妻への疑念から、隠しカメラを設置し…映画『ホゾを咬む』オフィシャルインタビュー

妻への疑念から、隠しカメラを設置し…映画『ホゾを咬む』オフィシャルインタビュー

12月2日(土)〜12月8日(金)に新宿K’s cinemaにて、映画『ホゾを咬む』が公開。「後悔する」という意味のことわざ「臍(ホゾ)を噛む」からタイトルをとった映画『ホゾを咬む』は、本作ヒロインの小沢まゆが主演する短編映画『サッドカラー』がPFFアワード2023に入選するなど、国内映画祭で多数入選・受賞している新進気鋭の映像作家・髙橋栄一脚本・監督の最新⻑編映画。オフィシャルインタビュー、監督、キャスト一挙公開。

髙橋監督自身がASD(自閉症スペクトラム症)のグレーゾーンと診断されたことに着想を得て、独自の切り口で「愛すること」を描いた本作。モノクロームの世界観が怪しさと品格を放ち、独特な間合いや台詞が観る者を異世界へと誘う、新感覚の日本映画が誕生した!

主人公・茂木ハジメを演じるのは、主演するコメディアクション『MAD CATS』(2022/津野励木監督) から、『クレマチスの窓辺』(2022/永岡俊幸監督)、『とおいらいめい』(2022/大橋隆行監督)など、幅広い役柄をこなすカメレオン俳優・ミネオショウ。 

映画『少女〜an adolescent』(2001/奥田瑛二監督) で国際映画祭で最優秀主演女優賞受賞の経歴を持つ俳優・小沢まゆがプロデューサーとヒロイン役を務め、木村知貴、河屋秀俊ら実力派の面々が脇を固めているほか、『百円の恋』(2014)など武正晴監督作品に数多く参加し、『劇場版 アンダードッグ』(2020)で第75回毎日映画コンクール撮影賞を受賞した西村博光が撮影監督を担当した

■ 映画『ホゾを咬む』 オフィシャルインタビュー

▼ミネオショウ

ミネオショウ プロフィール
東京都出身。美容師から俳優に転身し、映画、ドラマ、CM、MV等数々の映像作品に出演。
近年の出演作品に、映画『クレマチスの窓辺』(永岡俊幸監督/2022)、『とおいらいめい』(大橋隆行監督/2022)、『PARALLEL』(田中大貴監督/2022)、『ラーゲリより愛を込めて』(瀬々敬久監督/2023)などがある。
2023 年は『ホゾを咬む』と『MAD CATS』(津野励木監督/2022)の2 本の主演作を含む複数の出演映画やネット配信ドラマが公開。

Q1.ハジメをどのような人物と捉えましたか?

ミネオショウ
最初どういう風に切り込んでいこうか悩んだんですけれど、脚本を読んで、ハジメは相手にうまく感情が伝えられない人だと思いました。妻のミツに対して話す内容を、家に帰る間に予習しておくみたいなシーンがあります。僕は、舞台挨拶などの際に、事前にどういうことを話そうか、うまく喋れるかなと考えたりするんですが、それが日常に出るのがハジメなんだなと思いました。自分に自信がないのかなとも思ったので、それを表現できたらと思いました。

Q2.妻の浮気を疑って監視カメラを買ってしまうなど、ハジメの行動は私は理解できたのですが、演じていていかがでしたか?

ミネオショウ
実際にやるかは別として(笑)、気持ちはわかりました。不安な気持ちというのは、パートナーだったとしても感じてしまうこともあると思ったので、すごい行動に出たなとは思いますが、理解はできました。

Q3.ご自身だったら、普段とは全く違う格好のパートナーを街で見かけたら、どうしますか?

ミネオショウ
やっぱり追っかけちゃいますよね。(笑)昔、実際にそういうことがあったんです。付き合っていた人が、朝方、知らない男の人と歩いているのを見て、それを追いかけようかなと思って。結局それは本人でした。そういう気持ちをちょっと思い出しました。(笑)

Q4.妻・ミツ役の小沢まゆさんとはご一緒していかがでしたか?

