映画『葬送のカーネーション』先行試写会イベントに岡本多緒登壇。傑作の映像マジックに感銘。

映画『葬送のカーネーション』先行試写会イベントに岡本多緒登壇。傑作の映像マジックに感銘。

2024年1月12日(金)より、映画『葬送のカーネーション』が公開。本作は、第 27 回ソフィア国際映画祭・審査員特別賞受賞、第 28 回テトゥアン地中海映画祭・コンペティショングランプリ受賞、そして 2022 年には東京国際映画祭・アジアの未来部門に出品されるなど、「現代トルコ映画の到達点」として世界各国で注目を浴びるベキル・ビュルビュル監督による現代社会の寓話。12月19日(火)に、俳優・監督・モデルの岡本多緒さんをゲストに迎えたトークイベント付き先行試写会の模様をお届けします。

■ 映画『葬送のカーネーション』スペシャル・トーク付き先行試写会

本作は約 370 万人といわれる世界で最多の難民を受け入れているトルコの荒涼たる南東部を舞台に、祖母の遺体を故郷に還すために、戦火から逃れた祖国を目指す少女とその祖父の道行を丹念に描き、深い感動を呼ぶ 24 年必見の注目作。
“TAO”名義でスーパーモデルとして世界中で活躍し、『ウルヴァリン:SAMURAI』などハリウッド映画にも複数出演した後、本年より日本に拠点を戻し、新たなキャリアを再スタートさせた、俳優・監督・モデルの岡本多緒さんをゲスト迎えたトークイベント付き先行試写会を実施した。

▼試写会トークイベントレポート

◆本作を観た岡本多緒さんの感想

この映画の率直な感想について聞かれた岡本さんは、「ほとんどセリフがない映画で、物語が
進むにつれて、主人公の少女ハリメを演じるシャム・シェリット・ゼイダンさんの、初めての映画出演とは思えないような演技力に驚かされました。登場人物たちの旅の行く道と共に、どんどんと引き込まれる力のある作品です」と絶賛。

◆セリフの少ない映画の魅力について

本作のように、セリフの少ない映画の魅力をどう捉えるか問われると、「偉そうなことは言えないんですが…」と謙遜しながらも、「日本の映画は説明セリフが多く、「言い過ぎ!」と思ってしまうことが多いです。日本人は“行間を読む文化”があるのに、なぜ映像作品になるとこんなにセリフで埋め尽くされるのか…、不思議ですよね。もちろんそれが上手く働いている作品もありますが、この映画のように、セリフがほとんどなく、俳優の行動や仕草で物語を表現し、映像の美しさで全てを語り掛けるスタイルには「やられた!」と思います。こういう作品に出演できたらとても光栄だと思います」と、海外作品ならでは演出に感銘を受けたことを語った。


◆映画監督にチャレンジしようと思ったきっかけ

海外の映画演出についての話から、2013 年に『ウルヴァリン:SAMURAI』でハリウッド女優デビューし、数多くの海外作品に出演してきた岡本さんが、日本に帰国し、俳優のみならず映画監督にもチャレンジしようと思ったきっかけについて聞かれると、「ハリウッドでデビューをさせていただきましたが、ハリウッドで出演してきた作品は自分が観て育ったタイプの作品ではありませんでした。「なんか違うな?」と思ってしまう瞬間があって…。
私はヒューマニティのある作品が好きだ!と思い切って、日本に帰国し、俳優として、監督として、新しくチャレンジしようと決意したんです」と、新たなキャリアをスタートさせたことについて、活き活きと語った。

◆岡本さんからのメッセージ

岡本さんは俳優やクリエイターとして活躍する一方で、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の定期支援者として活動を行い、世界に向けて発信を続けています。個人としてもチベット難民を義理の母に持っており、本作に事前に寄せられていたコメントには、「ずっと義母のことを考えて観ていました」と綴っており、映画の中で描かれた“難民”というテーマについて、「遠い国のお話ではなく、自分の身にも起きる出来事であると思いながら観てほしい」と訴えた。

