映画『あとがき』猪征大インタビュー。8年前の決断、ホテルマンから役者の道へ

映画『あとがき』猪征大インタビュー。8年前の決断、ホテルマンから役者の道へ

実話に基づく 2人の若者が歩んだ青春の8年間を描く映画『あとがき』が、3/1(金) シモキタ-エキマエ-シネマ『K2』ほか全国順次公開。近年注目を集めるディレクター 玉木慧監督が『下北沢』を舞台に、路上で一人芝居を行い役者の夢を追いかける青年・春太(猪征大)と吃音を持つアーティストのレオ(遠藤史也)、若者2人の8年間を描いた青春映画を製作。
今回、春太役の猪征大さんにお時間をいただき、本作出演の経緯や役者への夢と道のり、下北沢で過ごした話を語っていただきました。

■映画『あとがき』猪征大インタビュー

▼本作出演の経緯

-本作出演のきっかけや経緯を教えてください。

猪征大
出演のきっかけとなるのは、この作品のオーディション情報が掲載されているのをたまたま見つけたことです。そこにはあらすじが載っていて、“下北沢で有名な役者を目指してくすぶっている主人公”のことが書いてあったんです。

役者を目指してくすぶっていた当時、僕は下北沢に住んでいて、自分と重なっていると感じたんです。「これは僕じゃないか?」って。絶対にこの役をやりたいと思ったんです。そこで、マネージャーにこのオーディションを受けたいと話をしたことがスタートになります。

ただ、その役どころは主演だったので、オーディションで勝ち取るにはなかなか険しい道のりだなと思いました。正直に言うと、半分諦めている気持ちがありました。

 -オーディション情報をご自身で見つけられたんですね。

猪征大
はい。本当にたまたま見つけたんです。

 -オーディションではどういった課題が与えられたり、お芝居をされたりしたのでしょうか

猪征大
オーディションは、作品の中のとあるシーンを抜き出して、“このシーンについて、オーディションでお芝居を見せてもらいます”と伝えられました。

そこでそのシーンに対して役を作っていったのですが、やはり全体の一部となるワンシーンしか読むことができないわけで、この作品の全体像がどういったものなのかは想像するしかないわけです。

まず自分が思う通りに、1回目のお芝居をしたのですが、玉木監督から「もうちょっと排他的な感じで演じてみてください」という指示を受けました。2回目には、「もっと何か出せますか、アクというか…」と言われました。

そういった流れで3回、お芝居を繰り返しました。

個人的には、「あまりはまっていなかったのかな…上手にできなかったから、何回かトライがあったのかな…」と思いました。

そもそもこれは主演のオーディションだし、難しいのかなと考えながら、オーディション会場を後にしました。

 -良い意味でとらえると、玉木監督から3回試されたということは、猪さんに春太を任せるにあたっての何かがその時にあったのかもしれませんね。

猪征大
そうですね。その後、役が決まってから玉木監督と話す時間があったときに、「何で僕を選んでくれたんですか?」って聞いたことがあるんです。玉木監督としては、ダークな色を求めていたそうなんです。監督曰く、「猪くんは、一見爽やかで誠実そうで、真面目な感じなんだけど、内に秘めている闇みたいなものがオーディションでみられたので、キャスティングしたんです」って言ってもらえたんです。なのでよかったなと思いました。

 -なるほど、主人公・春太の真面目さや葛藤、諦めがちなネガティブ思考な面が、猪さんと重なってみえたのかもしれませんね。オーディション時に手ごたえのようなものは感じられませんでしたか?

 猪征大
全くありませんでした。「この役を誰かが取っていくんだ…」と思って、虚しい気持ちで帰りました。

-かなりのマイナス思考だったんですね。

猪征大
そうです。まさに自信がないというか…。
でも作中の春太も同じ部分を持っているので、そういった部分も含めてのご縁だったのかなと思っています。

 -では、キャスティングされた時の喜びや感想はいかがでしたか?