ミネオショウ
ミツもそうなんですけれど、包み込んでくれる人なんだろうなと感じました。こっちが何をやっても許してくれるというか、母性というか優しさを感じる人だなと思いました。

Q5.木村知貴さんが演じた主人公の同僚・月見里とのシーンの撮影はいかがでしたか?

ミネオショウ
木村さんとは、同じシーンでお芝居をするというのは初めてでした。すごく独特の、面白い間でやってくるんで、一緒にやっていて、吹き出してしまいそうになる瞬間もありました。木村さんがやった役がトイレで吐くシーンがあるんですけれど、全力でやるんで、毎回カットがかかる度に顔色が悪くて、「本当に吐いたのかな?」と思うくらいでした。自分が画面に映っていなかったとしても、声が入っているからと全力投球しているのは、見習わなくちゃなと思いました。

Q6.牧田夫妻とのシーンの撮影はいかがでしたか?

ミネオショウ
あの二人組は異質でしかなかったです。昔の日本映画の登場人物が現代映画に紛れ込んできたような異質感を感じました。こっちが何か言ったら、小津映画の登場人物が返してくるというようなおかしさがありました。

Q7.一卵性双子のフクリ・シッタとのシーンの撮影はいかがでしたか?

ミネオショウ
フクリ・シッタ役のミサ・リサさんは、今回お芝居が初めてだったみたいで、撮影中に吹き出しちゃうことが多くて、一緒にやるのが新鮮でした。初めてということで、楽しんでやってもらいたいなと思いながら、リアクションをしました。

Q8.河屋秀俊さん演じる野老(ところ)との撮影はいかがでしたか?

ミネオショウ
河屋さんは、映画『れいこいるか』を拝見したことがあって、まさかご一緒できるとは思っていなかったので、嬉しかったです。そこにいるだけで、漂っている風情、河屋さんが持っている人柄が出ていて、ああいう雰囲気を出すのはどうやるんだろうと思いながら見ていました。楽しんでご一緒できました。

Q9.福永煌くん演じるコゾウとのシーンは、大人びたツッコミをする子供とのセリフのやりとりが面白かったのではないかと思いますが、撮影はいかがでしたか?

ミネオショウ
煌くんとの撮影は本当に楽しかったです。カットがかかる度に、煌くんが虫を探しに行っちゃうんです。僕も一緒について行って、話して、すごく仲良くなれたので、その雰囲気も出ているかなと思います。ハジメが劇中で一番心を許して話している人物がコゾウだったので、いっぱい喋ってコミュニケーションを取りました。

Q10.髙橋栄一監督はご一緒していかがでしたか?

ミネオショウ
変わった方だなと思いました。こだわりがあるというか、やりたいことがはっきりしている方でした。自分がやりたいのはこうだというのを諦めないでちゃんと伝えてくれるので、やりやすかったです。信頼できる方でした。

Q11.読者へのメッセージをお願いします。

ミネオショウ
この映画は、変わった映画です。僕は、映画を観た時に、自分のための映画だと感じる時があるんです。この映画が、どなたかにとっての「自分のための映画」になってくれるといいなと思っています。


▼小沢まゆ

小沢まゆ プロフィール
映画『少女〜an adolescent』(奥田瑛二監督/2001)に主演し俳優デビュー。同作で第42回テサロニキ国際映画祭、第17回 パリ映画祭、第7回モスクワ国際映画祭Faces of Loveにて最優秀主演女優賞を受賞。主な出演作品に『古奈子は男選びが 悪い』(前田弘二監督/2006/主演)、『いっちょんすかん』(行定勲監督/2018)、『DEATH DAYS』(長久允監督/2022)、『こいびとのみつけかた』(前田弘二監督/2023)などがある。2022年に初プロデュース映画『夜のスカート』(小谷忠典監督)が劇場公開。出身地熊本県の震災復興映画イベントを主催するなど多方面で活動している。

