則正しい生活を送っており、自宅の3階まで自分の足で上り下りしていることに感心していると語った。まだ元気で長生きしてほしいとし、今回の受賞が「張り合いになる」と述べ、素晴らしい賞に感謝した。

選考委員からは、草笛さんのキュートさに触れつつ、受賞作で演じた「嫌な、わがままでどうしようもないおばあちゃん」を、草笛さんが演じるとなぜかチャーミングで憎めない人物になるのは、長年培ってきた「品の良さ、育ちの良さ」が滲み出ているからだと評価した。主演作としては初めてということで、もっと早く渡したかったという気持ちもあるが、いいタイミングだったとし、この大賞を受け取ってもらうことになったと述べた。

監督賞:入江悠監督『あんのこと』

監督賞は、『あんのこと』の入江悠監督が受賞した。入江監督は、受賞とは直接関係ない話として、子供の頃から時代劇が好きで、今年公開した自身が監督した時代劇『室町無頼』で世話になった東映剣会の方々が今回表彰されたことがすごく嬉しかったと述べた。同じ年に大賞(特別賞を含む)に選ばれたことが一番嬉しいかもしれないとし、「コツコツやってきた人が報われる瞬間」だと語った。

選考委員からは、本作が長く愛されている理由として、監督の演出と脚本のブレなかった思いが大きな柱であると述べられた。登場人物は皆弱さを持っているが、どこか一等両断にできない人間らしさが描かれていたとし、それが多くの観客に受け入れられている理由ではないかと分析した。

これを受けて入江監督は、演出らしいことはほとんどしていないと正直な思いを語った。脚本を書き、河合優実さんと一緒に様々な人の話を聞いて準備はしたが、撮影現場ではほとんど何も言っていないと明かし、それで監督賞をいただいていいのかが本音だと述べた。作品のテーマは重いが、次はどうなるんだろうというシリアスエンターテイメントとして映画に落とし込む上で意識したことを聞かれると、エンターテイメントという部分は置いておいて、2021年に同賞に初めて参加した時に亡くなった友人俳優の話をした経験に触れた。なぜ亡くならなければいけなかったのか、なぜ連絡をしなかったのかという後悔を抱えて脚本を書き、演出していたという。『あんのこと』と共に、2020年に旅立ってしまった人のことをずっと考えており、唯一あるとしたらそこだけは手放さないようにしたことかもしれないと語った。

作品にはモデルとなる人がおり、その方から構想を得て脚本を作ったことを認め、自身の経験と重ねて作られたのが『あんのこと』であると述べた。2020年から個人が孤立することがあっという間に起こり得ることを知り、それが家庭環境に関わらず誰にでも起こり得るのではないかと考え、どうしたらそうならないのだろうと考え続けるプロセスが作品に繋がったと語った。答えは未だに出ていないが、観客と共に話し合い、感想を聞きながら答えを探すために続けている感じがすると述べた。多くの人に見ていただける作品になったことが素晴らしいと感謝された。

作品賞:『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保監督)

第34回日本映画批評家大賞の最後の賞となる作品賞は、『ぼくが生きてる、ふたつの世界』が受賞した。作品を代表して呉美保監督と、サプライズで父役の今井彰人さん、そして助演女優賞を受賞した母役の忍足亜希子さんが登壇した。

呉監督は、10年前に同賞で『そこのみにて光輝く』が主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、監督賞を受賞したが、授賞式当日に陣痛で入院しており、翌日に長男を出産したという個人的な思い入れがある場所だと語った。そこから育児で映画から遠ざかっていたが、復帰できた喜びと共に、まさか同じ4つの賞でこの場に立てていることが本当に嬉しいと感謝を述べた。

伊藤さとり選考委員からは、呉監督とは10年前に会っており、一緒に妊娠していたという個人的な縁が語られた。しばらく会えなくなっていたが、ここで再会できたことが嬉しいと述べた。本作は、呉監督の経験と感情が紡がれたものを肉付けするにあたり、その感情を知っている人たち、そして必死に汲み取ろうとする人たちが揃ったことで、素晴らしい総合芸術ができたと評価した。

サプライズで登壇した父役の今井彰人さんは、緊張しつつも、撮影中に呉監督から聞いた「映画は料理と同じ」という話が忘れられないと述べた。

まずテーマ(料理のカレー)を決め、次に買い物(出演者・スタッフのキャスティング)、そして調理(現場での撮影)、味付け(編集)、最後にお客様へ提供する(観客に見てもらう)という例えを聞いて感動したと語った。みんなで作り上げてきた映画で賞をいただけたことが嬉しいとし、この映画を通して聞こえないことや、ろうあ者といった見えない部分を知ってもらう機会が増え、役者を目指す方にも影響を与えられたことを喜んだ。

主演男優賞の吉沢亮さんも登壇し、3人で五十嵐親子(忍足さんと今井さん)が揃ったことに驚きと喜びを表した。

現場でのお二人の手話には愛を感じ、助けられたと語った。特に今井さんについては、現場では貫禄のあるお父さんだったが、実際には3(4)歳しか違わない(吉沢さんよりも今井さんが年上)ことに触れ、今日の爽やかな今井さんとのギャップにパニックになっていると語り、笑いを誘った。

式典終了とフォトセッション

第34回日本映画批評家大賞授賞式の全てのプログラムが終了し、受賞者たちは盛大な拍手で見送られた。その後、フォトセッションが行われ、受賞者、そして選考委員と共に記念撮影が行われた。会場に集まった観客にも撮影時間が設けられ、授賞式は盛況のうちに幕を閉じた。選考委員からは、日本の映画界のさらなる発展を願う言葉が述べられた。


第34回日本映画批評家大賞授賞式

受賞者(登壇順)

◆新⼈男優賞(南俊子賞): 齋藤潤『カラオケ行こ!』

◆新⼈男優賞(南俊子賞): 本山力『十一人の賊軍』

◆新⼈⼥優賞(小森和子賞): 長澤樹『愛のゆくえ』

◆新⼈監督賞 : 山中瑶子監督『ナミビアの砂漠』

◆アニメーション作品賞: 『ルックバック』(押山清高監督)

◆ドキュメンタリー賞 : 『大きな家』(竹林亮監督)

◆助演男優賞: 森優作『ミッシング』

◆助演男優賞: 綾野剛『まる』 (ビデオメッセージとなります)

◆助演⼥優賞: 忍足亜希子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

◆編集賞(浦岡敬⼀賞) : 田端華子『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

◆脚本賞 : 甲斐さやか『徒花-ADABANA-

◆主演男優賞: 吉沢亮『ぼくが生きてる、ふたつの世界』

◆主演⼥優賞: 河合優実『あんのこと』

◆松永文庫賞(特別賞) : 東映剣会 清家三彦

◆ゴールデン・グローリー賞(⽔野晴郎賞): 根岸季衣『サユリ』

◆ダイヤモンド⼤賞(淀川長治賞): 草笛光子『九十歳。何がめでたい』 (代理者・阿部)

◆監督賞 : 入江悠監督『あんのこと』

◆作品賞 : 『ぼくが生きてる、ふたつの世界』(呉美保監督)

表彰・授賞式カテゴリの最新記事