渋谷の街に生まれ育った監督による、渋谷の街が舞台の映画『GLIDE』初日舞台挨拶

渋谷の街に生まれ育った監督による、渋谷の街が舞台の映画『GLIDE』初日舞台挨拶

12月17日、渋谷シネクイントにて、映画『GLIDE』が公開。上映初日には監督とキャストが登壇した。
登壇したのは、続麻玄通(つづお・げんと)、つかさ、奏衛、鈴木トウサ監督の4名。上映初日を迎えての感想やキャステイング、撮影時のエピソードの話が披露された。

GLIDE

映画『GLIDE』は、渋谷の街に暮らす兄妹の物語。兄・遥を演じるのは、続麻玄通(つづお・げんと)。演技未経験だったが、監督に見初められ主演に抜擢された。妹・祐希を演じるのは演劇ユニット「コンプソンズ」のメンバーであり、近年では映像作品にも積極的に出演を果たしているつかさ。その存在感が評価され、第21回TAMA NEW WAVEではベスト女優賞に輝いた。弱冠23歳の鈴木トウサ監督による長編デビュー作。第21回TAMA NEW WAVE コンペティション 入選/ベスト女優賞、ゆうばりファンタスティック国際映画祭2021 ゆうばりホープ 入選。

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続麻玄通(兄: 遥役)

■映画『GLIDE』 初日舞台挨拶

映画『GLIDE』 概要
バイト、たばこ、350㎜缶。母からの電話、観葉植物、スケートボード。
二人の日常は次第にほつれ始める。

渋谷の街にひっそりと暮らす兄妹、遥と祐希。バイトや派遣の仕事をしながら二人だけでつつましく生活をしている。そんな中、二人は熱海旅行の計画を立てる。準備を進める兄・遥。しかし妹・祐希は次第に今の生活に疑問を持ちはじめる。

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つかさ(妹・祐希役)

▼監督初の長編映画の公開を迎えての感想。キャスティングについて

-鈴木トウサ監督にとっての初長編映画ということで、公開を迎えての感想とキャストを選んだ理由について教えて下さい。

鈴木トウサ監督
まずこの作品は去年の2月に撮影した僕の初長編作品になります。こうして、この映画を劇場で公開することができたのを嬉しく思います。
今日来てもらったキャストの皆さん、まず主演の2人であるつかささんと続麻くんですが、まず続麻くんは、映画学校の僕の後輩で、元々、お芝居の経験はあまりない人なんですけども、見かけたときに、「あ、この顔だ!」と思ってキャスティングしました。これからスクリーンで観ていただけたなら、なんで僕が彼をキャスティングしたのかがわかっていただけるかなと思います。
つかささんは、これは僕がなぜかキャストで出た映画で共演したんですけども、今回も「あ、この人だ!」とインスピレーションを感じてお願いしました。
奏衛さんは、今日来られなかった石山優太さんの紹介で来ていただいています。それまで彼のお芝居を全然見たことがありませんでした。現場でいきなり本読みをしたところ、完璧すぎて、自分がめちゃくちゃ感動してお願いしました。

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鈴木トウサ監督

▼オファーを受けての感想

-続麻さんはお芝居は未経験で元々、俳優志望ではないそうですが、オファーを受けたときのことを教えて下さい。

続麻玄通
喫煙所で「俺の映画に出ないっすか?」みたいな感じで監督に言われたんです。

つかさ
ナンパだよね。

続麻玄通
当時は、僕は「脇役かなんかですよね?」みたいな話をして、「あぁ、多分そうだと思うよ」って言われたんです。
そうしたら3ヶ月後くらいに脚本がいきなり送られてきて、「あぁ、できたのか」と思って、読んでみたら主演の所に“続麻玄通”って書いてあって、驚きました。

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続麻玄通

-つかささんは、いかがでしたか?

つかさ
私も、脚本を送っていただいて、役名を言われなかったんです。だから、会社の同僚の役なのかなって思っていたら、ヒロインだったのでびっくりしました。

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つかさ

▼脚本を読んでの感想

ー脚本を読んだ時の印象や現場でのエピソードはいかがですか?