Q1.俳優として活動してきて、2022年の『夜のスカート』で初めてプロデュースをされたそうですが、プロデュース業も始めた経緯を教えてください。

小沢まゆ
今後の人生をどう生きていこうかを考える40歳になるタイミングが、ちょうどコロナ禍の時期に重なったんです。世界中がいっぺんにひっくり返ることがあるんだな、常識だと思っていたことが変わっちゃうんだなと、目の当たりにした時に、自分の人生も、好きなことをやらないと、いつ何時どうなってしまうかわからないなと思い、「映画を作ってみたい」という漠然とした憧れを、今実現させようと思いました。その時子供が二人とも中学生になっていたので、育児が落ち着いたタイミングだったのも大きかったです。

Q2.本作ではプロデューサーとしてはどのような仕事をしたんですか?

小沢まゆ
髙橋監督は、『サッドカラー』などでご一緒したのですが、独自の視点を持たれている監督さんだなと感じていました。
プロデューサーはお金の目処を立てるのが最大の仕事なので、文化庁のAFF2という補助金に申請しました。「これから業界を活発にしていくであろう人材を見つけて世に出していく活動をしたい」というのも応募書類の企画意図に書きました。
あとは、ロケ地は基本的に私が探して、髙橋監督に提案して、一緒に見に行って決めていく、というやり方でした。撮影中は制作部の仕事もしました。

Q3.髙橋監督は、どのような監督ですか?

小沢まゆ
『ホゾを咬む』に関しては、独特のテンポを求められるなと思いました。会話する時のズレだとか会話が始まる前の空気感、会話が終わった後のなんとも言えない雰囲気、そこまで全部映画として見せたいというのが演出から伝わりました。独自の視点や感性を持った方だと思います。

Q4.本作の企画を聞いてどう思いましたか?

小沢まゆ
夫が妻を監視していく話なんですけれど、人には、「信じたいけれど疑ってしまう」だとか、「疑っている芯の部分には信じたいという想いがある」だとか、「信じる」と「疑う」という相反するものが、ワンセットで心にあるなと感じていたので、それを映画として表現したら面白いものになるなと思いました。

Q5.ご自身だったら、普段とは全く違う格好のパートナーを街で見かけたらどうしますか?

小沢まゆ
ハジメと同じで、聞くに聞けないですね。。聞いたことによって何かが崩れてしまうかもしれないと思うと、一旦、「もうちょっと時間を置いてみよう」だとか、違う探り方をしてしまうように思います。

Q6.ミツをどのような人物と捉えましたか?

小沢まゆ
ミツはすごく自由な人だと思って演じました。映画の中では明確に出していないのですが、絵本の翻訳家という設定です。ミツの仕事については、監督と相談して、家の中で作業をして完了する仕事にしました。この夫婦は結婚して10年以上経っていて、子どもが欲しかったけれどできなかった夫婦なんです。二人で住むには大きい三階建ての一軒家に住んでるのも、結婚当初、将来子どもができることを想定していたからなんです。子どもはできなかったけれど、ミツは日々の生活や自分の人生を楽しんでいる女性です。家にいるのが好きで、好きな仕事をして、好きな服を着て、好きな料理を作って暮らしている自由な人というのを意識しながら演じました。

Q7.ミツを演じる上で工夫した点はありますか?

小沢まゆ
この作品では、夫が街で妻らしき人を見かけて、そこから疑いの念を持って妻を監視していくんですけれど、ミツと、夫が見かけたミツらしき人が同一人物なのか、全く別の人物なのか、夫が幻で見た人なのか、映画としては答えを出していません。観客によって色んな受け取り方があると思うので、観る人それぞれが捉えられるような余白のある演技を心がけました。

Q8.ハジメとのシーンの撮影はいかがでしたか?