「私の義母がチベット人で、大変な幼少期をすごしてきた人です。義母に出会ったとき、歴史の中で日本がアジア諸国にしてきたことを、どれだけ学校で教えていないのか、ということを実感しました。今、世界で起きていることは、人間誰もが持っているかもしれない狂気から起きていることなのかもしれない。
人種という偏見を取り払い、この映画で描かれていることは、自分のことでもあると思いながら、この映画を“今”、観てほしいです」と、現代社会に生きる私たちの胸に強く訴える作品であることを力強く主張した。


最後に今一度本作について、「人間性を忘れずに生きていかないといけない。そんなことを心に刻んでくれる映画です。ぜひお友達や家族など、大切な人におすすめしてください!」とコメントし、イベントは大盛況のうちに幕を閉じた。


■ 映画『葬送のカーネーション』へ寄せたコメント

岡本多緒
ずっと義母のことを考えて観ていました。
私の夫の母はチベット人です。1948 年から始まった、毛沢東率いる中国共産党にチベットが侵攻された時、彼女はまだ少女でした。両親から言われるがままにチベットから亡命した時は 13 歳、まさかその後長年戻ることが出来なくなるとは毛頭思わなかったでしょう。
少しの間の我慢だと言い聞かされ、何週間もかけて道なき道を進み、辿り着いたインドでは家族がバラバラになってしまい、父とは途中ではぐれ、その後中国軍に刺殺されたんじゃないかという噂だけが届く…。
現代の日本に生まれた私には想像を絶する体験です。彼女はその後スイスに難民として受け入れられ、数年後にスイス国籍をもらえた為、簡単ではないもののチベットに渡航することも出来るようになりました。
今となっては祖国チベットより何倍も長い年月をスイスで過ごし、彼女の生活は全てスイスにあります。それでも彼女は息子である私の夫に、将来自身が亡くなった際には遺灰をチベットの美しい湖、ナムツォ湖に散骨してほしいと頼んでいます。
現在難民は、戦争・紛争の理由の他に、気候変動などで住む場所が奪われている人たちも増加の一途を辿っています。戦争を知らない世代が戦争をしたがっている、と囁かれる今日この頃、「生まれた場所に還りたい」という人々の思いが世界中に溢れていることを、私たち日本人も肝に銘じておかなければと思うのです。


■ 映画『葬送のカーネーション』

【STORY】
冬景⾊のトルコ南東部。過酷だか壮麗な大地を、少女とその祖父は棺と共に旅をしている。少女の名はハリメ、老人はムサ、棺の中にはムサの妻の亡骸。彼らは遺体を葬るために故郷を目指していた。ある時は人々の助けを借り、またある時は二人で棺を引きずりながら旅は続く。しかしハリメにとって故郷は両親を奪った忌むべき土地で戻りたくはない。一方ムサは、遺体を故郷に埋葬するという亡き妻との約束を守ることしか眼中にない。
ハリメは旅で出会う様々な人たちから、まるで神の啓⽰のような“⽣きる⾔葉” を授かりながら進んでゆく。国境、世界、⽣と死、過去と未来、棺をかつぐ祖父と孫娘の⼼の融和。トルコから届いた 3 人のおとぎ話は、境界線の先に⼩さな光を灯す。


監督 : ベキル・ビュルビュル脚本 : ビュシュラ・ビュルビュル、ベキル・ビュルビュル
キャスト: シャム・シェリット・ゼイダン, デミル・パルスジャン
配給:ラビットハウス 2022 / 製作 トルコ・ベルギー/ トルコ語・アラビア語 / 16:9 / 5.1ch / カラー / 103 分 ©FilmCode
公式サイト: https://cloves-carnations.com
X: https://twitter.com/masuda8251

2024 年 1 月 12 日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA 他全国順次公開

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