奏衛
この映画は渋谷の街が舞台になっていて、作品に人物同士の距離の違和感があります。
鈴木くん自体がもう東京生まれ、東京育ちの人で、僕は地方の人間です。渋谷の街はひとつのイメージとして捉えてしまいがちです。僕自身も地方にいた頃から、いまだに渋谷という街はずっと昔から変わらないイメージをしていました。
言い方が難しいのですが、鈴木くん自体が、渋谷とか、東京という街に対してすごくネイティブな人なんです。普段僕たちが思い描いてるあの渋谷とはちがう、一つの街角に落とし込んでいくんです。
鈴木くんは、東京を知ってる・東京に対してネイティブな人だから、こういう映画になるんだろうなっていうのはすごく思いました。
現場もこのロケ地を転々としていくときに、知らない場所に行っているというよりかは、ずっと鈴木くんの庭に放牧されてるような庭で遊ぶ感じの印象がありました。なのですごく東京という街の見方が変わりましたし、映画を見終わって、今日来ていただいてる皆さんも渋谷の見方だったり東京の見方っていうのが少し変わっていただければなと思います。

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奏衛(村井真司役)

▼現場での苦労について

ー現場での苦労はありましたか?

続麻玄通
最初にリハーサルをちょっとだけやったんですけど、その時点で、「ちょっと俺、主演やって大丈夫なのかな?」みたいなことを鈴木くんに相談したんです。
そうしたら、「大丈夫だよ。やれるから」って根拠もなしに、とりあえず言われたんです。
実際に現場に入ってみて、最初のシーンのときに、とりあえず自分の役を演じるにあたって、「演じよう、演じよう」って意気込んだ感じでは行かないようにしようと思いました。
鈴木くんの映画に対して、空気の一つの部分になるというか、あまり自分から我が強く、「主演を演じてるぜ! 遙を演じてるぜ!」みたいなことじゃないスタンスで臨みました。
最初のシーンで演じて「OK」が出て撮影がすすんでいって、これでいいんだと思いました。そこからは苦という感じはあまりなかったですね。とにかく、空気になろうと。監督がOKと言えばそれでOK。そういうスタンスです。

▼役どころについて

-妹という役どころ、役柄についていかがでしたか?

つかさ
お2人が話した通りなんですけれど、私は初めて脚本を見る時に想いを感じるお話だなって思いました。自分もそういう映画を作れたらなって思っているんですけど。においとか温度とかそういうものを感じてすごいいいなと思いました。
私は妹役ですが、実年齢は続麻さんの方が私よりも若いので、ちゃんと兄弟、お兄ちゃんと妹に見えるかなという不安はありました。撮影に入ったらもうお兄ちゃんにしか感じなくて、そう私も演じていて違和感はなかったです。

▼“渋谷”に関する思い

-渋谷への思いとか、設定にあたって、考えたことはありますか?

鈴木トウサ監督
奏衛さんも言ってくれたことなんですけど、どうしても東京・渋谷という街って漠然としたイメージで捉えられがちで「そのイメージのまんま描かれがちな町だと、同時にあると思うんです。
自分はここで生まれ育ったということがあるので、そこは一個越えていきたい。そうじゃない街としての渋谷を描いていくと、その町だからこそ起こりうるドラマを観ていただけると嬉しいです。
よく言われる、「都会は、冷たい」ということがあるとおもうんですけれども、包容力の裏返しでもあるその渋谷という街を場にしたドラマ、映画として観ていただけると嬉しいなと思います。

▼撮影現場での思い出

-現場での思い出は?

つかさ
さっきみんなで控室で話していたんですけど、居酒屋でのシーンがありまして、そこでスタッフの方々が一斉に酔っぱらいの演技をしだした時間があって、それがすごい楽しくて覚えています。

鈴木トウサ監督
この映画は僕の映画学校の同期をスタッフ・キャストを集めました。奏衛さんは撮影前から知っていたんですが、すぐに現場の空気に溶け込んでくれました。
仲間で撮った映画なので、現場中はずっと仲間のノリみたいな、ずっといたかのように進んでいった感じです。

つかさ
その和気あいあいとしている感じを観ていただければ、わかると思います。現場は本当に和気あいあいと楽しく過ごさせていただきました。

奏衛
鈴木くんが言った通り、本当に仲間内で撮っています。馴れ合いで撮っている映画ではありません。映画学校って日本にたくさんあって、大学単位の中で撮られる作品ってどこか和気あいあいみたいなものが画面から透けて見えてしまう場合ってどうしてもあると思います。
みんな本当に映画が好きで、映画を全員で撮りに行っている環境というのは、仲間を集めて作るから、いい意味でのハンドメイドという現場だというのはすごく楽しいと思いました。

つかさ
和気あいあいとしていましたが、緊張もありましたよね。スタートがかかればみんなちゃんと集中して。

奏衛
それに気を遣わずにみんなの言い合いができるっていうのは、すごくいいことですね。

つかさ
確かに鈴木監督も内田カメラマンもよく言い合いしているのを見かけました。

鈴木トウサ監督
カメラに対する考え方が僕と内田くんは結構違くて、今回は内田くんに歩み寄ってもらった感じです。

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▼画面サイズ(縦横比)に関する理由

-スタンダードサイズというのも特徴としてあると思いますが、そのあたりについては?