小沢まゆ
監督は、夫婦間にあるズレや噛み合わなさを表現したいんだろうなと感じていたので、そこを意識して演じました。結婚して10年以上経っていて、わざわざ言葉にしないこともあるし、好きとか嫌いとかの次元じゃなくなっているところもあるけれど、ミツはハジメのことが根底では好き、という想いで演じました。

Q9.ハジメ役のミネオショウさんとはご一緒していかがでしたか?

小沢まゆ
ミネオさんの出演作は何作か拝見していて、勝手にクールな印象を持っていたんです。でも、お会いすると明るいし、よく喋るし、笑い声が大きいから、遠くにいてもミネオさんが笑っている声が聞こえてきて、そういうミネオさんの雰囲気のお蔭で現場が明るくなり、それにいつも助けられていました。

Q10.読者へのメッセージをお願いします。

小沢まゆ
自分が信じているものが果たして真実なのか、また、傍にいる人のことをちゃんと理解できているのか、それは誰にもわからないと思います。この映画を見ると、その大切なもの、信じているもの、もしくは疑っているものの見つめ方が、自分の中でちょっと変わるかと思います。劇場の閉ざされた暗がりでスクリーンを見つめながら、同時に自分自身も見つめていただけると、何か見えてくるものがあるかと思います。ぜひ劇場で御覧ください。


脚本・監督・編集:髙橋栄一

<脚本・監督・編集:髙橋栄一プロフィール> 
岐阜県出身。平成2年生まれ。
建築・ファッションを学んだ後に塚本晋也監督作品『葉桜と魔笛』(2010)、『KOTOKO』(2011)に助監督として参加。
監督作品に『華やぎの時間』(2016)京都国際映画祭2016 C・F部門入選、SSFF & ASIA2017 ジャパン部門入選 /ベストアクトレス賞受賞、『眼鏡と空き巣』(2019)SeishoCinemaFes入選、『MARIANDHI』(2020)うえだ城下町映画祭 第18回自主制作映画コンテスト入選、『さらりどろり』(2020)SSFF & ASIA 2021 ネオ・ジャパン部門入選、『鋭いプロポーズ』(2021) 福井駅前短編映画祭2021優秀賞受賞、『言ってくれよ』(2022)つんく♂総監修 中2映画プロジェクト等がある。
最新短編映画『サッドカラー』(2022)がPFFアワード2023に入選するなど、独特の感性が評価されている。

Q1.本作のテーマを思いついたきっかけを教えてください。

髙橋栄一監督
生活のなかで関係を持つ人達について、自分が見ている像とその人の実像のズレみたいなものを日頃から感じていました。そのズレに気づくきっかけが、ASD(自閉症スペクトラム症)のグレーゾーンという診断でした。それまでは、絶対解みたいなものがあると思っていたけれど、どうやらそれがないということに気がついて、だとすれば日頃から関係を持っている人達ですら、真に理解しあうことはないのだと思いました。自分に見えている像は永遠にその対象となる人と重ならない、誰ともつながっていない孤独感。この解消されない孤独のなかで人と関係を持つことはどういうことなのかを考えはじめ、それが本作のテーマにつながっていきました。

テーマを深化させていく上で重要な要素となったのは欲動です。(木村知貴演じる主人公の同僚・月見里が話す)「汗と日焼け止めの匂いが混ざったのがたまらない」というのは僕自身がふと夏に感じた欲動でした。自分の中にいままで知らなかった欲動を発見することは、その対象となる人との新たな関係性を一方的に創造する。欲動は、どうせつながることのない孤独関係の中を生き進む手綱なのではないかと思うのです。主人公が監視カメラというフィルターをとおして妻を見つめるというこの物語には、孤独と純粋な欲動が根底にあります。これはもしかすると、「愛」なのかもしれないと思うのです。

Q2.主人公のハジメがASDという設定なのかと思って観たら、妻の浮気を疑って監視カメラを買ってしまうなど、ハジメの行動は理解できる行動で、ハジメの客の夫婦などの方がコミュニケーション能力がないというか、変わっていました。彼らは、企画意図にあった、「僕が理解していると思って接していた(周りの人)は、僕が理解も出来ず間違って作り出していたツクリモノで、そのツクリモノしかいない世界で生きていたんだと思わされました。」のツクリモノということなのでしょうか?主人公はASDという設定なんですか?