猪征大
もう半端なかったです。連絡が来たのはオーディションの1ヶ月後くらいだったんです。
その間ずっと気になっていて、現段階でどこまでの審査を通り抜けたのかわからない状態で待っていました。
そうしたら、1ヶ月ぶりにマネージャーから連絡があって、『あとがき』に主演で決まったことが伝えられました。ちょうどその時、バイト先の駐車場でマネージャーからの連絡を受けたんです。

思わず、「よっしゃぁ!」って、口に出して言いました。もう、めちゃくちゃ嬉しかったです。それぐらいどうしてもこの役をやりたいという 思いだけは誰にも負けない自信があったので、本当に嬉しかったです。

▼全編の脚本を初めて読んだ時の感想

-オーディションのときは脚本の中のワンシーンのみしか与えられなかったとのことで、全編にわたる脚本は、合格してから受け取ったということですね。

猪征大
はい、そうです。

-全編にわたる脚本を初めて読んだ時の感想はいかがでしたか?

猪征大
オーディションを受ける段階で見ていた題材が自分っぽいと思っていた点は最初からあったのですが、改めて渡された脚本を読んでみたら、「これは僕の話ですか?」っていうぐらい重なるエピソードも多数載っていました。
脚本を読み進めていくと、自分が役者を目指し始めてから歩んだ時間を振り返っていくような感覚・時間になりました。

 「え…えっ…これ、僕の話じゃないか?」という部分がいくつもありました。

 -この話自体は玉木監督の知り合いをモデルとして題材にしているんですよね。

猪征大
はい、そうです。監督のご友人のお話・実話がもとになっています。下北沢に僕も住んでいたので、自分と同じような時間を過ごした人が同じ土地に存在したんだなと思ってすごく感慨深くなりました。

 -どこかで当て書きされている部分もあるのかもしれませんね。

猪征大
僕もそう思いましたね。でも脚本自体はオーディション前に決まっていたようなので、あて書きの部分はないとは思っています。

 ▼完成した映画を観ての感想

-撮影を終え、編集されて完成した作品を観た時の感想はいかがでしたか?

 猪征大
やはり撮っている最中はどんな完成映像になるのか、そこまではわかってないので、観たときは、素直に感動したのはもちろん、いい映画だなと素直に思いました。
自分たちで作っている分、あまり作品を美化したくはないのですが、とてもいい映画でぜひいろいろな人に観てもらいたいと思える映画になっていました。完成した作品を観て、作品自体がすごく愛おしくなりました。

-オーディションの募集情報をたまたま見つけた時から、ご自身と重なる部分がたくさんあったんですね。

猪征大
そうなんです。本当にこの作品はまるで自分のストーリーのような感じだったのが、特に印象強いです。その分思い入れも強いですし 作品のことを愛してしまっています。

  -作品に対して、すごく思いが詰まっているように感じました。

 ▼作品にちなんで…8年前は?

-作品にちなんで、8年前(に限定せずとも)、ご自身と作品とが重なるようなエピソードを何か聞かせていただけますか?

猪征大
撮影していたのは、2022年の秋だったのですが、そこから8年前に遡ると、僕がまだ役者になる前で、社会人としてホテルマンを務めていました。

その時に下北沢に引っ越してきて、その年の終わりに僕は社会人を辞めて役者をやろうということを志した時期でもありました。

下北沢に僕はちょうど8年間住んだんです。役者人生が始まった瞬間・時間が8年前で、生活した地が下北沢でした。人生として、社会人を辞めるときにすごく葛藤したのを覚えています。

社会人として生きてみたからこそ、夢を追いかけるのが怖かったです。

やはりどんな仕事も一緒ですが、何も保証されていない中・何も知らない中に飛び込んでいくことは、ある種自分の中であの時・期間は、すごく大きな決断をした時間だったので、ものすごい不安にも駆られました。もちろん未来に対する希望もありましたが、8割は不安でした。

そんな中で、役者になる道を選んだのが、8年前の時になります。

 -ホテルマンというか社会人を選ぶ際にも既に葛藤はあったのでしょうか?

