映画『コーンフレーク』主演・GON、磯部鉄平監督インタビュー

映画『コーンフレーク』主演・GON、磯部鉄平監督インタビュー

2023年1月21日(土)から池袋シネマ・ロサにて、映画『コーンフレーク』が公開。本作は磯部鉄平監督によるオリジナルラブストーリー。キャストにGON、高田怜子、日乃陽菜美、手島実優、南羽真里、木村知貴等注目の若手俳優たちを迎えて、夢と現実に悩み、ぶつかり合い、それでも離れられない30歳手前の同棲カップルをリアルに描いた、珠玉のラブストーリー作品。
今回の主演のGONさんと磯部鉄平監督にお時間をいただき、本作制作のきっかけから、上映にいたるまで、お話しいただきました。

コーンフレーク

■ 主演・GON、磯部鉄平監督インタビュー

▼作品作りのきっかけ

-まず作品づくりのきっかけについて、うかがいたいと思います。作品タイトルは『コーンフレーク』で、ファーストカットにも映像としてコーンフレークが映し出されていますが、音や音楽にまつわる話ではないかという第一印象がありました。本作の制作はどのように始まったのでしょうか。

磯部鉄平監督
撮影としては僕が初めて撮った長編作品になります。2016年から映画を撮り始めて、短編をその年に4本撮っているんです。
その4本の短編を撮っている中で、GONちゃんに出会ったんです。GONちゃんと意気投合して、4本の内2本は主演で出てもらって、「いつか長編をやりたいね」、「やりましょう」といった話をしていました。
その次の年にも短編で『オーバーナイトウォーク』を撮って、そこで『コーンフレーク』で主演の高田怜子さんと出会って、高田さんとGONちゃんのカップルの組み合わせがいいなと思ったんです。

GON
磯部監督が、「どんな話をやりたい?」って聞いてくれたんです。そこで僕は、「男女二人のシンプルな話がやりたい。それが一番力が出せるから」と答えたんです。
そこで磯部監督が「じゃあ、こういうのがあるんだけど」って言って、まだシナリオまではたどりついていない、設定段階の話をしてくれて、そこに僕がギターを練習し始めた頃だったので、ギターを弾くミュージシャンの役という話になっていったんです。

-みなさんの出会いや、当時取り組んでいたことなどがつながっていったんですね。

磯部鉄平監督
高田さんとGONちゃんが20代後半で、僕も20代後半(28,29歳くらい)に、映画を学ぶためにビジュアルアーツに入ったんですが、それまで僕はダラダラ生きてきて、「なんかせなあかんな」と思いながら日々を過ごしていた過去が、二人よりも歳は上になっているけど、主演をやりたい役者の二人は20代後半で、「これからどうしようか…」と思っているところが、バッとハマったんです。
僕は幼稚園から高校3年生までピアノをやっていたのですが諦めて辞めてしまったんです。
「音楽は好きでやっていたけど、何にもならなかったな…」という、人生の中のひとつの挫折みたいになっていました。
でも音楽が好きだから音楽映画も好きだし、自分が映画を撮り出して、どこかでやりたいなって思っていた時に、たまたまGONちゃんがギターを始めていたので、僕の経験と20代後半の二人の話をくっつけていったら、音楽映画になるんじゃないかという流れが始まりです。
なので、先ほど話にあった、音に纏わるという点は確かにあると思います。

-まさに作品の中で描かれている20代後半のもやもやした感じ、やりきれない・成りきれない感じや、ギターの練習を始めたという偶然、音楽や撮りたいものが組み合わさって作品になっていったんですね。

▼出会いの話

-磯部監督とGONさんの出会いは、どのような感じだったのでしょうか。

磯部鉄平監督
短編映画を4本撮っていく中で、最初はスタッフ3人ぐらいで『海へ行くつもりじゃなかった』を撮って、次に屋敷紘子さんと出会って、『予定は未定』を撮って、その次に誘われて、「The 48 Hour Film Project」という映画製作の過程を48時間以内で行い、1本の短編映画を完成させる映画祭に出ることになって、せっかく出るなら新しい俳優の人と出会いたいと思って、合同オーディションに行ったんです。

GON
50人から100人ぐらいの誰が来るか分からない合同オーディションなんです。

磯部鉄平監督
お題をその日にひいて、そこからスタートするので、何も決まってないんですよね。撮りたい監督たちと、出たい俳優達がエントリーしているという謎のお見合いみたいな感じです。
すでに出演作がいくつもあって、そこにいるとは思わないGONちゃんがいて、「おるやん!」ってなったんです。