髙橋栄一監督
特にそういう設定はしていなかったです。登場人物の理解できない部分は何なのかというところで言うと、ハジメ以外は生きていることを楽しんでいるんです。僕は実生活で楽しいという感覚がよくわからなくて、「楽しんでいる」と言っている人たちが嘘だと感じることがあるんです。「それが楽しいんだったら、僕も味わいたいし、経験したい」とチャレンジするんですけれど、楽しくはない。ツクリモノの人たち、理解できない世界の人たちという感覚です。「人の気持ちがわからない」とは違うと思っていますけど。

Q3.一卵性双子のフクリ・シッタの設定はどう考えたのでしょうか?

髙橋栄一監督
人との関係にまつわる本作において、卵子という絶対的な根本を共有している双子という存在は特別です。現実世界において考えてみても、双子には自分たちの中だけの言語観があるように思います。双子がもつ特殊なムードを、この作品では主人公が監視生活の入り口に置いています。阿吽像や狛犬のように。

Q4.牧田夫妻はどういう設定ですか?

髙橋栄一監督
なにかで成功してすごくお金を持っているセレブのような設定です。そういう生活を送る人たちには、僕には理解できない時間の流れや理屈を感じます。
昔唐揚げ屋でバイトしていた時に、全身緑色の服を着たマダムが来て、いきなり「あんたはこんなところで働いていていいのか?」と説教されたことがありました。もう顔も覚えていないけど、あのアダムが牧田夫妻になったと思います。

Q5.冒頭の夢のシーンやコゾウはどういう設定ですか?

髙橋栄一監督
あれは、お盆の集まりというイメージでした。あの夫婦が結婚して12〜13年経っているという設定なんですけれど、コゾウは、その中で生まれるはずだった子供、水子というような設定です。ハジメとミツが本来だったら作りたかった子供ができていたら、この二人は「子供がいる家庭」として、違う関係性が築けていただろうけれど、それができなかったということで、ハジメが感じている罪悪感が悪夢という形になっています。形にならなかった子供たちのお盆という感じです。

本作は、妻への惚れ直しというか、自分の見ていた妻と違った、自分の中の妻像を作り直すまでの話なんですけれど、その中で、同じ対象に違う新しい魅力を発見するということは、自分の中にそれを良しとする感性を発見するということだと思うので、電話でコゾウが言ってくるのは、自分の知らないシワやシミを発見することと同じというか、それを想起させるためです。ホクロというのは、妻への新しい欲動という意味合いです。

Q6.コゾウは、夏のシーンなのに飛行帽を被っていたりとルックからして面白いですが、アイデアはどこから来たのですか?

髙橋栄一監督
男の子が好きなものを身につけるというわんぱくさを入れたかったです。スタイリストに、「土着的なものなどごちゃごちゃなものをつけたい」と伝えました。植芝理一さんの『ディスコミュニケーション』からの影響も大きいです。コゾウには風俗的なものを感じさせたかったんです。その結果使用した飛行帽から、音響効果の小川(武)さんのアイデアで、コゾウの登場シーンにはすべて飛行艇のような音を付けています。

Q7.モノクロにした理由はどこにありますか?

髙橋栄一監督
元々はカラーで撮影したんですが、カメラマンの西村(博光)さんが、ラッシュを観た時に、「モノクロにした方がいいんじゃないか」とおっしゃって、そこから変えていきました。脚本は約1時間分だったんですけれど、撮った映像を繋げてみたら2時間半でした。演出をつけていく中で、かなり間を使っていったからです。言葉や人の動きを記号にしていって、記号が動いているのを観て何を感じるかというのを突き詰めていきました。色を含め情報が多いと、そこに集中できなくなってしまう部分もあったので、モノクロを提案されてやってみたところ、演出でしようと思っていたことがさらにフォーカスされたので、確かにモノクロはいいなと思いました。

Q8.撮影監督の西村博光さんは、武正晴監督作品に数多く参加していてお忙しい方かと思いますが、どのような経緯で本作への参加が決まったんですか?

