映画『Good Luck My Road』安藤勇雅、井筒しま、中村英児監督インタビュー。観る人みんなと成長し、共に前へ進めたら。

映画『Good Luck My Road』安藤勇雅、井筒しま、中村英児監督インタビュー。観る人みんなと成長し、共に前へ進めたら。

2023年12月16日(土)から、映画『Good Luck My Road』が池袋シネマ・ロサにて公開されている。今回、主演の安藤勇雅さん、ヒロインの井筒しまさん、中村英児監督にお時間をいただき、本作制作のきっかけからキャスティング、撮影時のエピソードをうかがいました。

主演:安藤勇雅さん ヒロイン:井筒しまさん

■映画『Good Luck My Road』安藤勇雅、井筒しま、中村英児監督インタビュー

 ▼本作制作のきっかけ

-本作の制作のきっかけ、経緯についておしえてください。

中村英児監督
きっかけなのですが、コロナ禍での出会いがあったんです。アーティストの皆さんがコロナの中でライブができない状況になったとき、奈良から声がかかりました。

コロナ禍にライブ活動ができないので、映像をPVにして世の中に伝えたいということで、オファーをいただいたのがきっかけです。それが奈良に行った経緯になります。そのアーティスト集団のリーダーが、今回、音楽を担当して頂いた本間貴士さんです。本間さんたちが壹 -ichi- というアーティスト集団を結成し、奈良を中心にライブ活動を行う計画をしていた最中に新型コロナが流行してしまいました。今回、そのご縁もあり “「鵲の橋」”というエンディングテーマを提供して頂いています。

-奈良県の方々との繋がりは以前からあったんですか?

中村英児監督
僕は元々、俳優に演技指導もしているのですが、教え子がデザイナーになって 奈良で活動していました。10年ぶりの連絡だったんですけど、「こういった話があるのですが。お願いできませんか?」という相談をいただいたことが今回につながっています。
その流れで、音楽担当の本間さんや撮影スタッフと吉野に行く機会があり、「こういうところで 作品を撮れたらいいよね」といった話をしていたことが、映画の企画を立てるきっかけになりました。

中村英児監督

▼キャスティングについて

-出演しているお二人のキャスティングについて教えてください。

中村英児監督
オーディションをやらせていただいたのですが、実はヒロインオーディションから先に行いました。主演の安藤くんと出会ったのは、ヒロインオーディションの後なのですが、初日舞台挨拶でも言ったように、初音っていうのは、この映画の肝になるところで、難しい役どころを演じてくれる「確信」が持てる子が現れるのかどうかがすごく不安だったんです。初音役が見つからないと映画が成立しないと僕は思っていたので。

 そこで井筒さんと出会って、はっとしました。「見つけた!」と思ったんです。「あれ?初音?」みたいな。それぐらいの衝撃を受けて、そこからキャスティングがどんどん進んでいきました。

安藤くんには、共感・共鳴を感じたんです。会う前にビデオを送っていただく、ビデオ審査を行いました。僕が企画を立てて、オーディションの募集記事を書いたときに、それにすごく共感してくれたことを自分の言葉で伝えてくれたんです。そういう俳優ってなかなかいないし、その熱意がこの映画の主演を全うしてくれるんじゃないかと思ったので、それが決め手になりました。

▼オーディションの様子

-初日舞台挨拶の際、オーディション題材が “絶叫のシーン”だったという話でしたが、どういった感じでしたか?

 井筒しま
オーディションは1時間程あり、中村監督がしっかりと時間を取ってくださいました。台本を読み込んで、実技に進んだ段階で行ったシーンは、クライマックスのとても重要なシーンで、気持ちの切り替わる瞬間を演じました。それを「どういう人だと思う?」というところのすり合わせから含めて、何回もやりました。

中村英児監督
井筒さんは最初からキャラクターを捉えてきてくれたんですよね。もう既に何かを掴んで演技をしている感じを受けました。

-井筒さんはかなり準備をされたんですか?

 井筒しま
脚本を読んでいて、もちろん同じ体験をしたことはないのですが、気持ちとしてすごく理解できたんです。感情の流れとして、自分がこの状況になっても同じような心の流れになる気がしたので、理解はすごくしやすかったです。

 -安藤さんとしては、共感・共鳴っていう言葉が中村監督から出ていましたが、どのように気持ちを伝えたのでしょうか?