鈴木トウサ監督
スタンダード、4:3の画面でやってるんですけど、僕は『GLIDE』の前の短編2作品もスタンダードで撮っています。
これは、YouTubeで公開されているちょっと前のインタビューで答えていることなんですけど、日本って建物がどうしても狭くて縦長なんですよ。
なので、シネスコがうまくいかないことが多いと思っています。
田舎の方に行けば違うんですよ。東京で撮るってなるとやっぱりどうしてもそういう部分が出てくる。
じゃぁ、僕はビスタで撮るのかっていうと、実はそんなに好きじゃないというか、中途半端だなって今は思っています。
またちょっと考え方が変わるかもしれないですけど、そこで撮った時に、スタンダードの方が潔いと思ったんです。
ちょっと田舎さみたいなものが出るのがすごい好きです。
なので、もう脚本段階からこれはスタンダードで撮ろうと思っていました。

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▼舞台挨拶、締めのメッセージ

-締めの言葉をお願いします。

奏衛
いい意味で、みんな仲間内で作った映画です。こうやって公開できることは映画に携わる者としては、かけがえのない瞬間ですし、かけがえのない1週間だと思います。
当作をはじめ、皆さんももちろん良い時間になってくれればと思います。

続麻玄通
『GLIDE』という映画は、観てからの街であったり、その後の人生の感じ方が変わってくるような、そういった映画だと思います。
この映画を観た後に、渋谷の街に出たときに、何か思いや吸う空気が変わるのを感じてくれたら嬉しいなと思います。

つかさ
ほとんどを渋谷で撮った映画なので、渋谷で観ていただけることを本当に嬉しく思います。街に出て、さっき画面に映っていた道だとかを観ていただく楽しみもあるかと思います。ごゆっくりお楽しみください。

鈴木トウサ監督
ここまででみんなが言ってくれたことだと思うんですけども、劇場公開の第1館を渋谷の映画館でまず公開させていただけるってことを本当に嬉しく思います。
これは僕として貴重な機会だと思っています。この映画を見終わって、渋谷の街にいたときに、感じるものは映画体験として、映画館で見ることの豊かさだと思います。
これも常々言っていることではあるんですけども、本当に今コロナで、なかなか映画館で見ることが厳しいような時代・時期になっています。そのような中で、この映画をきっかけに、一つでも映画館で映画を見るっていうことの豊かさを再確認していただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします。

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■映画『GLIDE』

監督コメント
僕は渋谷の街に生まれ育ちました。この街には色々な人が色々な生き方をしているんだろうと思います。決して広い街ではありません。綺麗な街でも、整然とした街でもありません。雑多な人々が雑多なままで、ここにいます。
その雑多さの中に、一瞬の輝きが見えることがあります。その輝きを捉えようと、僕はこの映画を撮りました。
みなさんが映画館を出て、渋谷の街を再びみた時に、それが今まで以上に愛おしいものとして映ることを願います。                  ―鈴木トウサ

キャスト・スタッフ
出演:続麻玄通 つかさ 石山優太 奏衛 青柳美希 板山道 永山凛太郎
監督:鈴木トウサ 脚本:鈴木トウサ 中田森也 撮影:内田和宏 照明:Sebastian 銭解語 録音:馬原洋幸 三村一馬 高橋啓太 助監督:芝愛弥葉 稲生遼 大西諒 編集:鈴木トウサ a.y! 整音:三村一馬 音楽:内田和宏 主題歌:gummyboy「Crystal」 配給・宣伝:イハフィルムズ
(日本|カラー|72分|スタンダード|ステレオ)

公式サイト https://glide.amebaownd.com/
公式Twitter https://twitter.com/glide_movie

渋谷シネクイントにて12月17日(金)より一週間限定公開(連日21:00の回)
アップリンク京都にて2022年1月21日(金)より一週間限定公開

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