髙橋栄一監督
僕は塚本晋也監督のところにいたので、元々は自分で全部やるというやり方をしていました。今回は別の方とやってみたいと思ったんですが、どうせなら、何か自分には届かないようなレベルの方とやりたいと、プロデューサーの小沢(まゆ)さんにスタッフィングをお願いしました。小沢(まゆ)さんのデビュー作『少女〜an adolescent』からのお知り合いだった西村(博光)さんにお声がけいただいて、ありがたく本作に参加していただきました。

Q9.ミネオショウさんを主人公・ハジメ役に起用した理由をお教えください。

髙橋栄一監督
ハジメ役にはどこまでも普通で、そのなかでなにか特殊性を感じる方を探していました。ミネオさんはまさにそうで、普通なムードのなかで独特な目を持っていたのでお願いしました。

Q10.ミネオショウさんとご一緒していかがでしたか?

髙橋栄一監督
読み合わせとリハは2日かけてたっぷりやらせてもらったんですが、撮影初日は、布団から起き上がって扇風機を消すだけのシーンの撮影で、「もっと時間を使って」と伝えて何度もやってもらいました。あのシーンは、撮影スケジュールでは30分くらいしか取っていなかったんですけれど、1時間半ぐらいずっとやっていました。そのお蔭でトーンを掴んでいただき、その中でやれるお芝居の微妙な振れ幅をされていました。僕は「抑えて、抑えて」と言っていたんですが、ミネオさんが振れ幅なしでやっていたとしたら、何も伝わらない映画になっていたのだろうと思うと、ミネオさんが攻めてくださって、ありがたかったです。初日で作ったトーンをその後の撮影に持っていってくれたので、共演された方たちにもこの作品ややりたいトーンが伝わり、とても頼もしく思いました。そういうベースができた状態だったので、細かい演出に集中することができたありがたい現場でした。

Q11.妻・ミツ役の小沢まゆさんは役者としてご一緒していかがでしたか?

髙橋栄一監督
ご一緒するのは3回目でした。他の出演作も観ているので、天邪鬼ではないですけれど、今までの出演作とは違う小沢さんの魅力を出したいと考えていました。小沢さんにはクールで都会的な印象があったんですが、一緒に企画を進めていくうちに、熊本県出身ということもあってか、南の方のゆったりとした時間の流れの雰囲気を感じる部分があることに気が付きました。この魅力を活かせるキャラクターとしてミツを作っていきました。現場では座り方を変えてみたり、セリフの投げ方を微調整してみたり、ほっぺたを膨らませてみたりと、僕の中のミツ像を作り上げるうえで細かい部分までお付き合いしてもらいました。ただその中で、小沢さんは自分の中でのミツ像があったんじゃないかと思います。それがミツのとらえきれない雰囲気につながったんじゃないかなと思っています。

Q12.音楽をI.P.Uさんにお願いした理由をお教えください。

髙橋栄一監督
I.P.U.さんは現場に入る直前に知り合いました。電子音の音楽をつけたかったので、たまたまいい出会いをしました。音楽だけではなく服やアクセサリーもデザインされていて、抽象的な感覚を具象化する力と強い自身のカラーを持っている方でした。

Q13.本作をどのように観てほしいですか?