GON
当時、自分の技術を確かめるため・力量を計る目的のために、ワークショップやオーディショ ンを受けてたので、終わり次第すぐに帰ろうとしていたんです。 そうしたら磯部監督が走って追いかけてきて、「48時間映画を一緒に撮りませんか?」って声を掛けてくれたんです。それで一緒に作品を作ってみたくなったんです。
二人でたばこを吸いながら、お互いの生い立ちというか、映画に関わったきっかけを喋って、面白いな、気が合うかもってお互いに思ったと思うんです。
これだったら48時間スタッフのどんなスタッフか分からないけど、この人だったら信頼できると思ったんです。

結果は1発目の現場からアイコンタクトできる関係で、磯部監督がこう感じているから、僕がこう動かなきゃいけないなとか、現場回しとして盛り上げておかないと…っていうのが分かってお互いに作りやすいと感じていたと思います。

磯部鉄平監督
その後、『真夜中モラトリアム』という作品を撮って、「次は長編をやりましょう」という流れでしたね。

コーンフレーク

▼脚本を書くにあたって

-『コーンフレーク』の脚本執筆にあたって、お二人で話し合った点はありますか?

GON
お互いに影響され合って、アイディアが脚本に反映された部分は多いと思います。でも脚本の第一稿が僕に届いたのは撮影の1ヶ月前ぐらいで、それまで1年弱の期間、僕はどんなキャラクターでどんな役になるかわからなくて、でも自分なりにアプローチをしておきたいという気持ちがありました。

磯部鉄平監督
そこで、「ギターだけ練習しておいてくれ」とだけ伝えていましたね。
ギターがそれなりに出来ないといけなかったので、そこを頑張ってくれていたみたいです。

GON
見た目はミュージシャンっぽいとよく言われるんですけどね。

▼コーンフレークというタイトルは最初から決まっていた?

-『コーンフレーク』というタイトルは、最初から決まっていたんですか?

磯部鉄平監督
映画のタイトルは、全然決まっていませんでした。高田さんとGONちゃんをカップルにした音楽映画にしようというすじがあって、最後にはこうなる…といった話を脚本の永井くんと話していました。
その中で、「めっちゃ、いい曲があるんですよ」って、すのうさんの『コーンフレーク』という曲があるという話が出てきたんです。

-作品のために作られたものではなく、既存の曲だったんですね。

磯部鉄平監督
すのうさんとは永井くんが前の現場で知り合っていて、「(曲を)使っていいよ」という話になりました。「これ、めっちゃいいやん」となって、タイトルとしてもしっくりくるというか、「そのままいけるじゃん」という流れですね。

-みなさんの出会いや、作品のコンセプト、曲との繋がりなど、一連のつながり・まとまり具合がすごいですね。

磯部鉄平監督
すのうさんには、店のマスター役で出演していただいていますしね。

GON
お芝居もめちゃくちゃ上手いんですよ。

▼脚本を最初に読んだ時の感想

-脚本を最初に読んだ時の感想をきかせてください。

GON
第一稿を見た時点で、めちゃくちゃいいなと思いました。でも、まだこれで完成稿じゃないし、磯部組って現場で変更が入るので、まずは大体のあらすじを頭に入れ込みました。撮影途中までラストは決まらなかったんですけど、撮影の最後にクライマックスをどうするかってみんなで話し合って、もうひとつ案があったんですけど「こっちじゃないとやりたくない!」ということがあったり、みんなで話し合ってあのかたちになりました。

磯部鉄平監督
いつも僕は現場で変えてしまうところがあるんですよね。

GON
それはいいことだと思うんですよね。撮ったものも変わるし、きちんと素材を見て、変化を見て構成していかないと一番伝えたいことやエネルギーみたいなものが削られてしまうと思うんです。
細かいところや感性、ニュアンスによって、芝居も変えていかないといけないと思います。役者として大変にはなります。だから、本当は3か月前ぐらいに脚本を渡していただいて、準備万端にしてにしてやりたかったんですけど。でも、渡されたのは一か月前くらいで完成形ではないものでしたが大体の粗筋は分かって面白い内容だったので良かったです。

磯部鉄平監督
最後の決定稿では、劇中のシーンにあるような卓球はしていないですね。
“バーでしゃべっている…”といった感じだったんですけど、動きがないと面白くないという考えで、撮影の数日前に、「みんな卓球ってできますか?」って連絡しました。

GON
僕は撮影が終わっていたんですけど、現場へ行ってお手伝いをしたり、他の方がどんな演技しているかみたくて足を運んだんですけど。みんな集まった時に、卓球の練習から始まっていましたよね。