猪征大
はい。僕は元々をたどっていくと、静岡の浜松の生まれなのですが、静岡にいる時に俳優になりたいという初めての気持ちを抱きました。

ただ、そこに対する覚悟もなく、下調べも特にしていなかったので、漠然と思い描いた夢でした。

それだけで東京に飛び込んでいくことに対して怖さがあったんです。僕ってブワッて飛び込むというよりも、すごくいっぱい考えることに時間を費やすタイプなので、しっかりと、“こういうこともあるかもしれない…”といろんなことを考えながら行くにつれて、やはり怖くなってきてしまいました。

でも東京には出なければと思い、役者ではありませんがホテルの専門学校という道に進みました。結局、当時は怖くて役者の道に一度も挑戦しませんでした。

そういった夢を諦めた瞬間が18歳のときだったので、そこからの専門学校の2年間と社会人の3年の合計5年間、ずっとモヤモヤしていました。

夢に挑戦していないのですが、生意気に夢の事について悩み続ける時間が5年間ありました。

でも、役者をやろうと決断をして、8年前に役者の道に踏み切りました。

あのときもすごく葛藤しましたね。ここで行かないともう終わりなんじゃないかとか…若ければ若いほど未来に希望が持てなかったというか。

例えばやり直しが利くとか、新しいこともいくらでもできるとか、いろいろな可能性って生きていればあると思うのですが、あの頃って、“もうここでこれを選ばなかったら終わりなんだ“といった思考でした。

“ここで挑戦できないってことは、もう俺は俳優になれないんだ” といった思考の流れで、天秤にかけてどちらを取るか…といったときに、僕は社会人になろうということで一度、役者への道を諦めてしまったんです。

 -ちなみに学生時代は演劇を学んでいたのでしょうか?

 猪征大
いいえ、実は全くしていませんでした。もうバスケ一筋でした。
ただテレビは昔からすごく好きだったので、小さい頃から僕の夢は芸能人になることだったんです。小学校の卒業アルバムによくある、1人1人が書く一問一答のコーナーの“将来の夢”に、僕は“芸能人”って書いてます。

だけど、東京に出ていくといった話の中でも、特に歌手になりたいとか、俳優になりたいといった夢って非現実的なものとして地方では扱われがちなんですよね。

それを大っぴらに公表するとネガティブな反応をされる空気があったので、その夢を周りに一切言えなかったですし、自分の心の内にしまっておく学生時代でした。でも心の中では、俳優になりたいと小さい頃から思っていました。

 -お話をうかがっていると、常に慎重な姿勢で周り道をしながら歩んできたけれど、夢を諦めきれずに元の道に戻ってきた感じなんですね。

 ▼映画『あとがき』、撮影時のエピソード

-本作撮影時のエピソードをうかがっていこうと思います。ご自身の内面的なことだけでなく、住んでいた環境などにも重なる部分があるといったお話しでしたが、映画の舞台となる下北沢をメインに撮影時の話をお話しいただけますか。

 猪征大
撮影時の下北沢はもう現代的・近代的というか、駅も新しくなっていました。
僕が上京してきた13年前の下北沢の駅は旧くて、駅の下に闇のおでん屋さんがあるような時代でした。

駅の階段もすごくボロボロで、足音がコンコン響くような状態で、ホームも床が抜けてしまうんじゃないかと思うくらいの木の板で作られている時代でした。下北沢に住んでいて街の移り変わりを見てはいたのですが、改めて撮影で下北沢を眺めたときに、すごく変わったなっていうのがまず思った感想でした。

それは駅だけでなく、新しい商業施設が大きくバーンと綺麗に建ったり、昔、自分が好きで食事をしていた小さなお店がなくなって別のものに変わっていたり、友達とよく遊んでいたゲームセンターが今はもうなくなってたりとか、どんどん形を変えていく街だなと思いました。

 8年前に住んだときのイメージって、下北沢って我流の人が歩いてるイメージなんです。特にファッションで言うと、「この服どこで売ってんの?手作り?」っていうぐらい奇抜な服をまとっている人が歩いていて、街中がみんな自分の色を持った人が歩いているイメージでした。

今回撮影した時期や今、下北沢に行くと、割と一般的というか、どこにでもいるような若者がデートしていたり、ご家族が歩いていたり、当たり障りのない無難なイメージに なったように思えます。

-下北沢といえば交通アクセスのメリットの話をうかがったことがあります。急な撮影の予定や、朝早い集合、終電間際まで撮影が延びた時でも自宅と現場間の移動がしやすいという。