安藤勇雅
オーディションの募集要項がネットに上がっている記事を自分で見つけて応募しました。

監督の言葉で、「10年ぶりに映画を作る。賭けているんです。」ということが書いてありました。僕も17,18歳から役者をやりたいと思って始めて、いま27歳なんですけど、10年ぐらい経つんです。

そういうところで僕もまだ主演をやったことがなくて、役者をやるって決めたときから主演をやることがひとつの目標だったので、「一緒にやりたいです!」といったことを伝えました。

 -若さとか縁がつながって、いい感じに作品が出来上がっているような気がしますね。

中村英児監督
本当にそうですね。もう奇跡だと思います。縁ってすごいですよね。振り返ると、「ここでこれがなかったら、こうなってない」っていうのがすごく枝分かれしていて、ここにたどり着つけたことが全て、縁で出来ていると思います。

しかも、こうやって奈良県・吉野から天川村・洞川といった美しい景観と、そこに伝わる歴史にまで繋げてしまうスケールの大きい壮大なストーリーになりました。

 ▼脚本を最初に読んだ時の感想、完成した作品を観ての感想

-お2人にうかがいます。最初に脚本を読んだ感想と、完成した映画を見ての感想を教えてください。

安藤勇雅
出演が決まってから全編を読んだのですが、脚本を最初に読んだときに、ナレーションがすごい多いなと思いました。

これを演じるというか、ここまでナレーションが多い作品は経験したことがなかったので、そこを最初に苦戦するなと思いました。

また、壮大な物語で、史実に基づいて気持ちを伝える大事なシーンがあるのですが、そこが僕のオーディションのシーンでした。合格後もリハーサルで、その際に言う蒼真の台詞について何回も議論しました。脚本にある言葉を言うためにどうやって感情を作り、そこにどう持っていくかというのをみんなで話し合ったことが印象に残っています。

観た感想は、これも重複してしまいますが、劇中の7割ぐらい僕が映っているので、客観的にはどうしても観ることができなくて不安でした。かなり感情をぶつけているので、これが見た人にどう映るんだろうというのが、不安でしかありませんでした。

 -公開初日の観客の方々の反応はかなり良かったですよね。

安藤勇雅
そうですね。なので、やっと完成したなというか、自分が演じてきたことは間違っていなかったのかなと思えることができました。

-井筒さんはいかがでしたか?

 井筒しま
台詞に詩的な部分が多くて、普段自分で発し慣れていない台詞をいかに浮かないように、どうやってこのキャラクターとして説得力をだして自分の言葉として言えるかが肝だと思いました。

 また、意志はすごく強いんですけど、喋り方が常に強いわけではない人だったので、そのバランスがすごく難しく、その点を考えて演じました。

完成した作品を観た感想は、安藤さんと同じで、最初にデータの段階で見て、試写会で観て今日を迎えたのですが、本当に今日まで不安でした。やはり、「自分の芝居って大丈夫なのかな…」というのをずっと思っているので、自分のここの瞬間の表情はちょっと違ったんじゃないかとか、終わったことをずっと考えてしまうところがどうしてもあるんです。

この作品を初めて観た人に、どれくらいの情報量が適切なのかというのも、内容を全て知っているとなかなかわからないので、今日、観ていただいた方の反応をいただいて、すごく褒めてくださることに、心から「本当ですか!?」っていうのが、“驚きでした”と言ったら失礼なのかもしれませんが、すごく自信があるという状況ではなかったので、褒めていただいた時に、「本当ですか!?本当に嬉しいです!」というのが心からの言葉でした。

 包み隠さず言うとびっくりしました。感動されていることにもびっくりしました。

 -笑いがでるシーンもありましたしね。

中村英児監督
そうなんですよね。細かいニュアンスが伝わっている感じがして、それがまた嬉しかったです。

▼撮影のエピソード

-お二人と監督も含めてうかがいたいのですが、撮影のエピソードを教えてください。奈良、山、海といろいろなシチュエーションがありましたがいかがでしたか?舞台となる大峰山の登山など大変だったのではないでしょうか?