-ラリーをしないとシーンとして成り立たないですものね。

磯部鉄平監督
2時間ぐらい、卓球だけやりましたからね。

GON
卓球の練習相手もしましたね。

▼撮影から編集開始まで2年

-事前に耳にした話によると、撮影から編集を開始するまでに2年の期間があるそうですね。
 編集のきっかけは、出演されている手島実優さんの特集上映の時だったとか。

GON
磯部監督とたまに喫茶店に行っていたんですけど、会う度に「いつできるんですか?いつ編集するんですか?」って。出演・参加したから気になってききました。

磯部鉄平監督
なんであんなに長い間、編集しなかったんだろうね。

GON
「やる気にならないんだよな~」なんて言ってました。

-何か理由はあったのでしょうか?作品的にも美保と裕也の関係のように過ごした期間としてリンクする部分も感じますね。

磯部鉄平監督
「もういいかげんにしてください」とケツを叩かれて編集を始めることになりました。

▼完成した作品を観ての感想

-脚本があり、全体の流れは把握されていると思いますが、撮影から2年経ってから完成した作品を観ての当時の感想はいかがでしたか。撮影の時と完成した作品を比較しての感じ方の違いがあると思いますが。

GON
完成した作品を1回目に観た時は、自分じゃダメだと思ったんです。自分自身を厳しい目で「演技のこういうところが駄目だ」といった点を見過ぎていて、作品自体をきちんと感じられなかったんです。
でも友達が「めちゃくちゃ良かった!」ってみんなが言ってくれました。
その時の打ち上げの後で、2回目に観たら自分も泣いたんです。「めちゃくちゃいいわ」って。
その時にすごい感動してめちゃくちゃ名作だと思いました。自分で言うのも恥ずかしいですけど、いいもん作ったという思いがむちゃくちゃ強くなりましたね。

▼撮影のエピソード

-ギターの練習の話がありましたが、共演されているすのうさんとのエピソードはありますか?

GON
すのうさんにはギターを教えてもらって、今も教えてもらっています。
レコーディングも付き合わせてもらったりしています。わからないことがあると質問したりしていました。僕は今もギターを練習し続けていて、『コーンフレーク』ももちろん聴きますが、音楽にとても興味が湧きました。

また、撮影のエピソードとして、思い出したんですけど、100カットくらい撮影したのに、編集でワンカットになっているシーンがありましたよね。そのワンカットが良かったんですけど。

磯部鉄平監督
いろいろ撮って、アップとかもいっぱい撮ったけど、引きのワンカットが一番良かったっていう。

▼大阪ならではの空気感。磯部監督のこだわり

ー磯部監督の作品には、関西ならではの空気感や会話の自然な面白さを感じますがこだわっているものがありましたら教えてください。

磯部鉄平監督
ネイティブ関西弁でやりたいと思っています。それを仲間内でやっています。ドラマで見ていて、「何や、その関西弁!」みたいに違和感を感じることがあるから、本物の関西の人たちだけでやって、例えば今回だと、群馬県出身の手島さんが来たら、手島さんに関西弁を教えるんじゃなくて、“大阪に来ている子”といった感じで、そのまましゃべった方が絶対いいと思っています。

GON
その方が手島さんもキャラクターとしても立ちますものね。

磯部鉄平監督
関西弁のリズムっていいなと思っていたので、そのリズムで会話を喋り合うことは、やってみやりたいことでもありました。

▼流血シーン。実は…

-劇中の流血シーンで、劇場内で笑いが起きていましたが、あのシーンは監督の実話が元になっているそうですね。

磯部鉄平監督
そうなんです。あれは僕の実話です。彼女にぶつけられて、チャリで二ケツで病院まで送ってもらって、病院で仲直りするという実際の話を使っています。
二人の関係をどんな風に進めていくか、色々アイデアを出していたんですけど、自分の過去の実体験をそのまま使いました。
たまに「血の量が多くない?」と言われますが、実際はあんなもんじゃなくて、骨も折れていたくらいでした。

▼上映まで5年、その思い

ー撮影から上映までの5年を振り返ってみていかがですか?

磯部鉄平監督
撮影から編集を開始するまでの最初の2年はだらだらと過ごしてしまって本当に申し訳なかったんですけど。

GON
でも、純粋に自分が作りたいと思った時の方が、編集も勢いが出るんじゃないですかね。

磯部鉄平監督
一回、寝かせてみようと思ったんですよね。長編映画は初めてだったので、自分で編集していて客観視できないだろうなと思ったんです。脚本も無茶苦茶変えていって、すごい熱量と迷惑と勢いで撮っていて、みんなに「まとまるんですか?」と言われて、「いや、大丈夫やから!」みたいに言ってたけど、一旦置いて少し時間が経ってから見たら、客観的にできるよなと思っていたら、『ミは未来のミ』に助成金がおりるから、そっちを撮る話になってしまったんです。
小さいながらもいくつか映画を撮ることになって、そのうちにあっという間に1,2年が過ぎてしまいました。

-その期間、粗編もしなかったんですか?