髙橋栄一監督
あまりお話を追わずに、独特なトーン・間をだらだらと感じてほしいなと思います。音などで気を散らせるように作っているので、「話がわからない」と止まらずに、その時に感じた音だとかを感じてもらえればと思います。

Q14.読者にメッセージをお願いします。

髙橋栄一監督
撮影の西村さんや整音の小川(武)さんにしていただいたお仕事は、映画館でないと感じきれない部分が大きいと思います。過度なセリフや過度なワードがない、ミニマムな作品なので、映画館のように情報が遮断された状態で観て頂きたいです。

■ 登壇者情報

▼【新宿K’s cinemaでの舞台挨拶・トークショーの登壇者】

◯12/2(土)
出演者:ミネオショウ、小沢まゆ(兼プロデューサー)、木村知貴、河屋秀俊、福永煌
髙橋栄一監督

◯12/3(日)
出演者:小沢まゆ(兼プロデューサー)、福永煌、ミサ、リサ、森田舜、三木美加子
髙橋栄一監督
◯12/4(月)
小沢まゆ(出演・プロデューサー)
髙橋栄一監督 他

◯12/5(火)
小沢まゆ(出演・プロデューサー)
髙橋栄一監督 他

◯12/6(水)
ゲスト:佐藤佐吉(脚本家・映画監督・俳優)
小沢まゆ(出演・プロデューサー)
髙橋栄一監督
◯12/7(木)
ゲスト:足立紳(脚本家・映画監督)
小沢まゆ(出演・プロデューサー)
西村博光(撮影監督)
髙橋栄一監督

◯12/8(金)
出演者:小沢まゆ(兼プロデューサー)、富士たくや、河野通晃 他
髙橋栄一監督

▼【大阪・シネ・ヌーヴォの登壇者】

◯12/16(土)
髙橋栄一監督

▼【大阪・シネ・ヌーヴォXの登壇者】

◯12/23(土)
小沢まゆ(出演・プロデューサー)

■ 作品情報

映画『ホゾを咬む』

あらすじ
不動産会社に勤める茂木ハジメは結婚して数年になる妻のミツと二人暮らしで子供はいない。
ある日ハジメは仕事中に普段とは全く違う格好のミツを街で見かける。帰宅後聞いてみるとミツ
は一日外出していないと言う。
ミツへの疑念や行動を掴めないことへの苛立ちから、ハジメは家に隠しカメラを設置する。
自分の欲望に真っ直ぐな同僚、職場に現れた風変わりな双子の客など、周囲の人たちによってハ
ジメの心は掻き乱されながらも、自身の監視行動を肯定していく。
ある日、ミツの真相を確かめるべく尾行しようとすると、見知らぬ少年が現れてハジメに付いて
来る。そしてついにミツらしき女性が誰かと会う様子を目撃したハジメは…。

出演:
ミネオショウ
小沢まゆ
木村知貴 河屋秀俊 福永煌 ミサ リサ 富士たくや
森田舜 三木美加子 荒岡龍星 河野通晃 I.P.U 菅井玲

脚本・監督・編集:髙橋栄一
プロデューサー:小沢まゆ
撮影監督:⻄村博光(JSC)
録音:寒川聖美
美術:中込初音
スタイリスト:タカハシハルカ ヘアメイク:草替哉夢
助監督・制作:望月亮佑 撮影照明助手:三塚俊輔
美術助手:塚本侑紀 菅井洋佑
制作助手:鈴木拳斗
撮影応援:岡上亮輔 濵田耕司 小野寺ひかり ⻑島貫太 秋田三美 小沼美月

音楽:I.P.U
エンディング曲:James Bernard – Growth (I.P.U Recycle)
 整音・音響効果:小川武 
楽曲提供:小川洋 劇中絵画:「生えている」HASE.

宣伝デザイン:菊池仁 田中雅枝 本編タイトルデザイン:山森亜沙美
宣伝写真:moco DCPマスタリング:曽根真弘

製作・配給:second cocoon
配給協力:Cinemago
海外セールス:Third Window Films
文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業
2023年/日本/4:3/モノクロ/108分/DCP/5.1ch
(c)2023 second cocoon

公式サイト: https://www.second-cocoon.com/work/hozookamu/
公式Xアカウント:https://twitter.com/hozookamu
公式Facebook: https://www.facebook.com/hozookamu

12月2日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開

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