中村英児監督
僕が思うのは、映画作り自体が映画だということです。辛さや、感情の浮き沈みがないと、俳優も感情がこもらないのではないかと思います。そういった意味で、今回の撮影は、僕の大きな挑戦でもあったし、安藤勇雅、井筒しまという俳優、役者としてこの作品で成長してもらえたら、僕はそれが映画を作る意味だと思っているんです。

そんな思いで作っていたので、蒼真の台詞じゃないですけれども、 “道なき道を進む”それを分かち合った同志というような気持ちでいます。

安藤勇雅
スケジュール的にかなりきついものがあって、いま思い返すと個人的には限界だったなと思います。普段はあまりそういったことはないのですが、限界だったのか不機嫌さが出てしまってて、ご飯をたべていても、スタッフのみなさんと喋ることもできなくて、食べ終わって自分の部屋に行ったら、スチールで入ってくれている柴田晃宏さんがいらして、気遣ってくれて「大丈夫?」みたいな感じで話してくれたんです。

そこで、「本当にすみません」と謝って、そのあとに中村監督がいらして…

中村英児監督
柴田さんが来てくれたんだ…

安藤勇雅
はい。そして監督がいらして、「どうした?」といった話をしたら、自分でもわからないのですが、涙が勝手に出てきて、泣きたいとか微塵も思っていないのに涙が止まらなくて、「うわぁ…いや、これはちょっとやばいかもしれない…」って思ったときがありました。

その時に監督から、「それが主演だから。それをも全部抱えるのが主演だから、やるしかない」って言われて、さっき話した“成長”という意味では、この現場の後にどの現場に行っても全然きつくないです。

他の現場で「ごめんね、きつくて」って言われても、「いいえ、全然大丈夫です!」って。

メンタルが鍛えられて、めちゃめちゃ成長しましたね。

公開初日舞台挨拶での安藤勇雅さん

-作品とも重なりますね。

安藤勇雅
そうですね。それは監督の狙い通りだったかはわかりませんが、蒼真と重なっていますね。

中村英児監督
上映した映画のナレーション収録は、実は現場が終わって期間を置いて、編集がみえてから録ったんです。現場のときにも一連のナレーションを録ったんですけど、それに関してはちょっとまだ、確信的に言葉を発していない感じがあったんです。納得がいかず、再収録したときに、台詞のニュアンスが撮影時のものと全く違ったんです。すごく説得力のあるナレーションに仕上がりました。俳優として幅を広げてくれたと感じたし、それが僕はすごく嬉しかったです。

 井筒しま
私は逆に、撮影が始まってしまうと、あまり考えなくなる方で、追い詰められていくというよりは、「いや、まあやるしかないでしょ」という謎の開き直りで安定していられました。

そうなったあとは、安藤くんがどんどん落ちていくのを横で見てたので、「大丈夫だよ」っていう立場であまり不安は感じなかったです。そういう意味では、初音と蒼真のバランスとして近かったのかもしれないです。

元々、私は楽観的というか、そんなに思いつめない性格というのもあると思います。

実際の私たちと同じく、ちょうど良かったかもしれないです。舞台挨拶でも吊り橋の話がでましたが、私は高いところが大好きで、彼は本当に怖いという。

-高いところへの恐怖心は克服できましたか?

安藤勇雅
どうでしょう。大峰山の「西の覗き」で撮ったカットは、かなり長くカメラをまわしていたんですけど風も強くて。それ以来高いところには行っていないんですけど、克服できたのかっていうとちょっとわからないですね。

 井筒しま
私が撮影した海の近くの崖のシーンでも、監督が足をずっと持ってくれていたのを思い出しました。

中村英児監督
これにはエピソードがあるんです。

 井筒さんは多分、(役に)はいっちゃうときがあって、僕が足を支えていたら、本当に“グッ”て前に力を入れるんですよ。だから僕は支えるのに必死でした。

 井筒しま
私は逆にそうだったの。

安藤勇雅中村英児監督
え!?

 井筒しま
私は何となく感覚として…こういうこと言うと「やめろ!」っていう話になると思うんですけど、「役を全うできるなら…今ならどうなってしまってもいい…」みたいに思ってしまうことがあるので、そこを監督が頑張って止めてくれたんだと思います。

中村英児監督
井筒さんに聞きたいんだけど、涙はどこから出てくるの?
どこから拾ってきているのかな?
そういう感情が人間としてないと、あんな涙は出てこないんじゃないかなと思うんです。実際に聞くと井筒さんは、“楽観的だ”という言葉が出てくるし。どこかに仕舞い込んでいるのかな?