磯部鉄平監督
全くしなかったですね。素材は全部見ていたんですけど。
編集の時は、他人が撮ったんじゃないかと思うくらいの新鮮さでした。3年前の手島さんの特集上映の際に上映させてもらって、その後すぐに劇場公開と思っていたんですけれども、その時には昨年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の上映作品『世界の始まりはいつも君と』を撮ることが決まっていたんです。それを3月に撮るから、それが終わってから上映と思っていたらコロナウイルスの流行で撮影が延びて、上映も出来なくなって、その後に延びていた撮影が始まって…現在に至る流れです。
いろいろありましたが嬉しいです。映画が公開できるなんて。
諦めているわけじゃないけれども、(映画を観てもらうためには)どうやってやったらええねんみたいな気持ちにはなっています。
「配信しませんか?」という話もあったのですが、「配給しませんか?」って返したことで劇場公開が実現して、何とかこぎつけていただいたっていう感じです。

▼お客様へのメッセージ

-観にいらっしゃるお客様にメッセージをお願いします。

GON
キャストの方々が本当に素晴らしいんです。高田怜子さんをはじめ、木村知貴さん、手島実優 さん、日乃陽菜美さん、すのうさん、土屋翔さん、ひとみちゃん、時光陸さん、白井宏幸さん 松本真依さん、脇を固める人たちに至るまで、皆さんの演技が素晴らしくマッチした作品だと思います。

お話もとても素敵で、自分が出ていて自分が観ても大好きな作品です。だから周りのひとにもむちゃくちゃ薦められる映画になっています。自分がこれまで参加した中でも特に好きな作品 です。20代最後にこの作品に出会えて良かったと思っています。これから自分がどういう役者人生を 歩んでいくのかという時に、一つの節目となる作品でしたりこの作品がが一人でも多くの人に、できるだけ深く響いてくれたらと思います。すのうさんの曲のように深く響いてくれたら、きっと愛される作品になると思っています。是非劇場に観に 来てください。

磯部鉄平監督
かなり自由に作った映画です。初めて撮った長編でもあるので、やりたいことが詰まっている と思います。長編を撮るとなった時に誰から頼まれたわけでもなく、自分のお金で撮るわけで、GONさん自身は忘れてしまっているかもしれませんが「好きなことをやったらいいと思います」と言ってくれたんです。

GON
僕、そんなことを言っていたんですね。

磯部鉄平監督
「長く付き合っているスタッフとキャストでやっているし、やりたいことは、やったらいいと思います」って言ってくれたんですよね。それで僕はみんなに迷惑をかけ続けてしまったんですけど(苦笑) 「卓球をやりたい」とか、「走り続けてくれ」とか、反省する面も多々あるのですが、やりた い放題やらせてもらって、最初の長編映画が撮れて良かったと思っています。だから、好きなこと・自分のやりたいことが詰まっていると思います。この作品で出会えた人たちとは今後も繋がっていきたいと思っています。いい映画になっていると思うので、是非観に来てください。

コーンフレーク

■イベント情報
1/21(土) 20:30の回(上映後)
登壇者(予定):GON、木村知貴、ひと:みちゃん、磯部鉄平監督

1/22(日) 20:30の回(上映後)
登壇者(予定):GON、手島実優、木村知貴、磯部鉄平監督

1/23(月) 20:30の回(上映後)
登壇者(予定):根矢涼香(俳優)、GON、磯部鉄平監督


■作品情報
GON/高田怜子
日乃陽菜美/手島実優/木村知貴/南羽真里/土屋翔/ひと:みちゃん/時光陸/白井宏幸
松本真依/皷美佳/岩本守弘/五山智博/石井克典/谷口慈彦
小林未奈/すのう(特別出演)
監督:磯部鉄平
脚本:磯部鉄平・永井和男/撮影・照明:佐藤絢美/録音・整音・DIT:杉本崇志/制作:石井克典/美術:南羽真里
編集・カラーグレーディング:小林健太
音楽:kafuka(江島和臣) /挿入歌:「パンプス」(作詞・作曲:すのう/歌:小林未奈)
主題歌:すのう「コーンフレーク」(作詞・作曲・歌:すのう)
プロデューサー:谷口慈彦
製作:belly roll film/配給:モクカ/配給協力:Cinemago/2020年/95分
© belly roll film

公式HP https://www.cine-mago.com/cornflakes

2023年1月21日(土)より池袋シネマ・ロサほか全国順次公開

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