猪征大
アクセスが最強といわれていますね。僕が8年前に引っ越してくるときに下北沢を選んだ理由の一つがそれです。新宿にも渋谷にも10分程度で行くことができて、本当に過ごしやすいと思います。

夢をかけている人には交通の便の良さは、ストロングポイントになると思います。

 -家賃の安さで渋谷・新宿から離れた場所を選ぶよりかは、ちょっと頑張って、下北沢を中心に一駅程度離れた場所に住むのが定番のようですね。

猪征大
そうですね、下北沢の中心地からは歩くんだけど、「下北に住んでる」といった。僕もまさに下北沢からひとつ離れた新代田駅から歩いて10分ぐらいのところに住んでいました。懐かしいですね。

 -そんな懐かしさを感じる人も映画を観る人にいっぱい出てきそうですね。

▼メッセージ

-それではまとめとして、映画を観にいらっしゃるお客様向けのメッセージをお願いします。

 猪征大
やはりこの作品は、誰もが一度は通ったことがあるような瞬間。
形は違えども、そこを切り取っている作品になっているので、きっと観てくれる人の人生の何らかの瞬間に重なる部分があると思います。

そんな瞬間と重ねて映画を観ていただいて、今日からなのか、明日からなのか、何か素敵な一瞬に繋げてもらえたら嬉しいと思います。


■ 初日舞台挨拶決定

映画『#あとがき』初日舞台挨拶開催

日時:3/1(金)18:05回上映後(予定)
場所:シモキタ-エキマエ-シネマ『K2』
   〒155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目21−22 2F tefu ) lounge

登壇者
玉木慧 監督、#猪征大、#遠藤史也、#向里祐香

司会: #曽田麻衣子

チケットは、2/27(火)10:00から販売開始
https://k2-cinema.com

X:@K2shimokita


■ 作品紹介

映画『あとがき』

実話に基づく 2人の若者が歩んだ青春の8年間ーー

近年注目を集めるディレクター 玉木慧監督が『下北沢』を舞台に、路上で一人芝居を行い役者の夢を追いかける青年・春太(猪征大)と吃音を持つアーティストのレオ(遠藤史也)、若者2人の8年間を描いた青春映画を製作。

《STORY》
染井春太は居酒屋でアルバイトをしながら役者を目指しているが、来る仕事はエキストラばかり。ある日、路上で一人芝居をしている途中に出会ったアニキと東京・下北沢にあるバーを訪れる。そこで吃音のアーティスト、レオと出会う。 レオはアメリカから帰ってきたばかりで家が無く、気付けば春太の家に住み着くようになる。目指すものは違うが、お互い夢を追う者として気付けばかけがえのない存在となっていく。そして2 人はある約束を交わし、お互い約束を果たす為に日々努力する。しかし次第に春太を取り巻く環境に変化が訪れ、春太の夢に対する気持ちも揺らいでいく、、、いつまでも変わらないと思っていた。偶然出会った若者2人の出会いからそれぞれの人生の選択を描いた8年間を描く。

猪征大 遠藤史也

向里祐香 橘花征志郎 松本ししまる 尾台彩香 山田キヌヲ

大高洋子 木村知貴 髙橋雄祐 細井学 山本桂次

主題歌:Bray me 「アンダー・ザ・ドッグ」

(Happinet Music / KURAMAE RECORDS / NottDagr)

監督:玉木慧  脚本:佐藤寿洋、玉木慧

プロデューサー:槇原啓右 撮影:守屋良彦 照明:齋藤正貴 録音:竹内勝一郎 衣裳:ミナミマリィ ヘアメイク:塚原ひろの スチール:島田龍 助監督:中根克、島田龍 制作進行:中川泰博 吃音監修:矢田康人 ビジュアルデザイン:髙橋桃季 

製作・配給 TeamDylan
©︎TeamDylan 『あとがき』

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公式サイト:https://atogaki.jp
公式X(旧Twitter): atogaki_movie 
Instagram: atogaki_movie
クラウドファンディングページ:https://motion-gallery.net/projects/atogaki

3/1(金) シモキタ-エキマエ-シネマ『K2』ほか全国順次公開!

あとがき

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