 井筒しま
多分、私の中の人生観で、どこに焦点を当てて生きるかみたいな考え方が結構普段から強くて、普段からしんどいことをあえて見ないようにしてる部分も多分あるんですよ。
 いいことと悪いことの両面があったときに、わざと見ないようにしていて、そのスイッチを変えている感覚が、一番説明としては近いのかもしれないですね。
実際に気持ちが落ちているときって、その一個のことがすごく大きく感じたりするじゃないですか。多分それって自分の視点が、暗い部分にだけ当たっているってことだと思うので、芝居の中でも起こっている事象の何に敏感になるかっていう感覚を変える感じかもしれない。

 中村英児監督
そのスイッチを演技の最中に切り替えられるっていうのが、女優としてすごくはまっているよね、職業的に。

 -生きていく上での防御壁じゃないですけど、フィルターとかシールドみたいなガードって大事だから、普段はそれを閉じているんだけど、感情をあらわにするときにはそこを開放しないと出てこないですもんね。

▼お客様へのメッセージ

-映画を観にいらっしゃるお客様へのメッセージをおねがいします。

中村英児監督
映画のコンセプトは日本を世界に広めたいということで、それもまた壮大な話なのですが、小さく考えず、今後の映画の展開もスケールを大きくして挑戦していきたいと思っています。

この映画は、蒼真が道なき道を進んでいく、そして道を見つけていくという物語。僕は人間誰しもあることだと思うんです。つまずいたときにどうやって人が前に進んでいくかというのがテーマなので、落ち込んでいるときとか、道に迷っているときにこの映画を観てもらって、「蒼真と一緒にどこか先に進みたい!」と思ってもらえたら、僕としては本望です。

 井筒しま
今回の作品は監督にとっても私にとっても、安藤くんにとってもすごく新しいことに挑戦することであったり、撮影に入ってから作り上げるまでに覚悟が必要な作品だったと思っています。内容ももちろんそうなのですが、私達がこの映画にどう挑戦したかも、映画の中に映っている部分を今まで応援してきてくれた人にも、この作品で私たちに出会う人にも観ていただけたら、女優をやっている身としては嬉しいなと思います。

安藤勇雅
蒼真を通して話が進んでいくのですが、正直、蒼真はかっこよくないというか、すごくもがいていて、僕も役者として人としてもがいているところがリンクしていると思います。

そういった状況を乗り越えようとしている映画なので、観る人にそこが少しでも伝わって、格好悪くても進むしかないんだと、少しでも前向きな気持ちになってもらえる映画だと思います。悩んでいることがあったら、ぜひ映画を観に来て力に変えていただけたらなと思います。

上映後のサイン会に応じる安藤さん
上映後のサイン会に応じる井筒さん

▼予告編


■ 映画『Good Luck My Road(グッドラックマイロード)』

◆作品紹介
吉野の想い、日本の心、世界に届け。
奈良・吉野で「和の心」と共に織りなす、青春恋愛ファンタジー映画。
吉野山、天川村・洞川の美しい景色と共に、金峯山寺、金峯神社、吉水神社などの世界遺産で撮影。劇音楽は全て、二十五絃箏、薩摩琵琶、横笛などの和楽器で制作。ストーリーには古来より語り継がれる伝説を織り交ぜ、「和」を体感できる映画を目指した異色作。

▶キャスト
安藤勇雅 井筒しま
登峯一 宙海 武居翼 春風亭㐂いち NATALIE 結城和子 多田彩子 本間貴士 藤間晴馨

▶スタッフ
プロデューサー・監督:中村英児
脚本:長崎邦彦 撮影:宇野寛之 音楽:本間貴士 スチール・照明 :柴田晃宏 録音:長崎邦彦
制作:伊藤翼 メイキング撮影:福田敬子
キャスティング:アクトガレージ キャスティング協力:うさみみ会
企画・製作・制作・配給・宣伝:プロダクションガレージ


▶エンディングテーマ
「鵲の橋」壹 -ichi-
作詞・作曲・箏・唄:本間貴士
パーカッション:スティーヴ エトウ 鳳笙:井原季子 箏・薩摩琵琶:多田彩子 横笛:澄川武史

映画公式ホームページ https://www.pro-garage.co.jp/gl
映画公式X(旧 Twitter) https://twitter.com/DiscoverJch

池袋シネマ・ロサ
2023 年 12 月 16 日(土)- 29 日(金)2 週間 イブニング&レイトショー

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